令和7年4月13日
近畿地方整備局営繕部
 
 
大阪・関西万博日本館(仮称)整備工事におけるユニバーサルデザインワークショップについて
 
※本資料は視覚障がい者など読み上げソフトを利用する方に向けて作成したテキストファイルである。
 
 
1.経緯
・令和7年4月13日から令和7年10月13日まで大阪・夢洲で開催される大阪・関西万博
の各施設のうち、日本館の設計、施工を、経済産業省からの支出委任により当局が実施した。
・日本館は、「いのちと、いのちの、あいだに -Between Lives-」をテーマにした施設として計画され、万博の主要施設として位置づけられている。また、大阪・関西万博の「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは、人間一人一人が、自らの望む生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮させることが示されている。
・このような考え方を反映して、「古来より育まれてきた伝統的な自然観(調和・持続可能性等)」、「日本らしさを世界に発信する、人と人がつながる 誰もとり残さない 共創の世界を創り出す」というコンセプトのもとに、誰もが使いやすいユニバーサルデザイン(UD)を具現化するパビリオンとするための設計、施工をめざすこととした。
・UDワークショップは、「施設整備に関するユニバーサルデザインガイドライン【改定版】(民間パビリオン用)」(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会)に示された「障がい当事者等の参画による評価と意見反映〜ユニバーサルデザインワークショップの積極的奨励~」に基づき、多くの障がい当事者および学識経験者の参画による「大阪・関西万博日本館(仮称)UDワークショップ」を設立した。
・このUDワークショップにおいて、基本設計段階から障がい当事者および学識経験者の意見を設計・施工内容に反映した。 
 
2.UDWSの実施
(1) 委員、オブザーバー
多様性確保の観点から、学識経験者をはじめ実際に障がいを持ちながら活動している有識者で構成。また、障がいだけでなく、LGBTQや子育て支援の有識者もアサインし、広義的なユニバーサルデザインについて議論した。 
    1)設計段階 学識経験者7名、障がい当事者25名、計32名
    2)施工段階 学識経験者3名、障がい当事者22名、計25名
 
(2) 実施方法
  テーマ毎にワークショップ形式で意見交換
 
3.実施スケジュール
(1)設計段階
・令和4年  6月7日(火) 第1回UDWS 日本館の概要説明
・令和4年  7月12日(火) 第2回UDWS 第3回以降WSのテーマ設定
・令和4年  8月 8日(月) 第3回UDWS 移動・休憩検討会
・令和4年  8月 9日(火) 第4回UDWS トイレ検討会
・令和4年  8月30日(火) 第5回UDWS 誘導検討会
・令和4年12月12日(月) 第6回UDWS とりまとめ
 
(2)施工段階
・令和5年12月19日(火)第1回UDWS 施工段階UDWSの目的とスケジュール
・令和6年 1月16日(木)第2回UDWS スロープ・誘導関係のモックアップ検証(床材、手すり・レールガイド・ラインガイドの設置位置・形状など)
・令和6年 6月18日(水)第3回UDWS トイレ関係のモックアップ検証の事前説明
・令和6年 6月25日(水)第3回UDWS トイレ関係のモックアップ検証(内寸、仕上げ材料、配色、視覚障がい者用誘導ブロック、光警報(フラッシュランプ)設置位置など)
・令和6年11月28日(金)全体会議  UDWSのとりまとめ
・令和7年  2月27日(木)最終報告会 報告書の報告会
 
4.UDWSの意見を踏まえ改善した主な項目
・以下に記載する「大阪・関西万博日本館(仮称)施工段階 日本館UDワークショップ報告書」(テキスト版)を参照
 
 
大阪・関西日本館(仮称)施工段階 日本館UDワークショップ報告書(テキスト版)
 
表紙(1ページ目)
大阪・関西万博日本館(仮称)施工段階
日本館UDワークショップ報告書
検証における意見と施工段階への反映
令和7年2月
 
 
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目次
1 意見の概要
2-1 スロープ・誘導設備
(1)意見と改善事項
(2)建物入口~建物内の通路のイメージ
(3)UDワークショップの意見等に基づく施工内容(3項目)
 ・スロープ勾配、材質、色
 ・手すり
 ・レールガイド、ラインガイド、点字ブロック
2-2 トイレ
(1)意見と改善事項
(2)UDワークショップの意見等に基づく施工内容(9項目)
 ・ゾーンA/C 従来型のトイレ
・ゾーンB 個室型トイレ
・ゾーンD 大きめトイレ、ファミリールーム
・手洗いの手すりの間隔
・個室型トイレ 手洗いカウンターの形状
・バリアフリートイレ内の大型ベッド、照明、鏡、フック、扉
・壁付リモコン類と壁のコントラスト
・光警報装置(フラッシュランプ)の位置
・カームダウン・クールダウンルーム
 
 
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1意見の概要
施工段階における第1回UDワークショップから第4回UDワークショップでいただいた意見を施設別、項目別に集計した数値を示しています。
意見は合計182件でした。カテゴリーと項目ごとの件数は以下の通りです。
カテゴリー1:基本的考え方、会場全体の事項など(計4件)
項目1:会場全体に係る事項 2件
項目2:建物全体 2件
 
カテゴリー2:通路・スロープ(計53件)
項目1:手すり 7件
項目2:床素材 9件
項目3:スロープ・回廊 13件
項目4:レールガイド・ラインガイド 23件
項目5:休憩用設備、屋根・雨対策 1件
 
カテゴリー3:トイレ(計44件)
項目1:トイレ・ファミリースペース内の情報設備、情報提供 4件
項目2:トイレ・ファミリースペース内設備、レイアウト 37件
項目3:トイレ・ファミリースペースの分散配置、便器数
 
カテゴリー4:授乳室、カームダウンスペース(計7件)
項目1:休憩スペース、カームダウン・クールダウン、授乳スペース 7件
 
カテゴリー5:誘導・案内(計46件)
項目1:サイン・案内・標示 6件
項目2:視覚障がい者用ブロック 9件
項目3:手話 1件
項目4:情報伝達方法 6件
項目5:視覚障がい者用アプリ等
項目6:事前施設情報提供 7件
項目7:音声ガイドでの説明 3件
項目8:非常時の設備・情報提供 7件
 
カテゴリー6:避難経路(計5件)
項目1:避難経路・スペース 5件 
 
カテゴリー7:運営・展示(計17件)
項目1:運営の留意点、スタッフ研修 16件
項目2:介助犬対応 1件
 
カテゴリー8:その他(計6件)
 
 
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2-1 スロープ・誘導設備
(1)意見と改善事項
スロープ、手すりについてそれぞれの項目についての確認事項、主な意見、施工上の改善事項を表で示しています。
 
スロープの勾配、床面の材質・手すりについて
・スロープ・踊場の勾配(登り・下りの負担度合いなど)について、勾配(1/20)については問題ないとの意見であった。
・スロープ・踊場の床材のすべり具合、通行のスムーズさについて、「三和土のざらつきは歩行上の抵抗・負担を感じる」「表面の質感の違いは分かりにくい」との意見があった。濡れた場合のすべり具合については、「濡れた時はグリップが強くなり引っかかる」との意見があった。そのため、「通行部分はなめらかな仕上げとする」よう、施工上で改善する。
・スロープ・踊場の床材の色について、「踊り場とスロープの色の差はほぼ分からない」との意見があった。そのため、「通路部分は明るい色、スロープ部分の上下端は濃い色のラインとして視認できるようにする」よう、施工上で改善する。
・手すりの設置の必要性について、「手すりがあることで歩く方向を見失わない」「手すりは必要であり使いやすいことが必要」との意見があった。有効性が確認できたので設置する。
・手すりの材質について、「滑りにくい材質とする。木製の検討も必要」との意見があった。そのため、「夏場の暑さ対策も考慮しフィルムシート貼りとする」よう、施工上で改善する。なお、木製はコスト高、汚れを考慮し採用しなかった。
・手すりの太さ・高さについて、「径が太い(握りにくい)」「位置が少し高いと感じた。高さは 80cm 程度がよいのではないか」「車いすのハンドルと干渉しないよう標準寸法を押さえたうえで高さを決定してほしい」との意見があった。そのため、「手すりの径を 42.7mmから 38mm に変更する」「高さは 85cm から 80cm に変更する」よう、施工上で改善する。
 
 
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誘導設備についてそれぞれの項目についての確認事項、主な意見、施工上の改善事項を表で示しています。
 
誘導について
・レールガイドの突起の高さ(5cm)について、「多くは現在の高さで良い、「高さについてはもう少し低くてもよい」との意見があった。
・レールガイドの設置位置について、「手すりから奥にあるので、白杖を当てるのに使いにくい、使わない」「視覚障害者にとっては、壁と同じ感覚で使える。色で認識するなら濃い色が良い」との意見があった。
・レールガイドについては、大阪市ひとにやさしいまちづくり整備要綱で、手すり形式の場合は基部を 5cm 以上立ち上げることが望ましいとされているので、5cm のままとする。(変更なし)
・ラインガイドの突起の高さ(3 ㎜)について、「肢体不自由者や高齢者は 3mm でもつまづく」「視覚障がい者にとっては 3mm で何とか分かるがもう少し高いと良い」「ひっかかりとなることを避けるため、素材を変えた帯状のもので誘導」との意見があった。そのため、「2 列のラインに見直す(ラインの隙間に白杖を当てるようにして誘導する)」「視覚障がい者が判別できる最低限の低さ:3mm のままとする。(点字ブロックの突起高さ以下とする)」「溝の幅は 5mm とする」よう、施工上で改善する。
・視覚障がい者用誘導ブロックの色について、「グレーでは床材と色の差がわからない。黄色でよい」との意見があった。
・視覚障がい者用誘導ブロックの必要性について、「1/20 勾配スロープであれば踊り場に点状ブロックの敷設は不要」「万博内の他施設の状況を確認した上で方針を整理すべき」との意見があった。
・そのため、「色は黄色で統一する」よう、施工上で改善した。
(視覚障がい者用誘導ブロック敷設範囲)
①敷地境界線~主たる案内設備:線状・点状ブロックで誘導
②主たる案内設備~建物入り口(待ち行列終点):係員が誘導
③建物内は、円形回廊は手すり、レールガイド、ラインガイドで誘導、展示エリア内は係員
が誘導
④建物出口~敷地境界線:係員が誘導
2)安全確保(警告)について
・視覚障がい者用誘導ブロックの必要性について、「点状ブロックを必要な箇所に設置」との意見があった。そのため、「避難階段、トイレの触知図案内板の床に点状ブロックを敷設する」よう、施工上で改善した。
 
 
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(2)建物入口~建物内の通路のイメージ
・建物入口から回廊、展示エリア入口の施工後の写真を示す。
➀ スロープ入口付近
 写真を掲載しています。
➁ 回廊の通路部分
写真を掲載しています。日よけのアルミルーバーが設置されています。
③ 展示エリア出入口付近 
写真を掲載しています。雨よけのガラス庇が設置されています。
 
休憩スペース、レールガイド、ラインガイドの設置位置の平面図をいれている。
 
 
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(3)UDワークショップの意見等に基づく施工内容
●スロープ勾配、材質、色
ポイント:多様な人が一緒に同じ空間を快適に移動できるように緩やかなスロープとし、床の材質、色の工夫を行っている。
 
・スロープの勾配について、「5%で通行に問題はない。」との意見があった。(参加者共通意見)・スロープの勾配は設計当初から5%を前提として、多様な人が同じように使いやすくしている。
・スロープの床材について、「三和土のざらつきは足が不自由な人、高齢者等にとって、つまづきやすくなる。」との意見があった。床材は自然性が高く、リサイクルしやすい三和土を採用している。三和土の表面を滑らかにし、車いす、高齢者、片麻痺の人などがつまづかないようにする。
・スロープの床の色について、「スロープと踊り場の微妙な色の違いや表面仕上げの違い(なめらか・ざらざら)は分かりにくい。」との意見があった。設計段階は5%勾配のスロープと踊り場を三和土の表面仕上げで区別するよう計画していた(点状ブロックの敷設は不要と確認していた)。施工段階の検証の結果、表面仕上げの違いではなく、スロープの上下端に濃い色の三和土をライン状に入れることで視認できるようにする。
 
「ざらざらざらの箇所(休憩スペース部分)」「滑らかな個所(通路部分)」「ラインガイド」が分かる床材の写真を掲載しています。
「スロープの上下端に濃い色の三和土をライン状に入れる」が分かるスロープの写真を掲載しています。
 
 
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●手すり
ポイント:誰もが使いやすい手すりとするための高さ、太さとし、誘導支援のための  レールガイドと併せた連続性の確保
 
・手すりについて、「モックップの手すり位置が高い。少し太い」という意見に対し、手すりは、握りやすさ、使いやすさを考慮して高さ、太さを調整。高さを5cm下げ、80㎝、直径を42.7mmから38mmに変更した。
・手すりの材質について、「滑りにくい材質とする。木製の検討も必要。」という意見に対し、夏場の暑さ対策も考慮しフィルムシート貼りとする。木製はコスト高、汚れを考慮し採用しなかった。
注)円形回廊の手すりについては、身体を支える役目のほかに、レールガイド、ラインガイド(後述)と併せて視覚障がい者の誘導のための役割をもっており、回廊内に連続して敷設している。
 
レールガイド、手すりの高さが分かる設置図と、手すり設置写真、手すりの拡大写真を掲載しています。
 
 
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●レールガイド、ラインガイド、点字ブロック
ポイント:視覚障がい者誘導ブロックに代わる視覚障がい者の誘導機能を持たせた、新たな「レールガイド」、「ラインガイド」設置の試み
 
【誘導機能の確保】
・日本館の円形回廊では、視覚障がい者が一人できても移動が可能な移動空間をめざして、誘導ブロックに代わる誘導機能持たせた、新たな「レールガイド」、「ラインガイド」設置を試みている。
・「レールガイド」は、円形回廊にそった手すりの下部に、高さ5cmの金属の板を設置し、視覚障がい者が白状を添わせて移動方向を確認できるものとしている。
・「ラインガイド」は、レールガイドが途切れる通路の渡りの部分などに、高さ3㎜の金属の突起を2列で敷設し、連続性を確保する。
【安全確保(警告)】
・避難階段、トイレの触知図案内板の床に点状ブロックを敷設。
・スロープについては、視覚障がい者から、5%勾配であれば踊り場との境に点状ブロックは不要、とのご意見にもとづき点状ブロックは設置せずに、弱視者などのために、スロープの端の色を変えることで視認を高めることとしている。
 
レールガイド、ラインガイドの設置写真を掲載している。
トイレ出入口の触知図下の警告ブロックの設置写真を掲載している。
避難階段の警告ブロックの設置写真を掲載している。
 
 
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床面の色、休憩スペース、レールガイド、ラインガイド、スロープ上下端の設置位置の平面図をいれている。
 
 
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2-2 トイレ
(1)意見と改善事項
 <ゾーンA/C、ゾーンD:バリアフリートイレ>
・入口から便器までの移動、大型ベッドの位置について、「大型ベッドが開いたままの状態だと出入口が狭くなり、車いす利用者は入ることができない」との意見があった。そのため、ゾーン D のバリアアフリートイレ(大)については、大型ベッドを開いた状態でも可能な限り有効幅が確保できるようレイアウト調整を行った。ただし、ゾーンA,Cのバリアフリートイレについては、便器(配管)の位置や扉位置の変更は寸法上余裕がなく変更が難しい。
・押しボタンなどの配置、形状について、「洗浄ボタンの形状(凹凸)が分かりにくい」「位置について、座った状態でもう少し前側(便器から離れる側)に変更することができないか」「非常呼出ボタンが他のボタンに近すぎて、間違って押してしまいそう」との意見があった。
・洗浄ボタンについては、協賛品対象であるため種類の変更は対応できない。また、呼出ボタンについては、日本館周辺施設と種類や配置を統一し、使用上の混乱を防ぐ。(変更なし)
・大型ベッド跳ね上げについて、「折り畳み式ベッドは車いす利用者が操作できない」との意見があった。そのため「操作しやすい跳ね上げ式に変更」する。
・照明について、「ベビーベッドの直上に照明があると乳幼児の目に直接光が入ることが懸念される」との意見があった。そのため「光が直接目に入らない位置に調整」する。
・洗面台の手すりについて、「肢体不自由者はカウンターに肘をつきながら手を洗うため、ベッセル式洗面器だと縁が当たって痛い」との意見があった。そのため、手すりの間の幅を 550mm に変更し、肘を支持できるように改善する。
・鏡について、「車いす利用者も全身が見える鏡を設置してほしい」との意見があった。
そのため、車いす対応便房に姿見を設置する。(計 5 箇所)
 
 <ゾーンB  個室型 男女共用便房>
・入口から便器までの移動について、「手洗い器が大きい」「カウンターが大きく、通行の妨げになる」「カウンターの角が身体や子どもの頭部に当たる危険性がある」との意見があった。そのため、手洗いカウンターの形状を台形から丸みのある三角形に変更し、トイレブース内の使い勝手を改善する。
・紙巻き器やリモコンの位置について、「紙巻き器の位置が奥過ぎる、低すぎる」との意見があった。そのため、手洗いカウンターの形状見直しと併せて調整する。
 
 
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<ゾーン B:個室型 車いす用簡易便房>
・押しボタンなどの配置、形状について、「洗浄ボタンの形状(凹凸)が分かりにくい」「位置について、座った状態でもう少し前側(便器から離れる側)に変更することができないか」「非常呼出ボタンが他のボタンに近すぎて、間違って押してしまいそう」との意見があった。
・洗浄ボタンについては、協賛品対象であるため種類の変更は対応できない。また、呼出ボタンについては、日本館周辺施設と種類や配置を統一し、使用上の混乱を防ぐ。(変更なし)
・鏡の高さについて、「車いす利用者も全身が見える鏡を設置してほしい」との意見があった。そのため、車いす対応便房に姿見を設置する。(計 5 箇所)
 
<トイレ共通>
・フック位置について、「出入口付近にあると使いやすい(目が不自由な方も慣れている)」「当たっても危なくないフック形状が良い」との意見があった。そのため、出入口扉のブース内側に統一して設置する。安全委配慮した形状とする
・扉の仕様について、「車いす対応便房の引き戸には全開時ストッパーはついているのか」「扉はなるべく軽い力で操作できることが望ましい」との意見があった。扉は、全開時ストッパーあり、軽い力(UD ガイドラインの 30N 以下)で開閉可能である。
・バリアフリートイレの内部側に補助手すりを設置する。
・通路について、「耳が不自由だと、通路が L 字型配置だと人とぶつかる可能性がある(個別トイレ前の通路等)。曲面ミラーで視認できると安心」との意見があった。通路幅がある程度広く、T 字路部に誘導スタッフを配置するため鏡は設置なし。
 
<カームダウン・クールダウン>
・内装の仕様について、「壁は緩衝材のような柔らかい素材にしてほしい」との意見があった。そのため、柔らかいクッション材を採用、色はウォーム系の薄いグレーとする。
・照明について、「調光ができる照明を設置してほしい」との意見があった。そのため、部屋の利用者が調光可能な照明を設置する。
 
 
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<授乳室>
・照明について、「ベビーベッドの直上に照明があると乳幼児の目に直接光が入ることが懸念される」との意見があった。そのため、光が直接目に入らない位置に調整する。
 
<サンプル確認>
・床面点字について、「日本館のトイレの広さだと、ガイドライン対応の床面点字は不要ではないか。また、色彩計画でブース扉や衛生器具と床壁のコントラストをつけているため、ある程度認識できると思われる」との意見があった。そのため、ご意見をもとに床面点字は設置しない。
・非常用フラッシュランプ(光警報)の点滅について、「設置位置について、ブース内だけではなく通路にも設置が必要」「外光に負けて光警報に気づかないのでは。光度や目に入る位置の検討が必要」「光が強いと見にくい人もいる。フェードアウト・フェードインできるような光があれば良い」「光の点滅の意味が理解できるように、字幕など文字情報とセットで非常時であることを示してほしい」との意見があった。そのため、通路を含めた位置にフラッシュランプを設置する。なお、柔らかく光るフラッシュランプは現時点で存在しない。また、非常時にはスタッフによる避難誘導がなされるため、文字情報による表示は行わない。フラッシュランプ点灯の説明文を張り付ける。
・扉の鍵の形状について、「ラバーがつくと握りやすい」「もう少し鍵の持ち手が長いと使いやすい」「開閉の表示窓(赤青)がもう少し大きいと分かりやすい」との意見があった。施工上、変更なしである。
・壁付リモコン類と壁のコントラストについて、「もう少しリモコン類と壁色にコントラストをつけてほしい」との意見があった。そのため、コントラストを確保できるよう調整する。
・非常呼出ボタンについて、「特に問題ないが点字が少し薄い」「洗浄ボタンと非常呼出ボタンの区別がつきにくい。呼出ボタンは四角で認識されている(目が不自由な方)」「呼出ボタンが小さいと押しにくい。(車いす利用者)」との意見があった。
・非常呼出ボタンについては、日本館周辺施設と種類を統一し、使用上の混乱を防ぐ。(変更なし)
 
 
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●トイレの基本的な考え方
①分散型配置と多様なニーズへの対応
・『できる限り多くの人が利用しやすいトイレ』を目指して、タイプの違うトイレを用意し、全体として多様な人が使いやすいバランスで配置。
・日本館周辺エリアのトイレが受け持つ機能も考慮したタイプを計画。
 
②新たなニーズへの対応
・近年のニーズであるオールジェンダー対応をB(個室型)、子育て・ファミリー対応や発達障害対応をD(大きめトイレ)などで計画。
・展示スペース出入口の3つのゾーンは、従来型のトイレ(A,C)を2か所、オールジェンダー対応のトイレ(B)を1か所とした。ファミリーコーナー(D)には、介護利用、ベビーカー用に大きめのトイレを配置。
 
●トイレのゾーンごとの機能配置
・ゾーンA・C従来型トイレには、一般弁棒、バリアフリートイレ、オストメイト対応、大型ベッド、ベビーカー対応の機能を配置している。
・ゾーンB個室型トイレには小便器便房、男女共用便房、簡易型車いすトイレ、オストメイト対応、ベビーカー対応の機能を配置している。
・ゾーンD大きめトイレには、男女共用便房、バリアフリートイレ(大)、オストメイト対応、大型ベッド、ベビーカー対応の機能を配置している。
・簡易型車いすトイレとは、車いす対応の広さが130センチ×130センチ程度の便房であり、バリアフリートイレ(大)とは、直径180センチのスペースを確保した便房である。
 
 
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●トイレのタイプの名称
ゾーンA/C従来型のトイレ、ゾーンB個室型のトイレ、ゾーンD大きめトイレ、それぞれの平面図を掲載している。
 
 
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(2)UDWSの意見等に基づく施工内容
1)ゾーン別の施工写真
ゾーンA/C 従来型のトイレの平面図を掲載している。
「女性トイレ(ベビーチェア付き便房)」「女性トイレ(手すり付き便房)」「バリアフリートイレ」「男性トイレ(手すり付き便房)」「男性トイレ(小便器)」の写真を掲載している。
手すりは黒色とし、木目の壁、白い便器との色のコントラストを確保している。
 
 
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ゾーンB個室型トイレの平面図を掲載している。
「男女共用トイレ(ベビーベッド設置:左端)」「通路(奥に向かって左側)」「車いす用簡易便房」「小便用便房」「男女共用トイレ(ベビーカーも入れる便房:右端)」「男女共用トイレ(中央)」の写真を掲載している。
 
 
18ページ目
 
ゾーンD大きめトイレの平面図を掲載している。
「バリアフリートイレ(大)」「出入口」「大きめトイレ(ベビーベッド設置)」の写真を掲載している。
 
 
19ページ目
 
ゾーンDファミリールームの平面図を掲載している。
「カームダウン/クールダウンルーム」「カームダウン/クールダウンルーム(部屋の明か理を暗くした場合)」「授乳室入り口」「車いす対応の授乳スペース」「授乳スペース」の写真を掲載している。
 
 
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2)意見と施工内容
●手洗いの手すりの間隔
ポイント:標準の手すりの間隔を狭めて、上肢が不自由な人が使いやすいようにした。
 
・手洗い手すりについて、「肢体不自由者はカウンターに肘をつきながら手を洗うため、ベッセル式洗面器だと縁が当たって痛い」という意見があった。ゾーンA/Cトイレの手すりがある手洗い器については寄りかかって肘をつけるように改善した。
 
■改良点(UDの工夫)
対象箇所であるゾーンA・C従来型トイレを平面図に掲載している。男女それぞれの手洗いに1箇所ずつ設置している。
 
 
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●手洗いの手すりの間隔
■設計・施工上の工夫(※調整ごと、苦労したこと)
一般的なトイレ洗面器の手摺幅は700~800程度が採用されている。縮めるにあたり、実際にモックアップで550mmが問題なく使いやすいことを確認し採用した。
 
手洗いの手すりの間隔がわかる平面図、立面図、写真を掲載している。
 
 
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●個別トイレ 手洗いカウンターの形状
ポイント:カウンターの形状を変更し、トイレブース内の通路幅を確保して使い勝手を良くした。
 
・各便房内に設置している手洗いカウンターについて、「カウンターが大きく、通行の妨げになる」「カウンターの角が身体や子どもの頭部に当たる危険性がある」という意見があった。手洗いカウンターの形状を台形から三角形に近い丸みのある形に変更して、トイレブース内の使い勝手を良くした。
 
■設計・施工上の工夫(※調整ごと、苦労したこと)
・扉からの便器への経路に合わせ角をなくすデザインとした。
・洗面器が置ける最小のカウンターサイズに調整し通路幅をしっかり確保。
 
当初案の平面図と写真、変更案の平面図と写真を掲載している。
 
 
23ページ目
 
●バリアフリートイレ内の大型ベッド、照明(光警報)、鏡
ポイント:バリアフリートイレ内の設備についてニーズに応じたきめ細かな対応を行っている。
 
・大型ベッド跳ね上げについて、「折り畳み式ベッドは車いす利用者では操作できない。」という意見があった。操作しやすい跳ね上げ式に変更した。
・照明(フラッシュランプ)について、「ベビーベッドの直上に照明があると乳幼児の目に直接光が入ることが懸念される。」という意見があった。光が直接目に入らない位置に調整した。
・鏡について、「車いす利用者も全身が見える鏡を設置してほしい。」という意見があった。車いす対応便房に姿見を設置した。(計5箇所)
 
「大型ベッド(ゾーンD:バリアフリートイレ)」「光警報をベッド位置からずらして設置」「出入口の扉に取り付けた鏡(ゾーンD:バリアフリートイレ)」の写真を掲載している。
 
 
24ページ目
 
●バリアフリートイレ内のフック
ポイント:バリアフリートイレ内の設備についてニーズに応じた、きめ細かな対応を行っている。
・フック位置について、「出入口付近にあると使いやすい(目が不自由な方も慣れている)。当たっても危なくないフック形状が良い。」という意見があった。出入口扉のブース内側に統一して設置、安全に配慮した形状とする。
 
「フック設置位置」「フックの形状」の写真を掲載している。フックは安全性を高めるために先が円筒状のゴムの製品を採用している。
 
 
25ページ目
 
●バリアフリートイレの扉
ポイント:軽い力で開けやすく、全開時ストッパーや補助手すりで車いす利用者等が操作しやすい扉としている
 
・扉について、「車いす対応便房の引き戸には全開時ストッパーはついているのか。」「扉はなるべく軽い力で操作できることが望ましい。」という意見があった。全開時ストッパーが設置され、軽い力(UDガイドラインの30N以下)で開閉可能な扉としている。
・大きめトイレやバリアフリートイレは子供があけないよう2段の鍵を設置している。
・バリアフリートイレの内部側に補助手すりを設置している。
 
「補助手すり」「バリアフリートイレ(ゾーンA)の扉」「サムターン型の鍵の形状(上)」「鎌形の鍵の形状(下)」の写真を掲載している。
 
 
26ページ目
 
●壁付リモコン類と壁のコントラスト
ポイント:弱視者の視認性を高めるために設置場所ごとに色のコントラストが高まるように工夫
 
・壁付リモコン類と壁のコントラストについて、「もう少しリモコン類と壁色にコントラストをつけてほしい。」という意見があった。同系色をやめ、リモコン背景をA=茶系(木目) B=ダークグレー C=白の3種類で整理を行いリモコンの認識がしやすいようにした。
 
■設計・施工上の工夫(※調整ごと、苦労したこと)
・白やシルバーとのコントラストがはっきりするようBは濃いめのダークグレーを選定した。
・一部同系色の背景となりそうな箇所はプレートをリモコンと壁の間に設置し、コントラストを確保できるよう調整した。
 
「ワークショップ時のコントラストがわかる壁付リモコン」の写真と、「A:背景を茶系とする(従来型トイレ等)」「B:背景をダークグレーとする(個別トイレ等)」「C:一般的な多目的トイレと同じ仕様とする(多目的トイレ等)」の写真を掲載している。
 
 
27ページ目
 
●光警報装置(フラッシュランプ)位置
ポイント:トイレのどこにいてもフラッシュランプの点灯を視認できる位置に設置
 
・非常用フラッシュランプ(光警報)の光の点滅の認識について、「設置位置について、ブース内だけではなく通路にも設置が必要。」「外光に負けて光警報に気づかないのでは。光度や目に入る位置の検討が必要。」「光が強いと見にくい人もいる。フェードアウト・フェードインできるような光があれば良い。」「光の点滅の意味が理解できるように、字幕など文字情報とセットで非常時であることを示してほしい。」という意見があった。
・トイレブースと通路、カームダウン・クールダウンルーム、授乳室にフラッシュランプを設置した。
・柔らかく光るフラッシュランプは現時点存在しない。非常時にはスタッフによる避難誘導がなされるため、文字情報による表示は行わない。
・フラッシュランプ点灯の説明文を張り付ける。
 
フラッシュランプ設置場所として「トイレ通路(ゾーンC)」「トイレ便房(ゾーンC)」「カームダウン/クールダウンルーム」「授乳室」の写真を掲載している。
また、壁面に設置された「フラッシュランプ点灯の説明文」の写真を掲載している。
説明文には、この場所には光の点滅で火災を警報する光警報装置が設置されています。
とピクトグラムと共に記載されています。
 
 
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●<カームダウン・クールダウンルーム>
ポイント:誰もが安心して日本館を楽しめるように落ち着ける場所を提供。
 
人混み、音や光等、環境の状況によって不安や恐怖等を感じ、パニックを起こしやすい人たちが、安心して日本館を楽しむために、カームダウン・クールダウンルームを設置している。整備においては、当事者意見を反映している。
 
・カームダウン・クールダウンルームの内装の仕様について、「壁は緩衝材のような柔らかい素材にしてほしい。」という意見があった。柔らかいクッション材を採用し、色はウォーム系の薄いグレーとする。
・カームダウン・クールダウンルームの照明について、「調光ができる照明を設置してほしい。」という意見があった。部屋の利用者が調光可能な照明を設置している。
 
カームダウン・クールダウンルームの平面図と、「出入口付近」「内装」「部屋の明かりを暗くした場合」の写真を掲載している。
 
 
以上