九頭竜川鳴鹿大堰管理所と九頭竜川流域防災センターの紹介です
九頭竜川鳴鹿大堰管理所と九頭竜川流域防災センターの紹介です
 九頭竜川は幹川流路延長116kmあり、流域面積は2,930km2で福井県の面積の約70%相当し、全国の一級河川109水系と比較した場合、幹線流路延長は40位、流域面積においては20位になります。また、九頭竜川上流の山間部は勾配がきつく、下流から約30kmの地点から勾配の緩やかな下流部の低平地へと広がっていきます。
 なお、鳴鹿大堰は山地から下流の低平地に流れ出す、扇状地の扇頂部分に位置しています。
 (九頭竜川の名の由来)
 なお、九頭竜川の名の由来には諸説ありますが、一つには寛平元年(889年)、平泉寺で白山権現の尊像を川に浮かべたところ一身九頭の竜が現れ、川を下って黒竜大明神社の対岸に着いたとされる事や、また一説には『大乗院寺社雑事記』(1480年)の絵図に崩川と記されているなどから九頭竜川の名と名付けられたようです。
ここで、水利用の歴史に少し触れておきたいと思います。
 江戸時代、九頭竜川が福井平野に入る鳴鹿付近には、用水などを取り入れるため、松杭を三又に組み水中に並べてその間に玉石を詰めて越中三叉を作っていました。また、この越中三叉の実物大の模型は、九頭竜川流域防災センターにあります。また、昭和29年に鳴鹿堰堤が完成し、利水上大切な堰でしたが洪水時には支障となっていたのでH2年度から15年度までの14年間で堰の改築を行いました。
 なお、鳴鹿堰堤の一部は見学橋として、今も存置しています。
(鳴鹿大堰の目的)
 平成2年に鳴鹿大堰建設事業に着手し、事業費446億円により平成15年度に完成しました。
 鳴鹿大堰の役割としては、治水及び利水があり、治水として計画洪水流量の5500m3/sを安全に流下させる機能を有し、利水として福井平野3市1町にまたがる農耕地約10,400haを潤す灌漑用水と、福井市水道用水の約40%をまかなう用水として安定した取水の確保を行うと共に、渇水時においても河川環境の安定のため堰下流4.1m3/sの水量の確保することなどを目的として建設されました。
(鳴鹿大堰のデザイン)
 鳴鹿大堰の建設にあたっては、堰全体が『水面を穏やかに彩る鳴鹿の船橋』を連想できるデザインとしており、また、堰柱に2本突き出た油圧シリンダーが鳴鹿の名前にちなんで『鹿』をイメージできるよう堰全体をデザインしています。
(鳴鹿大堰付近の河川状況)
 九頭竜川中流部では、主にアユやサケ、オイカワなどの生息を確認しており、「アラレガコの生息地」として国の天然記念物の指定を受けています。また、鳴鹿大堰は山と海を結ぶ地点にあるため、生物の移動を重視しております。そのため、魚道を造る際にも多くの実験や検討を行ってきました。
 魚道にはいろいろな種類があり、その中でも階段式魚道は、多くの遡上実績がありますが、階段式魚道のみでは落差が大きいため、アラレガコやカニ等の遡上は困難です。そのため、階段式魚道と遊泳力の小さい魚類等を対象とした人工河川式魚道を合わせた併用式を採用することとしました。
 なお、魚道の設置位置は、稚アユが両岸沿いを遡上することや、魚道の入り口を容易に見い出せるように呼び水水路に近い両岸2箇所としています。
(階段式魚道の概要) 
 日本での設置実績が多く、90%は階段式魚道であります。また、平面式、導壁式、垂直スロット式、逆流式、デニール式、ロックゲート式に比べて、サケ・マス・アユなどの種に対する遡上効果の実績も非常に高いです。
 魚道内には、隔壁という仕切りがあります。隔壁の間隔は参考文献によれば3〜5m程度の事例が多く、これが短すぎれば隔壁を越える水が表層を流れ、勢いが弱まらず水面振動を起こすことがあります。また、長すぎれば、魚が遡上するにあたり疲労してしまう可能性があります。よって、4mと計画しました。 
 隔壁には切欠と言われるくぼみがあります。この切欠には水が少ない時の遡上路を確保のためや、体格の大きい魚種が遡上する時の水深確保の効果があります。さらに、隔壁の下部に潜孔という穴が空いています。そこは、ナマズなど越流部を遡上せず、魚道の底部を遡上する魚の遡上路用や低水時における魚類の遡上用の道としての役割を果たしています。
(人工河川魚道の選定の理由)
 魚道を設ける際、より多くの魚が魚道を遡上できるようにするため、遡上能力が高い魚類だけでなく遡上能力の乏しい魚も遡上させる事が重要です。しかし、落差が大きい階段式や、乱流が生じやすい逆流式の魚道などは底生魚の遡上には適しません。そのため、勾配と水路形状を調整することで、アラレガコなどの底生魚の遡上に好ましい流況を作り出す事ができる人工河川式魚道を選定しました。
(人工河川式魚道の構造)
 実物大の模型実験を行った結果、自然保護上重要な魚種であるアラレガコの遡上に適した石の配置を行い、水路の縦断勾配が1/20の場合、一番多くの魚種が遡上しました。また、より流量の大小に対応できる横断勾配1/15を適用しました。
 さらに、人工河川式魚道に配置した石と底との隙間を設けており、アラレガコが遡上する際に休憩の場として考えたものです。浮き石の配置も原寸大の人工河川式魚道の模型を作成し、実際に供試魚としてアラレガコを用いて行動を観察することにより、浮き石の最適な配置を検討しました。
2009年度の魚道の遡上調査の結果、最も遡上数が多かった5月19日には、両岸の階段式魚道と人工河川式魚道に1日あたり33,000匹を越える遡上が確認されています。遡上数の確認方法は階段式魚道ではビデオ撮影にて確認し、人工河川式魚道では、漁具により採補し、計数を確認しております。
 また、このグラフは主に遡上が確認される時期に調査した日のみのデータですので、実際はさらに多くの魚があがっていると考えられます。
魚の種類に関しては、平成11年度〜平成20年度の魚道モニタリング調査では、階段式魚道では39種、人工河川式魚道では45種、両魚道を合わせると49種の魚類が確認されています。 
 階段式魚道ではアユ、ウグイ、オイカワが多く見られ、人工河川式魚道では、アユ、ヌマチチブ、ウツセミカジカなどが多く見られます。また、魚ではありませんが、モクズガニも多く見られます。
 (魚道観察室の概要)
 左岸側の階段式魚道には、一般の方々が魚が遡上したり降下する様子が観察できる魚道観察室があります。魚道観察室側は暗くすることにより、人が見学している様子が魚に見えないようにしています。
 左の写真は魚道を子供達が見学している様子で、多くの方々が訪れます。
 右の写真はアユが遡上している様子を撮影したものです。
 なお、魚の移動状況は防災センターやインターネットでご覧頂けるようにしております。
九頭竜川流域防災センターでは、防災センターを7つのゾーンを設け、魚道の状況をご覧頂けるモニターをはじめ、九頭竜川の治水などについて広く理解を深める場として、平成14年4月に開館し運営しています。
その目的として、
 平常時は、九頭竜川の治水(防災含む)、利水、河川環境の保全に
 関する様々な資料を保管、展示し、地域の方の学習の場とした施設
 として、洪水時等は、防災センターとして河川情報システムを活用し、
 地域防災基地として利用できる周辺市町のコミュニティ防災拠点とし
 て活用することを目的としています。
九頭竜川流域防災センターの運営内容は、来館者に対して施設や展示物の説明を行っており、開館以来平成22年3月末までに約13,000名が来館しました。

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