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4.土地利用

(1) 概要
 伝統産業としては、今立町五箇地区を中心とした約1500年の歴史のある越前和紙、700年の歴史に培われた武生市の打刃物業、鯖江市河和田地区を中心とした1450余年の歴史を有する越前漆器、平安時代末期にはじまり日本六古窯の一つに数えられる宮崎村の越前焼などが全国的に有名である。
(2) 越前和紙
 越前和紙は、伝説によると男大迹王のおつきの女性であった川上御前が、紙すきの技法を今立町五箇の村人に教えたのが始まりとされている。越前和紙の里である五箇地区には、紙すきの始祖神として水波能亮命(川上御前)を祭祀する大滝神社がある。
 正倉院文書の宝亀5年(774)には、紙を税として納める国の一つに越前の国の名前がみられる。これには、天平勝宝7年(755)に越前より写経用紙が税として、奈良の都へ送られていることが記されている。また、法華経100部800巻、灌頂経1部12巻などが東大寺に貢上されている。このように、古文書からみると越前では7世紀後半から8世紀前半にかけて、紙が漉かれていたことを窺い知ることができる。
 延長5年(927)には、紙原料の楮・雁皮・糊空木などが京の都へ送られている。正倉院には、天暦5年(951)越前国足羽郡庁と記された奉書風上質紙が現存している。
 越前奉書は、南北朝時代(1338年頃)に越前守護の斯波高経が道西掃部に紙漉きを命じて献上させ、その優れた紙を賞賛して奉書と命名し、それ以後出世奉書として有名になった。朝倉氏の統治時代の文明9年(1477)には、雁皮を原料として漉いた鳥の子紙を都へ送り、貴族達に大いに喜ばれた。こうして製紙業は、中世になると本格的に専業化し、紙座を形成するようになり、歴代領主の手厚い保護を受けて発展していった。
 道西掃部の子孫で三田村家の祖である大滝掃部は、織田信長に御用紙工として重用され、奉書の包紙に「七宝印」を押すことを許されていた。豊臣秀吉が天下人となり、丹羽長秀を北ノ庄に置き越前を統治させたとき、長秀も大滝掃部に奉書紙職を安堵させた。
 このように、奉書紙売買などの特権を許されている三田村家は、江戸時代に入り福井藩主となった松平秀康によっても、御用紙職としての特権を認められた。同時に徳川家康からも江戸幕府の御用紙職として任命され、越前和紙の地盤が固められるともに、御用紙屋としての独占的地位を得た。(※今立町誌 p.450、ふくいの工芸 p.175~178)
 当時幕府に納めた御用紙は、奉書のほか墨流し・檀紙・鳥の子などであった。
 江戸時代、越前における和紙の産地は10地区を数えたが、現在においても盛んな地区は今立町五箇地区のみである。五箇地区の用紙は、かつて、藩札・幕府御用紙・太政官札などのほか、大正8年(1919)ベルサイユにおける第一次世界大戦講和会議の条約用紙などに用いられるなど、特選的用途をもった和紙の名門といっても過言ではないほど、輝かしい歴史を有している。現在では、洋紙には持ち合わせていない和紙独特の風合いを有していて、奉書や小判鳥の子紙、画仙紙など、特殊な用途の上質紙として用いられている。
原料の楮や三又などは、かつては茨城県・高知県・岡山県などから仕入れていた。副原料である「ネリ」に使用する「とろろあおい」は、付近の服間・味真野産や石川県産を用いていた。(※日本地誌10 p.382)
 五箇地区において和紙業が盛んになったのは、山麓の集落特有の耕地面積が寡少なことが一つの要因ではあるが、湧水群など水に恵まれていることが最大要因である。昭和49年(1974)、今立町に「和紙の里会館」が完成した。そして、越前和紙は同51年(1976)に通商産業大臣から伝統工芸品の指定を受けた。

表1.3.13 地目別土地利用面積の推移(※福井県統計年鑑より)(※道路河川を除く非課税地を含めた面積)

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<福井県>(単位:ha)
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 268,264 53,510 130,095 10,002 74,656
S56 271,880 52,438 114,474 11,548 93,420
S61 273,811 51,674 107,171 12,856 102,111
H3 274,174 50,922 104,891 14,028 104,333
H8 273,442 49,863 99,675 15,421 108,484
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 268,264 53,510 130,095 10,002 74,656
S56 271,880 52,438 114,474 11,548 93,420
S61 273,811 51,674 107,171 12,856 102,111
H3 274,174 50,922 104,891 14,028 104,333
H8 273,442 49,863 99,675 15,421 108,484

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<流域合計>(単位:ha)
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 183,049 42,462 78,734 7,895 53,957
S56 188,361 41,812 71,569 9,153 65,826
S61 191,972 41,261 69,714 10,164 70,833
H3 192,217 40,846 67,645 11,119 72,606
H8 190,651 39,849 65,554 12,277 72,973

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<九頭竜川・日野川・足羽川(福井市)>(単位:ha)
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 33,922 8,998 10,671 2,480 11,774
S56 33,922 8,619 10,489 2,904 11,911
S61 34,031 8,378 10,332 3,152 12,170
H3 34,031 8,105 10,163 3,431 12,333
H8 34,060 8,178 9,613 3,784 12,485

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<兵庫川・竹田川>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 27,988 11,720 6,521 1,620 8,126
S56 28,947 11,686 6,746 1,881 8,634
S61 28,954 11,539 8,727 2,211 6,476
H3 29,204 11,688 8,302 2,450 6,764
H8 28,775 11,330 8,202 2,759 6,484

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<本川>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 25,769 3,609 13,909 651 7,600
S56 26,230 3,655 14,023 707 7,845
S61 26,354 3,633 12,761 749 9,212
H3 26,494 3,569 12,569 842 9,514
H8 26,761 3,427 12,200 937 10,197

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<本川・真名川>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 44,848 4,608 25,123 566 14,551
S56 47,132 4,617 18,335 648 23,532
S61 47,936 4,726 16,328 783 26,098
H3 48,166 4,774 15,349 838 27,206
H8 48,357 4,711 14,720 887 28,039

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<日野川中流>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 18,544 6,884 5,224 1,789 4,647
S56 18,825 6,714 5,092 2,095 4,924
S61 20,015 6,623 5,087 2,239 6,066
H3 19,230 6,443 5,006 2,440 5,341
H8 19,230 6,123 4,964 2,660 5,484

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<日野川上流>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 13,418 3,384 6,744 416 2,874
S56 14,186 3,279 7,058 485 3,364
S61 15,146 3,307 6,859 547 4,434
H3 15,383 3,283 6,747 592 4,760
H8 15,494 3,201 6,394 661 5,239

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<足羽川>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 10,832 1,563 6,873 146 2,249
S56 11,025 1,494 6,618 158 2,754
S61 11,404 1,328 6,471 182 3,424
H3 11,537 1,297 6,348 193 3,699
H8 11,549 1,243 6,304 223 3,779

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<天王川>
合計 農地 林地 宅地 その他
S50 7,729 1,695 3,669 228 2,136
S56 8,093 1,748 3,207 276 2,862
S61 8,132 1,728 3,150 300 2,954
H3 8,170 1,688 3,161 333 2,989
H8 6,425 1,637 3,157 365 1,266