◎ 23名の委員のうち、17名の委員が参加して行われました。前回、前々回で九頭竜川水系の治水について意見交換をしたのに引き続き、今回は利水と環境について意見交換を行いました。


 委員会の冒頭、河川管理者から九頭竜川の利水と環境について説明がありました。利水については、

・河川水の用途別利用状況
・平成6年渇水時におけるダム群の効果
・下荒井堰や足羽川堰での取水量と河川流下量の配分
・おもな流量減少区間(発電用水による区間、農業用水による区間)
・流量減少区間の改善に向けた施策(河川維持流量の確保)
・水質の経年変化、台風6号による濁水の状況

等が説明されました。
また、環境については、

・九頭竜川に生息する動植物
・ダムによる河川流量の減少や平滑化
・生物の生息にとって障害となる構造物の改善
・河川敷の占用状況
・河道内の不法係留の状況

等が説明されました。

これを受けて、委員及び河川管理者からは、次のような意見や質問が出されました。



(1)流量減少区間について


1.九頭竜川本川の下荒井堰−市荒川間の流量が少ない点について改善してほしい。

2.真名川の河川維持流量は、川幅等を考えると少なすぎる。

3.発電ガイドラインにより流量が改善されているのは九頭竜川上流部だけなのか。中流部でも改善してほしい。

4.環境、漁業、水質、景観などの点で水が少ないというのが、環境面の保全復元を視野に入れた「川らしさ」という点で、委員会の意見として出てきている。

5.ダムを作ること自体が生態系に影響を与えるのであり、単に流量減少区間だけが問題ではない。

6.流量減少区間については社会問題となっているので、データに基づき委員会で様々な側面から考える必要がある。




(2)水資源の適正な配分


7.平成6年の渇水時、足羽川堰からの農業取水を少し減らすなど調整してもよかったのではないか。管理運営体制を見直すべき。

8.平成10年に足羽川堰からの水利権更新の際、田の面積等を考慮して水利権量を減らした経緯がある。
また取水実績を見ると、渇水時には水利権量までとれなかった時期もある。(河川管理者)

9.農業者にとって水利権は極めて大切な問題であり、調整が難しい。

10.水が豊富で山がある日本の特性を考え、再生可能なエネルギーである水力発電をもっと評価すべき。

11.水力発電は費用が安く環境にやさしい方法である点を評価すべき。

12.流域委員会で維持流量の多寡を論じるのは不自然。国土交通省と経済産業省なりの間で国のエネルギー対策として論じるべき。

13.治水、利水、環境の関係者が協議して、妥協点を見出すことは可能ではないか。

14.水が足りているかどうかについては、全国規模、流域規模でも偏りがあるので、地元の川をよく知る人と議論をして、それを計画づくりに反映していくべき。

15.浄土寺川ダム事業の目的に「ふだんの河川流量を確保する」とあるが、冬場の流雪用の水も確保される予定か。

16.克雪用水として、流雪溝に流す水を供給できるよう容量を確保している。(河川管理者)

17.降雨(雪)など気候変動も視野にいれた検討も必要な時代である。

18.水の配分の調整について、従来の国のやり方にとらわれず、民間的な発想で流域委員会の提案をだしてもよいのではないか。




(3)治水・利水方式等のあり方

19.福井県では昔は伏流水や地下水も利用していたが、今はダムの水に依存する方向に向かっているのではないか。

20.現地材料の利用、ダムの小型化、遊水地などにより経済性と環境を重視した治水・利水方式を検討してはどうか。

21.完全な治水を目指すのは理想だが20世紀の発想。環境面も配慮して調整していくべき。

22.大野市では地下水を飲用に使っているが、過去に河川の堀削により地下水位が低下した経緯もあり、今後は遊水地も含め地元の生活事情を考えた新しい検討をしてほしい。

23.アユ漁だけでなく遊水地でのヘラブナ養殖など新発想の漁業形態も模索してはどうか。

24.農・林・畜産・水産業の複合経営など、エコロジーを考えた新しい手法を検討すべき。



(4)九頭竜川上流部や真名川等における河道内の樹林について
 

25.樹林が河川の疎通能力に影響していないか。

26.鳥類の生息場となっている点を考慮しなければならないが、疎通能力が障害されている箇所については、今後流域委員会で議論いただきたい。(河川管理者)

27.洲の上流側は背水という現象で水位が上昇し、下流側は徐々に洪水流が流されるので安全になる。その度合いにより、樹林の扱いが決まるのではないか。




(5)生物の生息に障害となる河川の構造物等について


28.障害となっている構造物を改修するとしたらどのような方法があるのか。改修できるところは早く改修してほしい。

29.改善した事例としては、一乗谷川で石積みを用いた多孔質な護岸構造に改めた。蛍の住める川を目標とし実際に復元した。落差工についても、多段式の魚類が上りやすい方式に改めた事例がある。県では、基本的にコンクリートが見えない構造にしていこうとしている。今後、河川整備のメニューの中で、具体的に示していきたい。(河川管理者)

30.九頭竜川本川では、ポーラスストーン(空隙が多く透水性がよい)や蛇籠など植生が繁茂するような工法もとっている。生物が生息できるということは人間も近づきやすいという状況になると考えている。(河川管理者)

31.護岸構造、工作物、瀬淵の状況、取水排水の状況などの河川環境の情報を提供すると議論しやすい。

32.日野川では川涸れが多いが、サクラマスの生息環境の保全に、淵に湧いている伏没水が活用できるのではないか。

33.日野川で花火大会の際に浅瀬やワンドを均してしまうが、魚の避難場所を損うので、やるべきではない。



(6)水質保全・ゴミ対策


34.ゴミや不法投棄は重要な問題。河川の管理について、海外では住民の意見が反映される組織になっているところもあり、海外での対策の事例なども調べてほしい。

35.農薬による水質汚染を流域委員会で議論すべき。




(7)河道内の係留船について


36.不法係留船については、地方自治体などが建設的かつ安全に対策すべき。

37.河口部に保管場所をつくるべく施工中であり、完成すればそこに移っていただく。維持管理費も負担していただくことになる予定。(河川管理者)

38.プレジャーボートによる水質汚染等はあるか。

39.ゴミ問題をはじめマナーの問題もあり、地域住民にとってはありがたくない存在という要素もある。(河川管理者)



(8)川に親しむ場づくり、住民の関心を育てる


40.子どもが岸辺に下りて触れ合えるような場が失われている。

41.河川に関する学習について、福井県の学校は関心が薄い。

42.遊び、川への親しみ、川を学ぶことも議論し、どういう形で川のよさを次世代に伝えていくかを、危険というものも直視しながら流域委員会で議論していきたい。

43.住民が理解し共感できる環境保全の目標設定が重要(例:サクラマスが遡る川など)。

44.災害や渇水の状況などだけでなく、ダムにより一定の水が流れる効果など、ダムのいい点も住民に紹介してほしい。



(9)堤防の桜並木の保全について


45.足羽川の桜は、根が堤防を傷めるので、枯れたときに植え直すことはできないという話も聞くが、どうなっていくか。

46.勝山の弁天桜が老木化しているが、木には根張りで堤防を守る効果もある。

47.植え直すということは、河川法上からは、堤防の脆弱化の点から難しい。例えばスーパー堤防にするなどして河川の影響のないところに同じレベルで植えるという方法はとれるが、家屋の移転などの痛みを伴う。(河川管理者)


◆九頭竜川水系の主な流量減少区間