当日は18名の委員が参加し、河川管理者から「足羽川の治水、環境・利水」についての説明がなされ、意見交換が行われました。
1.足羽川の環境・利水について
「足羽川の環境・利水」に関して説明した主な内容は、以下に示すとおりです。
1) 足羽川の水環境の現状
2) 正常流量の考え方
3) ダム容量の考え方
4) ダムの効果と影響
5) 環境・利水の課題
以上の説明を実施した後に、次のような質問や意見が出されました。
1. 水収支縦断図について、5〜10k区間の青線(維持流量)に対して、動植物から求めた赤点がなぜずっと下にあるのか?また、ゼロに近い赤点があるが、これは動植物に配慮しなくていいという解釈か?
→赤点(動植物からの必要流量)と緑点(景観からの必要流量)を包絡するように維持流量を設定している。
2. 水収支縦断図であり、5k地点がコントロールポイントで維持流量の線を設定した。
3. 対象となる魚類(例えばアユ等)の移動に必要な最低水深や断面形状で設定している。
4. 景観アンケートについて、流量規模が異なる4枚のモンタージュ写真があるが、これらより少ない流量は見せていないのか?
→写真は4枚だが、その間の流量についても回答の選択肢があり、9択で実施した。
5. 渇水時において下流の流量が確保されるためには、ダム直下で流量が減少することを差し引いて考えることが必要。ダムによる補給方策のデメリットについて、ダム下流の流量減少による景観の悪化を含めるべき。
→必要流量(正常流量)の検討は、ダム直下流の景観についても配慮した。
6. 「治水(洪水調節)+利水(正常流量補給)」と「治水のみ」のダムのコストを概算で教えてほしい。
→今の段階で、全体のダム高さ、事業費の具体的な数字は出していない。
7. 温暖化によって降雪量が減っており、雪融けの時期も早まっている。ダムは治水のみならず、利水にも必要である。夏場、水の無い枯れた川をダムによってカバーして、水の流れる川に近づけるのが我々の使命である。
8. 将来の水需要(かんがい用水)の見通しについて議論されない中で、ダムで補給することを前提とすることに疑問を感じる。
→足羽川については新たに水を開発して水を供給する必要はない。正常流量、あるいは維持流量確保のための補給の必要性について、意見をいただき考えていきたい。
9. ダムに常時貯水するか否かによって、ダムのつくり方が大きく異なる。まずは、ケース2、3のどちらにするかが議論の焦点になると思う。
10. ケース1、2、3の問題点やその対応策等についての全国的事例が参考になると思う。
11. 農業用水で不足している部分を県民の税金で負担するということに対して、県民のコンセンサスが得られるかがケース1の課題。
12. 水が時々足りなくなる損益と事業費についてコスト比較するべきでは?
→コストは出せるが、費用対効果では見合わない。農業形態が変化している状況の中で、数値だけでの比較はできない。
13. ケース3では生態系への影響は無いと思う。現在の生態系そのものは、現在の農業形態に合わせたものとなっている。ダムをつくるか否かの前に、地元の人たちが川をどのようにしたいかの議論が必要であり、費用だけではないと思う。
→足羽川の環境は良いが、瀬切れといった問題がある。ダムによる貯留と、下流の瀬切れ解消との引き替えが議論の焦点になると思う。
14. コスト面も大事であるが、レクリエーション等の多面的な機能を総合的に反映できるダムづくりが必要。目的を定めてできる限りの範囲で実践してほしい。
15. 夏季の水量が少なくなる時期に維持流量を部子川のダムサイトだけで十分に確保出来るのか?
→灌漑期に十分な取水が得られるような補給を考えている。
16. 日野川では夏休みの時期になると瀬切れが発生している。夏休みこそ十分な維持流量を確保するべき。
17. ケース3の治水のみのダムをつくった場合でも、維持流量を確保していくことは必要。これには遊水池や貯水池でまかなう案も考える余地がある。
18. ダムを作って、それを最大限利用するのが人間の知恵である。
19. 従来型の発想でのダムづくりは今の時代に合わない。ダムをつくるにあたっては環境の概念が必要である。
20. ケース2→3→1の順で思案してもらいたい。全部は難しいのでケース2とケース3でシミュレーションしてみてはどうか。
21. 下流の環境のために上流のダムで水量を確保しようとすれば、上流と下流の環境はトレードオフの関係にある。足羽川堰堤下流の農業用水を還元できるよう調整できれば、ケース3がいい。
22. ケース2は渇水時に農業水利に回されることが明らかであり意味が無い。ケース1とケース3の選択だと思われる。ダムと地域振興はセットになりつつあり、この視点での評価も必要である。
23. ダムの場合、目的をはっきりするのが大事であり、福井方式を立ち上げる意気込みで、総合的な判断が必要である。
24. ケース3について、同じ水没するのであれば、多目的に使う方が水没者の同意も得られやすい。直ちにケース3は賛成できない。
25. ケース3をメインに考えるのはいかがかと思う。上流の地権者の協力が得られる範囲で決めてほしい。洪水対策だけのダムより、楽しみや憩い、教育等を含めたダムの方が良いのではないか。福井市民が足羽川を大事にする流れの中でダムを位置づけたい。
●水収支縦断図(下新橋地点での正常流量を確保した場合)
●補給の考え方
水利流量: 流水の占用のために必要な流量であり、かんがい用水、都市用水(上水道、工業用水道)、発電用水をいいます。
維持流量: 「動植物の保護及び漁業」、「景観」、「流水の清潔の保持」、「舟運」、「塩害の防止」、「河口閉塞の防止」、「河川管理施設等の保護」、「地下水の維持」等を総合的に考慮し、渇水等において維持すべき流量をいいます。
正常流量: 流水の正常な機能を維持するために必要な流量であり、維持流量及び水利流量の双方を満足する流量をいいます。
●ダムによる補給方策のメリット・デメリット
2.足羽川の治水について
「足羽川の治水」に関して説明した主な内容は、以下に示すとおりです。
1) 対象洪水の考え方
2) 足羽川の現状と改修の経緯
3) 整備メニューの考え方
4) 足羽川の整備メニュー
5) 治水の課題
特に治水の課題として、今後様々な代替案の絞り込み段階を迎えるにあたり、洪水モデルの再現性についてのさらに精緻な追加検討をする必要があると認識し、その検討を踏まえて精度を上げた比較検討をすることとしています。
以上の説明を実施した後に、次のような質問や意見が出されました。
26. ダムか遊水地ではなく、治水ダムプラス遊水地(ネットワーク化)という考え方が大事である。今後、使えなくなった水田を遊水地に変更していき、従来の用水路をネットワークの手段として利用してみてはどうか。
27. ダムと遊水地を比較する場合、「環境に対する負荷」、「維持管理していく上でのコストと容易さ」、「中長期計画に対する適合性」といった視点も必要である。
28. 昭和28年9月型、昭和36年9月型の洪水については、雨量では戦後3番目と4番目で、流量では1番目と2番目である。雨量を引き延ばして流量を算出する方法(考え方)は適切か?流出モデルによる算出方法は妥当なのか?
●目標設定の方針