九頭竜川流域誌


1.4.2 38豪雪

(1) 気象概況
 昭和38年(1963)1月は、福井・石川・富山・新潟の各県を中心に、東北から北陸、山陰地方に至る日本海側の各地で豪雪となった。このときは、例年と比べて強い寒気が約1ヵ月にわたつて日本を覆い、降雪も1ヵ月にわたって継続し、降雪地域が東北から九州まで広い範囲に及んだ。この間、異常な低温が続き、西日本では1月の平均気温が平年より3℃も低くなった。
 九頭竜川流域では、昭和37年(1962)12月31日から昭和38年2月始めまで、降雪が続いた。12月30日に日本海を低気圧が発達しながら通過し、強い冬型の気圧配置となり、寒気の第一波が到来して31日朝から本格的に雪模様となって、翌1月1日にかけて平野部で20〜30cm、山沿い地方で30〜50cmの積雪となった。
 11日に第3回目の寒波を伴う低気圧が、日本海を発達しながら東進してきて、日本海東部で停滞した。このため、11〜13日に平野部で50cm、山沿い地方で100cm程度の大雪となった。さらに、15〜17日までに平野部で60cm前後、山沿い地方で100cmの大雪が続き、17日の積雪は福井で99cm、大野で172cmとなった。
 22日からは、石川・富山両県で大雪を降らせていた前線が南下し始め、高層の冷気団の接近に伴って、23日午後9時頃から猛烈な吹雪となり国鉄(現在のJR)や私鉄などの交通が全てストップした。24日午前9時の積雪は、福井で123cm、大野で203cm、武生で270cmとなった。
 その後も雪は降り続き、25日には吹雪も治まったものの、家屋の倒壊や雪崩等の雪害が相次いで発生するようになった。28日には、日本付近上空の寒気が弱まり、冬型の気圧配置もゆるみ降雪も少なくなった。23〜28日の間には大雪警報・注意報・情報が17回も発表され、同期間の新積雪の合計が福井で183cm、大野で244cm、今庄で120cmとなった。また、28日午前9時の積雪は福井で206cm、大野で268cmとなった。
 29日にバイカル湖付近から南下した寒気が日本海に流れ込み、雪が多く降り出した。31日までには平野部、山沿いともに30〜70cm程度の新積雪となり、同日朝の積雪は福井で213cm、大野で287cmと両観測所で観測を開始して以来の大雪となった。その後、降雪は少なくなり、2月1日には上層の寒気も弱まり、冬型の気圧配置もゆるんだので、雪崩注意報を除き大雪・波浪・電線着雪注意報は解除された。

表1.2.3 観測所別降雪・積雪記録  (単位:cm)
観測所名 総降雪量 1月降雪量 日最大降雪量 最深積雪量
降雪量 起日 積雪量 起日
福井 563 455 57 1月26日 213 1月31日
大野 1,003 799 70 1月24日 288 2月4日
三国 314 268 50 1月26日 128 1月27日
勝山 1,130 889 95 1月24日 325 1月31日
武生 546 456 50 1月26日 220 1月27日
大谷 791 511 60 1月16日 275 2月4日
中島 1,142 879 106 1月16日 350 2月4日
今庄 952 689 69 1月11日 315 2月1日
図1.2.9 積雪分布(1月28日午前9時の状況) 図1.2.10 降雪量と積雪量の推移
図1.2.9 積雪分布(1月28日午前9時の状況)

(2) 被害状況
 人的被害としては、1月24日午後1時過ぎに勝山市横倉で表層雪崩が発生し、公民館・神社・民家など14棟が押しつぶされ4世帯19人が生き埋めとなり、14人が死亡する大惨事が発生した。さらに、26日午後2時頃足羽郡美山村(現美山町)で雪崩が発生し、下校中の先生と生徒9人が生き埋めとなり、4人が死亡するという惨事が生じた。
 九頭竜川流域では、福井市、勝山市、美山村、坂井町、池田村(現池田町)などで25人の人命が失われ、42人が重軽傷を負った。
 建物被害は、積雪が200cm前後となった1月18日頃から家屋の倒壊が始まり、23〜24日頃から増加し、31日には倒壊が続出した。
 交通機関は、相次ぐ豪雪のため1月11〜12日頃から運休が始まり、24日から31日までは完全にストップし、2月4日に国鉄(現JR)北陸本線が開通するものの、19日頃に京福電鉄が全線開通し、3月4日に越美北線が開通してようやく解消されるまで不通が続いた。なお、国鉄北陸本線開通にあたっては、自衛隊から1,500余人、職員や作業員約15,000人、各高校の生徒約1,000人の勤労奉仕があった。また、福井〜大野間の除雪には、自衛隊250人をはじめ国鉄職員および民間人約1,000人が携わった。
 河川被害としては、2月20日から高橋川などの小河川や新保用水などが、雪どけによって氾濫し、浸水被害が生じた。
 福井県の被害状況は、表1.2.4のとおりであった。
 なお、勝山市、大野市、美山村(現美山町)、川西町(現福井市川西地区)、今立町に災害救助法が発動された。

表1.2.4 福井県の被害状況 (※福井気象百年p.49)
人的被害
死者:25人 負傷者:48人
建物被害
家屋全壊:623棟 家屋半壊:69,653棟
床上浸水:323棟 床下浸水: 2,665棟
被害箇所等
堤防決壊:48箇所 道路損壊:373箇所 橋梁流失:106箇所
罹災者
罹災世帯:16,510 罹災者:68,387人
被害総額
6,653,611千円
38豪雪の状況(昭和37年末から昭和38年1月末まで) 38豪雪の状況(昭和37年末から昭和38年1月末まで)
連日の大雪で民家は雪で埋まり、 雪の山となった福井駅前(上)
2階から出入りする(福井市) 人海戦術による除雪作業(下)
38豪雪の状況(昭和37年末から昭和38年1月末まで)


九頭竜川流域誌メニューへ
第2章メニューへ
戻る次へ
TOPに戻る

Copyright (c) 国土交通省近畿地方整備局 福井工事事務所 2001 All Rights Reserved.