九頭竜川流域誌


2.2.2 地質時代区分

(1) 先カンブリア紀の飛騨変麻岩
 飛騨変麻岩は、今から5億年以上も前にできた日本列島では最も古い岩類で、九頭竜川上流の和泉村谷戸口付近から西方に、真名川の若生子付近にかけて、西北西〜東南東方向に分布している。また、打波川中流・勝山市西方・足羽川支流芦見川中流・上志比村市荒川付近などでも見られる。
 飛騨変麻岩の主体をなすものは、黒雲母角閃石変麻岩と角閃石で、これにしばしば結晶質石灰岩を伴う。この他にも、黒雲母変麻岩・長石変麻岩・ホルンフェルスなどが局部的に介在する。したがって、岩石全体としては縞模様となっているのが特徴である。
(2) 古生代デポン紀
 越美山地・南条山地の基盤は、主として古生層である。九頭竜川流域の古生層の最大の特徴は、デポン紀の上穴馬層群が含まれること、変成岩類あるいは塩基性岩脈の貫入がみられ、二畳紀中には厚い輝緑凝灰岩が存在し、古生層は全体として石灰岩が比較的多いことなどがあげられる。
 上穴馬層群は、和泉村上伊勢周辺および大谷地区に、黒灰色の石灰岩を主として断片的に分布している。司馬巣谷近辺のものは、主として石灰岩と硅質砂岩からなり、石灰岩は黒灰色を普通とするが、白馬洞付近では灰白色を呈し、かなり結晶質である。
(3) 中生代
 九頭竜川流域に分布する中生層としては、九頭竜川の中・上流域に広くみられる手取層群および各所に分布する足羽層群があげられる。
 手取層群は、中生代ジュラ紀中期から白亜紀前期にかけての地層で、福井・石川・富山・岐阜などの県にまたがって分布している。九頭竜川上流域の手取層群は、下の地層から順に九頭竜亜層群、石徹白亜層群、赤岩亜層群に分けられる。九頭竜亜層群は海成層で、ジュラ紀中期から後期のアンモナイトなどが産出する。石徹白亜層群は汽水から淡水の環境に堆積したもので、カキやシジミなどの貝化石や植物化石を産出する。赤岩亜層群は淡水域に堆積したもので、ドブ貝などを産出する。これまで、恐竜の化石は石徹白・赤岩亜層群から発見されている。このように手取層群からは、恐竜化石のみならず、植物化石や貝化石をはじめワニ・カメ・鳥類・魚類なども多く発掘され、恐竜の生息当時の古環境が徐々に明確になりつつある。
 勝山市北谷地区の中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて形成された「手取層群」と呼ばれる地層から、昭和57年(1982)にワニ化石と一緒に約1億2千年前の恐竜化石が採集され、一躍脚光を浴びるようになった。そこで福井県では、平成元年度(1989)より「福井県恐竜化石調査事業」に基づき恐竜化石の発掘調査を実施した。発掘作業によって、10種類以上の恐竜化石や足跡化石が次々と発見されている。発掘された恐竜には、イグアノドン科(和名フクイリュウ)、アロサウルス科(和名:カツヤマリュウ)、ドロマエオサウルス科(和名:キタダニリュウ)などと命名されている。
 
図1.2.18 手取層群の分布図 図1.2.19 手取層群の柱状図

恐竜の足跡化石 (福井県立博物館)
恐竜の足跡化石(福井県立博物館)
ワニ化石 (福井県立博物館)
ワニ化石 (福井県立博物館)
ワニ化石 (福井県立博物館)
 足羽郡美山町の足羽川中流域は、手取層群分布域の南西端にあたる。これは下位から東天田礫岩層・境寺互層・小和清水砂岩層・皿谷頁岩層に区分される。しかし、東天田礫岩層〜小和清水砂岩層は、全体として九頭竜川亜層群上部層の上半部に相当し、皿谷頁岩層を石徹白亜層群に対比するものと考えられている。
 足羽川上流域の足羽累層は湖成層であって、後期白亜紀の植物化石が見つかり、足羽植物群と呼ばれ、足羽層群の基となっている。植物化石・岩相から足羽層群に相当すると考えられている地層は、福井県の各地に点在しており、九頭竜川上流域の平家岳累層、大野市南部の姥ヶ岳礫岩層・巣原層、武生市南東部の入谷互層などがある。
 南条山地は、主に中生代の堆積岩類(砂岩・頁岩・珪質頁岩)から成り、その中に中・古生代の石灰岩・チャート・緑色岩などの岩塊が取り込まれている。
図1.2.20 足羽側流域の手取層群の地質図 (※日本の地質5 中部地方U p.36)
(4) 新生代新第三紀
 加越山地の西部にある浄法寺山を中心とする区域から北西方に加越台地を経て、日本海沿岸の三国・吉崎方面まで新第三紀層が続いている。加越台地は広く洪積世の砂で覆われているが、JR北陸本線牛ヶ谷駅から吉崎に至る県道に沿って、台地麓に連続して露出している所がみられる。
 丹生山地は、主として新第三紀の安山岩や凝灰質砂岩・泥岩など火山性の地層から成っている。また、越前中央山地の中腹以上は古第三紀の安山岩類とそれを覆う新第三紀の変質安山岩類で成っている。
(5) 新生代第四紀
 第四紀層は、河岸段丘の段丘堆積物および旧扇状地堆積物などである。河岸段丘としては、九頭竜川本川の大野市東勝原〜勝山市付近に広く発達しており、支流では石徹白川の伊月・角野前坂・三面・小谷堂にみられ、ほとんどが礫層から成っている。また、丹生山地の天王川・吉野瀬川の中・下流域にみられ、勝蓮花付近では厚い巨礫層から成り、小曽原・織田付近では顕著な粘土層や砂層を挟んでいる。日野川筋では、鯖江武生台地が礫・砂・粘土から成っている。
 旧扇状地堆積物としては、大野盆地の木ノ本・伏石の扇状地、勝山市南部の猪野の扇状地がこれに属し、いずれも洪積世の砂礫層である。堆積物の特殊な例としては、洪積世に誕生した大野盆地の塚原野があり、安山岩層火山性砕屑物から成っている。


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