九頭竜川流域誌


3.4 林業

(1) 概要
 福井県は、県土面積の約75%が山林であるにも関わらず、木材生産量が少なく、森林県であるが、林業県ではない。これは、岩手県や島根県などとともに、木炭の生産が全国で5指に入っていた土地に起因している。クヌギなど炭材を伐採したあと、そのまま放置しておけばひとりでに新芽を出して、30年も経てば薪炭林として十分に成長するので、あえて資金と労力を費やしてスギやヒノキを植林する必要がなかったからである。しかし、昭和30年代に起こった燃料革命は、木炭を燃料の王座から転落させ、今日に至っている。
 このように、福井県では、そま・木こり職は少なく、代わりに広葉樹を利用するため木地師が山に広く浸透していった。木地師は、ブナやトチなどを求めて全国をくまなく歩き、轆轤を携えて家族とともに2〜3家族の小集団で、あるときは50〜60世帯もの大集団移動・定着・移動を繰り返す漂泊の民であった。彼らは適材木があれば滞在して、裁断してふいごを吹き、轆轤という回転道具によって椀・木鉢・木盆などの木地作りを生業としていた一種の職能集団で、食器などとして売り歩いて生活していた。木地師は、諸役免除や商売自由の特権を与えられ、諸国の山中を移動し、土地に固着して定住する生活様式をとっていた。しかし、明治の初めに土地所有制度が確立したとき、木材自由利用の特権も失った。
 越前の谷には、木地師の末裔の集落が多くあり、一部には六呂師(現大野市)といった地名として残っている。(角川日本地名大辞典 18 福井県 p.1195)
(2) 森林面積
 九頭竜川流域の森林面積は、平成7年には 216,676haであり、県全体の69.1%に相当している。同年の人工林の占める割合は39.7%、天然林は57.1%となっている。
 森林面積の推移を昭和40年からみると、ほぼ総面積に変化は見られない。
 しかし、人工林と天然林およびその他の面積を平成7年と昭和40年とで比較すると、人工林が32,401haが増加しており、天然林が28,056ha減少している。
 流域の森林面積比率をみると、約46%を本川と真名川流域で占め、日野川流域で約24%、足羽川流域で約13%で、この3流域で全体の83%を占めている。
 天然林が多い流域は、真名川と日野川上流域で、両流域で全体の59%を占めている。

表1.3.8 流域別森林面積の推移 (単位:ha)
区分 昭和
40年
昭和
45年
昭和
51年
昭和
56年
昭和
60年
平成
1年
平成
7年
S40〜H7
の増加率
九頭竜川・日野川
・足羽川(福井市)
16,603 16,346 16,781 16,659 16,650 16,576 16,476 -0.8%
兵庫川・竹田川 13,940 13,576 13,190 11,900 12,062 12,073 11,844 -15.0%
本川 27,859 26,233 26,827 26,416 27,378 27,489 27,225 -2.3%
本川・真名川 74,451 76,205 76,005 74,761 76,415 76,357 76,282 2.5%
日野川中流 14,405 14,379 14,222 14,421 14,396 14,396 14,250 -1.1%
日野川上流 30,096 31,104 31,778 32,172 32,178 32,152 31,976 6.2%
足羽川 30,556 30,131 29,831 30,159 30,211 30,182 30,134 -1.4%
天王川 7,966 8,374 8,396 8,401 8,499 8,491 8,489 6.6%
流域合計 215,876 216,348 217,030 214,889 217,789 217,716 216,676 0.4%
福井県 310,889 315,534 313,154 311,719 315,079 314,774 313,545 0.9%

図1.3.10 流域別森林面積の推移


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