九頭竜川流域誌


5. 水にまつわるしきたり

(1) 一升水と入家式
 越前には、嫁が婚家に入るに先だって、入り口の所で一升マスの中の茶碗をとって、その中の水を飲む習慣がある。これは、一升は一生に通じるので、一生の間、その婚家の水を飲ましてもらうという意味を含んでいる。水は、ほとんどが婚家の井戸水あるいはカワト(川戸)から汲んできたものである。所によっては氏神社殿の石を一つ入れたり、カワトの小石を三つ入れたり、木炭の小片を入れる所など様々であるが、「石のようにカタく(健康で)、一生この水を飲み、炭になるまでお世話になります。」ということのようである。また、嫁に墨を塗るところもあり「一生住み着く」に通じるようである。この一升水に用いた容器(茶碗・杯など)は、新婦が直接あるいは仲人・介添えの人が玄関の土間に落として割るしきたりとなっている。これは、割れぬと縁がないとか、二度と繰り返さない呪法であるとも言われている。
 最近は、ホテルなどで結婚式を行うようになったため、挙式前後に仲人が新婦を連れて婚家の仏壇参りをするときに、一升水を飲ませるようになってきているようである。
嫁ぎ先の玄関で一升水を飲む花嫁 図1.5.5 一升水の風習のある地域分布(※福井県史「資料編15民族」
嫁ぎ先の玄関で一升水を飲む花嫁


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