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玉江漕ぐもかり舟のさしはへて | 波間もあらは よらんとそ思ふ |
拾遺集・恋一 | 読人不知 |
夏かりの玉江の芦をふみしだき | むれいる田鶴のたつそらぞらき |
後拾遺集 |
夏かりの | 芦のかりねも | あわれなり | 玉江の月の | あけかたの空 |
古今集・夏 | 藤原俊成 |
なつかりの玉江の芦の短夜に | 見る空もなき月の影かな |
忠房親王 |
月見せよ | 玉江の芦を | 刈らさぬさき |
芭蕉 | (※福井市史 p.153) |
(2) | 朝六ツ橋 |
松尾芭蕉の「奥の細道」に、「あさむつの橋をわたりて、玉江の橋は穂に出でにけり」とある。このあさむつ橋には、新田義貞の妻である匂当内侍に関する悲恋物語がある。それは、義貞が越前平定も間近と思い近江国で待っていた匂当内侍に、越前に来るよう知らせたが、灯明寺の戦いで戦死してしまった。戦死を知らずに越前に向かった匂当内侍は、国府に引き上げる義貞の弟である脇屋義助と麻生津橋で出会い、夫の戦死を聞いて悲嘆にくれ気絶してしまった。みんなで介抱した結果、朝の六ツ時に気がついたので、その橋に朝六ツという名前がつけられた。 朝六ツ橋は、北陸道を往還する人たちに親しまれ、多くの歌が詠まれている。 |
ことつてん | ひとの心もあやうきに | ふみたにもみぬ | あさむつの橋 |
前中納言定家 |
浅水のあかむくことはよもあらじ | その如月の望月のころ |
西行 |
朝六ツの橋は忍びて渡れども | とどろとどろと鳴くぞ侘しき |
宗祗法師 |
たそがれに寝覚めてきけば朝六ツの | 黒戸の橋のふみとどろかす |
帰雁記 | 読み人知らず |
あさむつや | 月見の旅の | 明けばなれ |
芭蕉 |