九頭竜川流域誌


8.4 川と歌

(1) 部子川
 池田町の北部を流れる部子川は、三里ばかりの川であるが、滝あり、淵あり、そして甌穴をもつなど、変化に富んだ河川である。また、西青村や支流の篭掛川の上流蒲沢村付近には、「金山流し跡」があったとされている。
 この部子川の支流の尾暖川は、小さな滝の多い河川であるが、万葉集巻ノ八に次のような歌がある。

 いわそそぐ 垂見の上の さわらび(早蕨)の 萌えいずる春に なりにけるかも


 ここで「垂見」は「暖」とかけて滝の意をあらわす。滝のことを「タル」と呼んでいた。
(2) 真名川
 真名川は、大野の中央を流れるから「真中川」とも呼ばれ、「越前国名蹟考」には「真那川」とも書かれている。
 「深山木」という本には、真名川が暴れ川であり、堀兼堤を築いたとも記されている。「まな川は もとのながれ とき川なるに 山のまをながれて 佐開の南にて いとど勢あらく 行くべき川をばゆかずして 上・下の里ともみなおしながしっぺし されば いと高き堤を長くきづきて これをとどむるを ほりかねの堤とはいへり」そして、次のような歌が載せられている。

川風の寒くし吹けばほりかねの 堤のかげに鴨ぞなくなる


参考資料
福井県史
関係市町村史
関係市町村民話・伝説関係図書
越前若狭の伝説 昭和45年2月 編者:杉原丈夫 発行:松見文庫
日本の民話12 昭和56年1月 加賀・能登・若狭・越前編 編者:杉原丈夫他
河川のルーツ 昭和57年7月 著者:上杉喜寿
角川日本地名大辞典 18 福井県 平成元年12月 角川書店
福井県の地名−日本歴史地名大系18− 1981年9月 平凡社
祭礼行事・福井県(平成7年1月) おうふう
北陸の河川 1996年3月 北陸電力梶A地域総合研究所
北陸の水 1995年2月 北陸電力梶A地域総合研究所
新訂越前国名蹟考 昭和55年10月 編者:杉原丈夫 発行:松見文庫
ふくいの祭り−野の花文庫1− 昭和63年1月 著者:杉原丈夫
発行:(財)福井県文化振興事業団
石をめぐる歴史と文化−笏谷石とその周辺− 1989年 福井県立博物館
笏谷石文化 1988年11月 編著:福井の文化財を考える会
笏谷石造をたずねて 1993年8月 著者:大久保まさ子 発行:若草書房
福井県立博物館の特別展 第11回 石をめぐる歴史と文化−笏谷石とその周辺−
第13回 文明開化の光と影−福井県/その誕生期−
第14回 川の生活誌−そのめぐみと恐れ−
川の碑 平成9年3月 編集:川の碑編集委員会 発行:山海堂


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