九頭竜川流域誌


1. 洪水の特徴

 九頭竜川流域は、九頭竜川本川を主流にして日野川、足羽川、真名川の3大支川を合わせて、ほぼ南北方向に広く分布する多くの支川によって扇形の流域を形成している。流域を取り囲むように河口部の北西部を除いて東方から南方にかけて赤兎山、二ノ峰、銚子ヶ峰、毘沙門岳、屏風山、冠山など標高1,300mから2,000mの水源となる山地が連なっている。このような流域地形であることと日本海型気候区に属しているため、流域の気候は複雑で変化に富み、1〜2月にかけての降雪、6〜7月の梅雨および8月から秋季にかけて来襲する台風による降雨などにより、年間降水量も全国平均と比べて多く、九頭竜川本川上流部で3,000mm以上、日野川、足羽川上流部で2,600〜2,800mmとなっている。これら降雨、降雪によってもたらされる九頭竜川の出水は、2〜4月の融雪、6〜7月の梅雨、8月〜10月の台風がもたらす豪雨が起因して発生する。
 流域に大きな被害をもたらす出水は、殆どが梅雨末期の豪雨によるものと、台風にともなう豪雨によるものである。特に前線をともなう台風の場合は、大出水となり大被害をもたらすことが多い。
 また、出水時には、九頭竜川本川流域や真名川流域、足羽川流域、日野川流域の地形および降雨が異なるため、それぞれの流出形態に相違がみられ、九頭竜川中角地点と日野川深谷地点のピーク流量発生時刻に相違がある。
 明治時代の改修が完成するまでは、霞堤が主体の不連続堤であったため、洪水になれば堤防の無い箇所から堤内地へ浸水して、低地一帯を泥海化し、規模によっては家屋にも被害を及ぼすことがしばしばみられた。
 その後昭和30年代までは、破堤氾濫による洪水被害がしばしば発生していた。
  一方、山地部においては、急峻な地形、脆弱な地質であるため豪雨ともなれば、しばしば土砂災害が発生し森林地の崩壊、田畑や家屋の埋没や流失などの大被害が生じている。
 近年は、堤防や河道整備、ダム建設、砂防事業の進展などによって、中小洪水による治水安全度が向上してきているものの、平成10年(1998)7月出水による浅水川の越水被害に見られるように、中小河川の氾濫や支川の内水被害などが依然として生じている。


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