九頭竜川水系工事実施基本計画は、昭和43年(1968)6月に施行されたが、その後、昭和47(1972)年9月の台風20号および昭和50年(1975)8月の台風6号による出水が生じた。その出水は、特に、支川足羽川において現行計画規模を相ついで上回るものとなった。現計画の中角地点での治水安全度である超過確率1/80年は、その後の水文資料を加え評価すると、ほぼ超過確率1/50年程度と推定された。さらに、近年の流域開発により人口60万人、流域内資産1兆円などを合わせて考慮し、治水安全度の大幅な向上を図る必要が生じた。また、都市用水の需要の急激な伸びや、水質汚濁などの問題も生じつつある状況となってきていた。 そこで、氾濫区域内の人口、資産など関連地域の社会経済情勢の発展に即応するよう近畿圏整備計画などの諸計画を考慮して、洪水の計画規模を基準地点中角で従来の超過確率1/80年を1/150年に向上させるとともに、流域内の各流域における水需要の確保のため、上流の多目的ダム群により水資源の合理的な利用の促進を配慮した工事実施基本計画の改定を行った。 改定にあたっては、水系一貫とした基本高水流量および計画高水流量の再検討を行った。そして、基準地点中角における治水安全度を超過確率1/150年(計画降雨を2日連続雨量414.0mm)として、基本高水流量を8,600m3/s、上流のダム群などによって3,100m3/sを調節して河道への配分流量を5,500m3/sとする九頭竜川水系工事実施基本計画を策定した。この計画は、昭和49年(1974)より作業にとりかかり、昭和54年(1979)3月の河川審議会の審議を経て、同4月に施行された。 計画高水流量は、上述のとおり中角地点において5,500m3/sとし、日野川の流入量を合わせて布施田地点においては9,200m3/sとした。日野川については、三尾野地点において3,300m3/sとし、足羽川の流入量を合わせ、深谷地点において4,800m3/sとした。 堤防高は、九頭竜川については1.5mの余裕高を、支川日野川については1.2mの余裕高をそれぞれ計画高水位に加えたものとした。 九頭竜川本川では、既設の笹生川ダム、九頭竜ダム、工事中の真名川ダムおよびその他のダム群の建設により九頭竜川の洪水を調節するとともに発電、各種用水の補給を行うものとした。 河道については、堤防の新築、拡築および掘削を行い河積を増大し、水衝部などに護岸などを施工して洪水の安全な流下を図った。支川については、築堤、水衝部などに護岸などの施工を実施している。また、内水被害の著しい地域については、排水機場および樋門建設などによる内水対策を進めている。 日野川は、堤防の新築、拡築および掘削を行い、河積を増大し、水衝部などに護岸などを施工して、洪水の安全な流下を図つた。特に、下流部では安竹・三郎丸・大安寺・深谷・下市地区で五大引堤を実施している。 江端川、狐川などの沿川の低地地域については、内水対策を実施することとし、排水機場および樋門等の建設を行った。 足羽川は、上流部に多目的ダムを建設して下流の洪水の軽減を図るとともに、堤防の新築、拡築および掘削を行い河積を増大し、水衝部などに護岸などを施工して、洪水の安全な流下を図ることとした。 荒川などの沿川の低地地域については、内水対策を実施することとした。 九頭竜川の直轄管理区間は、昭和46年(1971)3月20日では29.6kmであったが、平成元年(1989)5月29日に1.6km延長され、現在の31.2kmとなった。 |
表2.3.7 九頭竜川直轄管理区間 | |||||||||||
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なお、真名川ダムは昭和54年(1979年)3月に完成した。 ダム管理区間は、表2.3.8のとおりである。 |
表2.3.8 ダム区間の直轄管理区域 | ||||||||||||||||||||||
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