九頭竜川流域誌


2.2 事業計画と工事内容

  「九頭竜川総合開発計画」の中核は、治山・治水、発電、農業水利の開発などの多目的ダム建設を基本とする真名川総合開発事業である。この事業は、福井県としては大事業であり、特別の技術と経験を必要とすることから、実施計画の樹立および設計などを建設省建設技術研究所(現土木研究所)に委託するとともに、地質調査については東京大学広田博士に委嘱し、ダムサイトの試錐、試掘、骨材採取などについての技術協力を得て進められた。
 昭和28年度には新規事業として認められ、同年5月に真名川開発建設事務所を新たに開設して、同事務所において工事全体計画書の再検討に入り、翌29年(1954)10月に改めて全体計画の認可申請を行った。
  この事業計画は、真名川上流に笹生川ダム(基盤岩盤上76m、総貯水容量58,806千m3、重力式ダム)および雲川ダム(基盤岩盤上39m、総貯水容量1,490千m3、アーチ式ダム)の建設を前提として、次の治水、灌漑、発電の各事業を行うものであった。

(a) 治水事業については、雲川ダムが砂防ダムの役目を果たし、下流部の被害の防止に寄与するとともに、笹生川ダムでは330m3/secの洪水調節を行い、下流の水害および治水工事の軽減を図る。
(b) 真名川沿岸地区2,047町歩(2,030ha)に対し渇水期に用水補給を行い、また九頭竜川下流沿岸地区の湿田1万542町歩(10,455ha)の乾田化事業に伴う灌漑用水の不足を補うために、最大17m3/s、総補給量33,000千m3の放流を行う。
(c) 両ダムをサイフォン式の約5kmのトンネルで結び、これを導水路として県営中島発電所で最大18,000kwの発電を行うとともに、発電に利用した水を下流に放流することで、下流の五条方(北陸電力梶j、市荒川(関西電力梶jの両発電所の出力補給を行う。
  工事は、水没地住民がなく比較的補償問題の軽微な雲川ダムから始まり、昭和29年(1954)7月に本工事に着手して、昭和31年(1956)12月にダム湛水を開始した。
  笹生川ダムは、昭和28年(1953)度に事業着手し、昭和30年(1955)4月に仮排水路隧道工事に着工して本格的な工事に入り、32年(1957)7月に湛水を開始した。県営中島発電所は、昭和32年(1957)2月に完成し、北陸電力鰍ノ対して営業送電を開始した。そして、11月15日に5ヵ年にわたる大事業を締めくくる竣工式が挙行された。工事期間中賑わった西谷村はもとの静かな村となり、最前線基地として大きな役割を果たしてきた真名川開発建設事務所も、昭和32年度末をもってその使命を終えた。


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