九頭竜川流域誌


4.2 荒川

(1) 流域の概要
  荒川流域は福井市東部に位置し、福井市街地の一部と松岡町南部の山地によって構成される。流域形状は貝殻状であり、南および西側には足羽川右岸堤防、北側には九頭竜川鳴鹿大堰左岸で取水し導水している芝原用水および九頭竜川左岸堤防、東側は松岡町である。流域面積は39.84km2で、そのうち約65%が福井市に属している。
  流域の約65%を占めている下流部の市街地および中流部は、土地が低く、豪雨時などに内水被害を受けやすい地域となっている。
  荒川は、松岡町と永平寺町の境をなす吉野岳(標高547m)に源を発し、吉野の谷間を北流して、福井市と松岡町の境で西流に転じ、原目あたりで西南に向き、大きく蛇行しながら印田町で西流し、城東から勝見に向かい足羽川に合流する。
(2) 治水計画の概要
 
図4.1.7荒川流域図
荒川下流約4.0km区間は、昭和34年(1959)8月の台風7号による出水を契機として、昭和35年度より中小河川改修事業に着手し、昭和56年度までに御鷹橋までの河道改修および支川古川の河道改修はほぼ完了している。その後、昭和56年(1981)7月の豪雨によって浸水被害が生じ、市街地流域の治水安全度の向上を目的とした中小河川改修事業の第1回変更を行い、下流端のポンプ排水能力を約42m3/sに増強を図った。
  しかし、荒川流域では福井市街地の拡大に伴って開発が進展し、中流域で宅地開発が進んでいる。一方、現況疎通能力は御鷹橋より下流で約100m3/s、上流部で30〜50m3/sと少ない状況である。そこで、荒川では治水安全度を超過確率1/50年とし、遊水地および放水路を組み込んだ改修計画を策定し、足羽川合流点から吉野堺までの10.6km区間の改修を進めることとなった。
図4.1.8荒川計画高水流量配分図
(3) 事業の効果
  荒川は、上述のとおり福井市街地および新興住宅地を貫流しているため、事業の実施によって約581haの区域内の家屋約12,000戸、約1,200haの田畑が氾濫による被害から守られるなど、極めて大きな事業効果が期待できる。
(4) 改修工事の概要
  福井県による中小河川改修が本格的に開始したのは、昭和21年度から着工した清滝川、河和田川である。荒川は、翌22年度に災害復旧と合わせて改良工事に着手し、7.4kmを改修して昭和25年度に完成した。
  昭和22年(1947)から昭和25年(1950)に実施した荒川改修工事は、上北野、東今泉地区において蛇行していた河道のショーカットを含む工事であった。この工事によって上流部の湛水被害がある程度軽減したものの、河道での遊水効果が減少したことによって下流部への負担が増加する結果となった。その後、昭和28年9月の台風13号によって荒川が破堤氾濫し、浸水家屋が4,600余戸にも及んだ。そこで、足羽川改修工事の一環として、昭和30年度に足羽川合流点に位置する水門を改築し、流下能力の拡大を図った。
 しかし、昭和34年(1959)にも台風7号および台風15号がもたらした洪水によって、再び下流地区において氾濫し、5,000戸を越える家屋が浸水する被害が生じた。
  そこで、昭和35年度から第二期改修工事に着手し、上流部からの雨水が下流部において氾濫しないように堤防嵩上げと併せて、足羽川合流点に排水機場を新設した。すなわち、昭和30年度に改築した荒川水門を閉鎖したときには、ポンプによって強制排水するように、昭和39年度に8.34m3/sのポンプ3基を設置した。その後、昭和50年度に1基増設を実施している。その結果、足羽川の増水時には荒川水門を閉鎖して、内水排除ポンプを稼働することによって被害を軽減することができた。
  しかし、荒川流域では市街地の拡大によって水田の宅地化が進み、自然の遊水地が減少したため流出量が増大するなど、流出形態に大きな変化が生じたことから、昭和56年度より計画規模を降雨確率1/50年として、河道改修および排水ポンプの増設と併せて、水門の改築工事に着手することとなった。
  そして、昭和56年度〜59年度には、河道を上流側に付け替え、下流端に水門を設置する工事を実施した。この水門工事は、昭和59年(1984)に完成した。さらに、昭和60年度には第一排水機場建設に着手し、平成元年(1989)度に8.34m3/sの排水機を1基設置し、翌2年度に排水機場が完成した。同時に遊水池計画を地元に公表し、平成8年(1996)度には用地買収をほぼ完了した。また、御鷹橋付近までの河道の一次改修を完了した。

図4.1.9 荒川の流路の比較(明治時代と現代)
荒川の最下流部(上流を望む) 荒川ポンプ場と水門(荒川側より望む)
荒川の最下流部(上流を望む) 荒川ポンプ場と水門(荒川側より望む)


九頭竜川流域誌メニューへ
第1章メニューへ
戻る次へ
TOPに戻る

Copyright (c) 国土交通省近畿地方整備局 福井工事事務所 2001 All Rights Reserved.