九頭竜川流域誌


4.6 江端川

(1) 流域の概要
  江端川流域は福井市南部に位置し、日野川・足羽川・浅水川に囲まれた面積46.4km2の流域である。そのうち、約70%が低平地であり水田を主とした農地である。
  江端川は、その源を広野山(標高318.9m)に発し、圃場幹線排水路を集めながら北西または北流し、旧国道8号に交差する付近より約500m下流で朝六川を合流し、新下江守町付近で日野川に注ぐ、流路延長約10kmの一級河川である。川幅は、日野川合流点から朝六川合流点付近までは約40m、これより上流では約20mである。
図4.1.15 江端川流域図
(2) 治水計画の概要
  江端川は、大正時代に実施された九頭竜川第二期改修工事による浅水川の付替によって、朝六川を合わせた現在の流域となった。このときの治水工事によって、治水安全度が大幅に向上し、朝六川との合流点付近の氾濫原であった地域が開発されて市街地へと変貌していった。
 近年は、主要道路の整備が進み、市街地の拡大によって流域の都市化が顕著となってきている。一方、江端川は市街地での疎通能力が約90m3/s、中流部の田園地帯で15〜80m3/sと少なく、河床勾配も市街地部で約1/1,500と緩く、集中豪雨などによって浸水被害が発生している。そこで、福井市南部の市街地拡大に伴う流出増を考慮し、主要交通網の洪水からの防御などを考慮して、超過確率1/80年で改修計画を立て、日野川合流点より上流5,709mの改修を進めることとなった。
江端川排水機場 花堂付近の江端川(江端大橋より下流を望む)
花堂付近の江端川(江端大橋より下流を望む)
(3) 事業の効果
  江端川は、治水安全度を超過確率1/80年として事業を実施することによって、約300haの区域内の家屋386戸、約250haの田畑が氾濫による被害から守られるなど、大きな事業効果が期待できる。
(4) 改修工事の概要
 1) 昔の江端川
 九頭竜川改修第二期工事による浅水川ショートカット工事が完了するまでは、今立郡旧味真野村(現武生市)文室に源を発する浅水川が旧六条村大島(現福井市)で江端川に合流し、旧社村南江守(現福井市)において日野川に合流していた。したがって、今立地区の排水と足羽平野の排水を江端川は受け持っていた。また、その河状は蛇行が激しいうえに川幅が狭く、河床勾配が緩いため滞留して流れが遅く、毎年雨期ともなれば河川周辺の水田は湖と化すなどして、沿川地域一帯が水害に悩まされていた。
 洪水のときには、日野川の水位が上昇して江端川へ逆流してくるため、特に旧六条村や社村はしばしば湖上に浮かぶ島のようになり、家屋は浸水し交通は途絶え、地区の孤立状態が数日にも及ぶこともあった。このようなときに、避難や救援物資の運搬に使用する小舟を常備する家が地区毎に何軒か見られた。
 浅水川流域を含む江端川流域の耕地は、大半が湿田化していた。そのような地域は、洪水ともなれば農作物被害が甚大であり、毎年起きる水害に永年悩まされてきた。
 2) 江端川改修と内水排除事業
 江端川改修および内水排除事業は、古くから行われていた。その初めは、九頭竜川直轄改修(九頭竜川第二期改修工事)によって大正10年(1921)7月に日野川合流点に完成した高さ4.1m、幅3mを有する2連の観音扉式逆流防止門扉の付いた樋門築造である。その後、昭和年代に入って、江端川第二排水機場(総排水量22.2m3/s;排水量5.55m3/sのポンプ4基)、江端川第一排水機場(総排水量14.8m3/s;排水量7.4m3/sのポンプ2基)が設置され、総ポンプ容量37m3/sを有するに至った。
  昭和48年(1973)度からは局部改良工事によって改良を進め、支川の朝六川についても小規模河川改修事業による改修に着手した。
 その後、福井市街地中心部の近郊に位置する当流域の中・下流部は、水田などの宅地化に伴って保水能力が減退し、治水安全度が低下したことから、昭和52年(1977)度より中小河川改修に着手した。
 さらに昭和61年(1986)度には、江端第一排水機に排水量7.4m3/sポンプ1基が増設され、総ポンプ排水量が44.4m3/sとなった。しかし、江端川第二排水機場は設置年度も古く、老朽化による能力低下が著しく、洪水時には内水による被害がしばしば発生し、内水処理事業の推進が急務となった。このことから、江端川第二排水機場の改築に昭和63年(1988)度より着手し、福井県が排水機場(総排水量22.2m3/s;排水量7.4m3/sポンプ3基)、建設省が排水樋門を建設することとなり、平成3年(1991)度に完成した。

江端川排水機場より上流を望む 江端川排水機場と水門(日野川合流点方向を望む)
江端川排水機場より上流を望む 江端川排水機場と水門(日野川合流点方向を望む)


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