2.2 九頭竜川鳴鹿大堰

(1) 概要
 鳴鹿堰堤は、九頭竜川扇状地の扇頭部に位置し、灌漑用水として最大46.605m3/s(左岸35.260m3/s、右岸11.345m3/s)を取水し、福井平野の1市7町にまたがる農地約10,400haを潤すとともに、福井市水道用水として0.996m3/s(最大)を左岸から合口取水をしている。
 鳴鹿堰堤は、昭和21年(1946)に発足した「国営農業水利事業」により、翌22年「国営九頭竜川農業水利事業」として採択され、可動堰5門を備えた堤長273mの堰堤と左右岸の幹線水路を昭和29年(1954)に完成した。さらに昭和39年(1964)から「国営第2九頭竜川地区農業水利事業」として、固定堰の可動化、流出土砂対策等を実施し、昭和41年(1966)に完了した。昭和55年(1980)には、「県営農業用水合理化事業芝原用水地区」で生み出された用水を福井市上水道用水として利用することになり、共同施設として現在に至ってきた。
 しかし、この鳴鹿堰堤は、建設後45年を経過し老朽化が著しいこと、治水計画上の支障となっていることなどから、次の5つを目的に改築されることとなった。
(a) 洪水防御
(b) 既存用水の安定した取水の確保
(c) 堰下流の河川流量の確保
(d) 水道用水の確保
(e) 河川環境の向上

図4.3.2 鳴鹿大堰位置図
図4.3.2 鳴鹿大堰位置図

(2) 目的
 1) 洪水防御
  鳴鹿堰堤は、敷高が九頭竜川改修計画の計画河床高よりも約2.3〜3.3m高く、また、堰柱の間隔が狭く、現河川管理施設等構造令に適合していない。さらに堰上流区間では、土砂が堆積するとともに、河道が極端な狭窄区間になっており、洪水の流下に重大な支障となっている。
 このため、新たに可動堰を改築するとともに、河道の掘削および拡幅を行い、計画高水流量5,500m3/sを安全に流下させるようにする。

図4.3.3 図4.3.2 鳴鹿堰堤横断図 図4.3.4 九頭竜川鳴鹿大堰横断図
図4.3.3 鳴鹿堰堤横断図 図4.3.4 九頭竜川鳴鹿大堰横断図

 2) 既存用水の安定した取水の確保
 鳴鹿堰堤からは、灌漑用水として最大46.605m3/sを取水し、右岸および左岸の幹線水路を通じて福井平野の農耕地を潤している。また、福井市水道用水は、市全体の40%にあたる最大0.996m3/sの取水を左岸より行っている。
 これら、既存用水を安定して取水できるようにする。

図4.3.5 鳴鹿大堰の給水区域

 3) 堰下流の河川流量の確保
  現在の鳴鹿堰堤では、堰より下流に渇水時においても最低4.0m3/sの水量を流しているが、堰の貯水容量を利用して0.1m3/sを増量し、最低4.1m3/sの水量を流すこととする。これにより、河川環境および河川に生息する生物の環境を向上させる。
 4) 水道用水の確保
  鳴鹿堰堤上流の大野市では、水道用水の水源を地下水に依存してきたが、近年、涵養量の減少に加え、利用量の増加により、地下水位が低下し、毎年自家用井戸の取水障害が発生している。また今後さらに、社会経済の発展や生活様式の変化に伴い、水需要の増加が見込まれる。したがって、大野市の水需要の増加に対処するものとして、新たに0.1m3/sの水道用水を開発する。なお、大野市は、大堰より上流に位置するため、笹生川ダムを水源とする福井市の水道用水と振り替える計画である。

新聞報道 本願清水 お清水
  本願清水         お清水   
地下水の低下に伴い湧水量が激減した状況(大野市)

 5) 河川環境の向上
 堰下流への流量増加による河川環境の向上のほか、堰堤周辺における生物環境の改善を図るため、堰の左右岸それぞれに、さまざまな魚種が利用できるよう、階段式、人工河川式魚道および呼び水水路を設置することにより、遊泳魚はもちろんのこと底生魚の遡上・降下の向上を図る。

鳴鹿堰堤の魚道 鳴鹿大堰階段魚道 鳴鹿大堰人口河川式魚道
鳴鹿堰堤の魚道 鳴鹿大堰階段式魚道 鳴鹿大堰人工河川式魚道

 以上これらの課題や改善を解決するため、多目的ダム事業として、平成元年(1989)に実施計画調査に入り、平成4年(1992)に本格的な工事に着手した。事業全体の完成は平成15年(2003)度の予定であるが、暫定取水として平成11年(1999)3月18日から運用を開始している。

(3) 貯水池の諸元
集水面積 1,181.8km2 図4.3.6 貯水池容量配分図
湛水面積 0.25km2
湛水延長 1.74km
総貯水容量 667,000m3
有効貯水容量 132,000m3
常時満水位 T.P.+34.95m
最低水位 T.P.+34.30m

完成した九頭竜川鳴鹿大堰
完成した九頭竜川鳴鹿大堰
九頭竜川鳴鹿大堰(下流から望む)
九頭竜川鳴鹿大堰(下流から望む)


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