九頭竜川流域誌


1. 河川環境

 世界の四大文明が大河の辺で栄えたように、産業や日常生活に欠かせない豊かで清らかな水を有する河川沿いには、集落が発達し都市へと発展していった。人々は、古今の歴史を通じて、自らの生活圏の拡大と充実、そして生産活動の展開のために、河川と上手くつき合い、治水・利水のための整備に努力を払ってきた。
  人々や集落、さらには共同体として、河川と長い年月向き合ってきた結果、地域性を生みだし、独自の風土や文化を育ててきた。
  人々の力と河川自身が有する自然の営力が織りなすものが、河川環境として位置づけられる。すなわち、人工の力と自然の営力のバランスの上に立って、河川環境が存在しているものであり、河川流域の土地利用や生産活動が変われば、河川環境も自ずと変化していく。人々の河川への働きかけは、時代の移り変わりと社会の価値観などを反映して、変遷を遂げてきた。
 農耕を中心とする社会では、河川に対する人々の関わりは、おおむね自然順応型であった。河川の形態や地形・地質の様子といった河川をとりまく自然的性質が社会の形成に深い関わりを持ち、河川の持ち味が永く維持され、「ふるさとの川」という心像風景も心の中の奥深いところで育まれてきた。
  工業が発達してくると経済中心的な社会となり、大量生産体制を維持するために、自然への働きかけが頻繁に、そして広範囲にわたり、自然改造が進められた。それは、災害を軽減し、物資の豊かな社会および生活を築くためのものであり、それを実現する手段として治水と利水の機能整備が急ピッチで進められた。

図5.3.1河川環境機能の構成

 そのような結果、河川が本来有していた多様な環境を損なうようになってきた。反面では、物資的豊かさの中で精神的豊かさを求める気運が高まり、一時疎遠になっていた河川に目が向けられるようになり、河川環境が重視されるようになってきた。
  そうした時代の要請などによって、河川が有する治水・利水機能とあわせて環境機能にも重視し、調和のとれた河川を創造して次世代へ引き継ぐために、さまざな河川環境整備事業が進められるようになった。なお、平成9年(1997)6月に河川法が改定され、河川環境の整備と保全が追加された。これについては、第6編第2章に詳述する。


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