九頭竜川流域誌


3. ふるさとの川整備事業

 福井県では、足羽川と一乗谷川が「ふるさとの川整備事業」に指定されている。ここでは、昭和63年度より河川改修とあわせて実施している「一乗谷川ふるさとの川整備事業」について紹介する。一乗谷川は、一乗谷の里を水害から守るとともに、中世朝倉遺跡の歴史的景観と調和した河川整備を行っている。
  河川改修は、足羽川合流点から上城戸橋までの2.3kmの区間で、「ホタルが乱舞する川」と「歴史を語る川」とをテーマに、生態系および歴史景観に配慮し、法面を緩傾斜としたり、瀬や淵を設けるなど単調な流れとならないようにするとともに、ホタルを代表とした生物の生息環境の保全と水辺に親しむことができる空間の創出に努めた。

(1) ホタルの里づくり
  河川改修では、ホタルをはじめとしてイワナやアユの生息できるよう、自然の生態系を重視した整備を行うことで、”ふるさとの川”を実現する。 
・低水路
 ホタルの生息に適した流速(30cm/s)を確保できるよう、低水路の緩勾配化と巨石を投入して流れが蛇行して、流速が緩くなるように配慮する。
・護岸
 河床や河岸に巨石を配置し、魚類のすみか、休息の場となる瀬と淵を創出する。河岸部は野面積としてホタルの幼虫が入りやすいようにし、緩勾配の野草法面を確保する。さらに、藻類が付着しやすい木材、石材を可能な限り使用する。
・植栽
 ホタルの好むヨモギ、セリ、カンスゲ、ヤナギなどを主として植える。
整備された一乗川
整備された一乗川

(2) 歴史を語る川
  一乗谷川は、国の特別史跡である一乗谷朝倉遺跡内を貫流している。平成7年(1995)には中世の城下町の一部が復原され、朝倉氏5代100年余の時代にタイムスリップすることができる。
  河川改修にあたっては、遺跡に調和するよう法面を緩くして往古を偲べる水辺の創出および、植栽や橋なども景観との調和を考慮して整備を進めることとしている。そして、地域住民と遺跡来訪者のコミュニケーション空間として、さらには地域住民が誇れ、来訪者にとっても“ふるさとの川”となるような川づくりを進める。


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