東はりまを、ひたすら南へ下る加古の流れ。
その歴史のはじまりは、天から落ちたしずくを集め、はりまの野を奔放に走りゆくひとすじの水の道でありました。
人は水辺にあゆみより、いのちをうるおし、こころを満たし、前に進むちからの糧を得てきました。

しかし川は、時に暴れ狂って人を押し返し、拒み、奪い続けてもきました。
人はそれでも立ち上がり、ふたたび耕し、築き、屈することなく前へ前へと向かってきたのです。
人と川との歴史とは、まったくそのくりかえしでした。
加古川の流域にはいまもなお、そんな歴史をかいま見せる場所がいくつも残っています。
なかにはとうに忘れ去られ、姿かたちすらないものもありますが、たいせつに守られてきたものもまだ数多く残っています。それらをできるだけたくさんすくい上げ、この地を愛する人々に伝えていけたら、というのが、この本のねがいです。

このため平成9年度には東播磨流域文化協議会内において「加古川“川と水辺の名所”づくり検討委員会」を発足し、これら歴史の遺物を丁寧に吟味しました。また平成10年度にはさらにそれを「同・推進委員会」と組織しなおし、具体的な編集を進めてきました。
ご紹介にあたっては多くの文献を参考にさせていただきましたが、伝聞のみによるものもあるため、じゅうぶんご説明できなかった部分を心残りに思います。しかしこれで完成というのではなく、皆様からの新たな情報を織り込みつつ、さらに充実し成長していけたらと考えています。

この本は、まさに最初の一歩。願わくは、いまをいきるわたしたち、そして後からやってくる次の世代の人々に、さまざまな形で役立てる道しるべでありますように。また、川と人との関係が、いつまでもゆたかなままで守り継がれていきますように。

最後になりましたが、この本の制作に当たりまして、関係自治体をはじめ、地域の皆様からおしみないご協力をいただきましたこと、心よりお礼申し上げます。

平成11年3月

監修
東播磨流域文化協議会 加古川“川と水辺の名所”づくり委員会
企画・制作
建設省近畿地方建設局 姫路河川国道事務所
協力
兵庫県東播磨県民局
編集
財団法人 河川情報センター

  • ここで紹介している新百景の情報は平成11年3月時点のものです。
  • 「加古川水の新百景」の冊子の販売・配布はしておりません。