漆塗りはこの様に多くの工程を経ることにより、柔らかくて温かみがあり、吸い込まれるような光沢が得られ、年月を経るほどその深みが増していくなど、自然の材料の良さが存分に発揮されています。
京都迎賓館では、床框・欄間・障子などにこの漆塗りが使用される予定で、長い歴史に培われてきた漆塗りの技術が随所に生かされます。
話は変わりますが、漆といえば好みにかなりうるさい素材であり、漆器作りの道具も偽物を許さない本物志向であるといえます。その一例を紹介しますと、
・海辺に住む女性の髪の毛で作った刷毛
真っ直ぐで、海水により適度に油が抜けた海辺に住む女性の髪の毛は漆を良く吸収し、むらなく塗ることができる。
・ 木の船で住み着いたネズミの脇毛で作った細筆
この筆を使うとどんなに細い線でも引ける。
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- 天然鯛の奥歯
漆器に乗せた細部の金粉を施すために使う。天然物が良い。
- 水牛の角で作ったパレット
漆を乗せるパレットに用いると、筆を傷めることが無いという優れもの。
- 鶴の羽の軸で作った棒
節上げ(漆器に付いた埃を取る作業)を行うため、鶴の羽軸部分(羽毛でない)を使用する。
しかし、最近では自然の材料が少なくなってきており、特に国産物は殆どなくて輸入に頼っているそうです。 |