京都迎賓館情報


第九号シンボル コミュニケーションレター(タイトル)
第9号 平成14年9月

わたしたちはこんな迎賓館を創ります。
室内完成予想パース
室内完成予想模型(南側より望む)

より良いものを創ります。

 これまで、木工・左官・建具・庭園等の伝統的技能を活用する工事について、材料調達・製作工程を検討してまいりました。
 その結果、和風迎賓館施設に多用される伝統的技能には綿密な手作業が多く、より良いものを創るため、更に1年程度の工期が必要なことから、完成時期が平成17年3月となる見込みとなりました。
 皆様には何かとご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
■工事工程表

レターの「ご返信」に「お返事」をさせていただきます。

■「完成したら見学したい」
 京都迎賓館(仮称)は、我が国の歴史・文化の象徴として国際的にも広く知られる「京都」の地に、外国からのお客様をもてなす国の迎賓施設として、京都の伝統的な技能を活用して建設されています。
 迎賓施設は、外国の元首クラスの国賓・公賓を迎える国の施設であり、利用されるお客様の安全の確保が最も大切な要件となります。危機管理の観点から色々と難しい点もありますが、周辺の皆様には、完成時に見学していただく機会が設けられるよう、検討されています。
■「地元のための有効活用を」
 京都迎賓館(仮称)の使用にあたっては、地方公共団体等が行なう国際交流事業をなど、関西圏の活性化・国際化につながるような活用方法も考えていくことになっています。
 このため、国賓・公賓などのもてなしに支障のない範囲で、京都府や京都市などの地元の自治体の利用・活用について、検討されています。


「萩まつり」
 梨木神社は京都を代表する萩の名所として知られており、毎年9月の第3日曜日に行われる「萩まつり」には、京阪神はもちろんのこと、関東・九州方面からも多くの参詣者が訪れます。  「萩まつり」は、昭和30年代初めから今日に至るまで毎年欠かさず行われています。宮司さんに伺ったところ、「萩まつり」では、静かにお茶を嗜んだり俳句大会等を通じて日本古来の文化芸能を楽しんでもらえれば幸いです、というお話をして頂きました。

※今年の萩まつりは、9月14日(土)〜16日(祝)に行われます



見守りながら工事を進めます(概要報告)

工事施工にあたり周辺環境への影響を軽減する工事対策を行うため、各項目について環境調査を行ないながら工事を進めてまいりました。現在(8月末)までの調査結果 では、工事着手前と比較して周辺環境の大きな変化は確認されていません。

[鳥 類]
表-1 京都御苑における鳥類調査結果

注:・ ルートセンサスによる調査結果
京都御苑では、留鳥や夏鳥だけとなる夏に種類が少なくなる傾向がありますが、今年も同様な傾向がみられています。

 京都御苑全域を定期的(月1回)に調査した結果、キジバト、セグロセキレイ、ヒヨドリ、シジュウカラ、メジロ、ムクドリなどの種を確認しています。
また、これらの種は、重機の稼働が多い時期(6月末)に実施した建設地周辺での調査(以下「6月末調査」と表現)においても確認しています。(表-1)


(アオバズク)
宗像神社では、今年も繁殖に成功し幼鳥が巣立っています。なお、建設地周辺においては、昨年と同様に繁殖ペアは確認されませんでした。

(オオタカ)
昨年と同様に京都御苑内での営巣は確認されませんでした。しかし、御苑内において食痕を確認しており、今年も採餌場として利用していることがわかっています。

[植 物]
建設地周辺において環境省や京都府のレッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)などに記載されている植物は、タシロラン以外には確認されていません。

(タシロラン)
京都御苑内において今年は約400本の発生を確認しており、昨年よりやや増加しています。

[騒 音]
建設地の敷地境界で常時観測による騒音の監視を行っていますが、騒音レベルは、特定建設作業に関する騒音の規制値を下回っています。
また、6月末調査の結果では、コンクリートポンプ車を防音シートで囲うなどの対策により、騒音レベルは、工事時間中にもかかわらず住居地域の環境基準値(55dB)と同程度またはそれ以下に抑えられました。(表-2)

[振 動]
建設地の敷地境界で常時観測による振動の監視を行っていますが、振動レベルは、特定建設作業に関する振動の規制値を下回っています。
また、6月末調査の結果では、工事時間中における振動レベルは十分に低い値でした。(表-2)

表-2 常時観測による建設地の敷地境界における騒音・振動の測定結果
表-2 常時観測による建設地の敷地境界における騒音・振動の測定結果
注:・ 騒音は“特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準”に基づく測定方法による測定値と規制値。
振動は“振動規制法施行規則”に基づく測定方法による測定値と規制値。
<30は、30未満を示す。
[大気質]
6月末調査における建設地周辺の二酸化窒素と粉じんの濃度は、工事開始前に実施した結果と同程度かそれ以下の状態でした。(表-3)

表-3 建設地周辺における大気質の調査結果

注:・ 測定結果は、建設地周辺の9地点における値。
二酸化窒素は、簡易測定による測定値
粉じんは、デジタル粉じん計による測定値
*1は、浮遊粒子状物質(粒径10ミクロン以下の粉じん)に対する環境基準値

[水 質]
建設地近傍に監視井戸を設置し常時観測を行っていますが、濁度、水素イオン濃度(pH)などの水質や水位に工事着手前との変化はみられませんでした。
また、大宮御所・梨木神社など建設地周辺の主な井戸水についても定期的に水質の調査を実施していますが、濁度は0.5度未満と、水道法による水質基準(2度以下)を下回っているほか、監視井戸同様に工事着手前との変化はみられませんでした。

[交通量]
今出川通における交通の状況は、工事用大型車両の通行後も大きな変化はみられませんでした。(表-4)

表-4 今出川通における交通状況の比較

注: 混雑度の解釈は以下の通り(「道路の交通容量」(社)日本道路協会)より)。
1.0未満: 昼夜12時間を通して、道路が混雑することなく、円滑に走行できる。渋滞やそれに伴う極端な遅れはほとんどない。
1.0〜1.25: 昼夜12時間のうち道路が混雑する可能性のある時間帯が1〜2時間(ピーク時)ある。何時間も混雑が連続するという可能性は非常に小さい。


[歩行者等動線]
工事着手前と比較した結果、歩行者等動線について大きな変化はみられませんでした。

伝統の技術を世界に発信します。

「聚楽壁」

 壁は、雨風を防ぐという屋根と同じ目的で、同じ材料を使って造られたのが原型と言われています。その後、いろいろな材料が使われましたが、江戸時代以降、より身近な材料である土を用いる「土壁」が主流になってきました。その「土壁」を雨風から護るため、表面に漆喰を塗る、下見板を張る、瓦をはめ込む等の技術が発達した結果、日本家屋に独特の風情をかもし出してきました。

 土壁の構造は、柱と柱の間の貫材や間渡材に小舞と呼ばれる竹を縄で編み込んで下地とし、その上に土を、粗塗り・中塗り・上塗りと塗り重ねて作られています。土壁の種類は、上塗り土により聚楽壁、錆壁、紅壁などに分類されますが、京都御所や大宮御所においても使用され、歴史的景観を形成している「聚楽壁」が良質な土壁の代名詞となり、砂壁状の仕上げを単に「聚楽」と呼ぶくらい広く使われてきました。

迎賓館に生きる伝統技術


稲藁を切り荒スサを作る


荒壁土練り返し作業
 「聚楽壁」とは、豊臣秀吉が建てた「聚楽第」付近(現在の京都市上京区)で産出した土が「聚楽土」と呼ばれ、その土を用いた趣のある壁のことをいいます。「聚楽壁」は、「土性周密にして火災に逢うといえども、火気を入れしめず」といわれるほど耐火性に優れ、年を経るに従い独特のわびさびの風合いをかもし出します。現在では市街化が進み「聚楽土」は入手困難な貴重品になっていますが、幸い、工事に先駆けて行われた埋蔵文化財調査において、京都迎賓館の建設地から良質の聚楽土が出ることが確認され、今回の工事で活用することになりました。

活用にあたり、左官工事の第一段階である土づくりの「水合わせ」からすでにはじめています。水あわせとは、荒壁土に水と稲藁(荒スサ)を加えて練り合わせる工程で、保水性の向上と乾燥による亀裂防止のため稲藁を加え、練り合わせは備中鍬で土を返すだけでなく、足で何度となく踏みしめ、常に水を満たした状態を保つことにより、土の熟成を促進させることをいいます。月に1回程度、約1年かけて行うことで、適度の粘り気があり、鏝の滑りの良い良質な壁土に仕上がります。

このように、「聚楽土」を使いこなすには、高度で伝統的な技能と経験、それに長い準備期間を必要とします。迎賓館では、これらの伝統技能を活用して和風の趣を創出して行きます。

このコーナーでは迎賓館に生かされる伝統技術を紹介していきます。

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