京都迎賓館情報



第十一号シンボル コミュニケーションレター(タイトル)
第11号 平成15年1月

わたしたちはこんな迎賓館を創ります。

室内完成予想(コンピューターグラフィックス)

工事の進捗状況についてお知らせします。

平成14年3月撮影
 迎賓館建設工事は平成14年2月より工事用通路等の準備工事を始め、3月に起工式、4月より本体工事の掘削工事を進めてまいりました。本体工事は地下の掘削工事と土の搬出作業を完了し、現在まで地下躯体工事(型枠・鉄筋・コンクリート工事)の約50%が完了、築地塀工事は北面・南面・東面の躯体が完了しています。
平成14年12月撮影
 今後、本体工事は地下部分の躯体工事と並行して地上部分の躯体工事の施工を行い、5月頃より仕上げ工事と庭園工事を行う予定になっています。
 引き続き周辺環境への配慮並びに交通安全など充分注意し工事を進めてまいります。

最良のものを選ぶため試験植栽をしています。

 京都には苔寺(西芳寺)に代表されるように、苔を活かした庭園がたくさんあります。木々や庭石の足下を覆った苔は水気を含むことにより、柔らかい雰囲気の中にも凛とした緊張を感じさせる、日本庭園にはなくてはならない存在といえます。
 迎賓館の庭園にも活用する計画になっていて、たくさんの苔の種類の中から現地の環境に一番なじみやすく、管理しやすいものを選ぶため、現場内での植栽試験を行っています。昨年の6月に試験体の植え付けを行い、1年間育成した後、今年の6月に判定します。その後、材料手配、準備をはじめ、来年の6月から庭園に植え付けを行う予定で計画を進めています。
植え付け状況 庭園の模型

 1年間育てた試験体は、育成状況、雑草の種類と生え方の多少、鳥による被害(主にカラス)、土壌の適否、景観上の趣などを目安に選定されます。

このように造っていきます。

■原寸試作(モックアップ)で確認
 京都迎賓館(仮称)は伝統的な空間構成を備えながらも、現代技術を最大限活用した「現代の和風建築」として設計されています。その中で、内部空間と日本庭園の連続性や、日本の木造建築が備えている開放性の確保が重要な要素になっています。
 そこで、その要素が集中している「回廊」の一部の原寸試作(モックアップ)を現場内に造り、制作方法、強度、操作性、施工方法、精度などを確認、改善方法の検討を行います。
 その結果、不足な点が生じた場合は改善方法を検討し本番工事に反映させることで、手もどりをなくし、よりよい出来映えを目指します。

京都御苑の歴史の流れとともに

 手当ての甲斐もなく枯損し、伐採に至ったエノキについて第8号でお知らせしましたが、伐採断面から樹齢が約116年と推定できることがわかりました。
 そこで、このエノキが生きてきた時間を京都御苑の歴史と重ね合わせてみることで、育ってきた環境を伺い知ることができます。
 このように見比べますと、このエノキは、京都御苑整備事業がほぼ完成した後に芽を出し、御苑の成長・成熟とともに大きく育ってきたことがわかります。
 今回、残念な結果になりましたが、今、再び植えた木を新しい御苑の歴史の流れとともに成長させることで緑化再生に繋がることを目指していきます。
参考文献 : 中川登史宏「京都御所・離宮の流れ〜転変のものがたり〜」

職人さんの工房を訪ねて(2)

 伝統的技能が活かされた空間を創造する今回の工事にあたり、その技能がフルに発揮され、より効果的に活用される環境を整えるため、職人さんの工房を訪ねています。
 前回に引き続き、錺金物の工房を訪ねました。  錺金物は、日々の暮らしを楽しくより豊かなものへとするため、日本独自の金工美の技法を活かした工芸品です。
 襖(ふすま)の引き手や釘隠しといった小さな細工から、仏具・祭具・神社仏閣の建築金物まで、さまざまな金物が錺師といわれる職人さんによりつくられています。
 訪ねた工房では現在、寺社で用いられる釣り燈籠(とうろう)が数人の職人さんにより手分けしてつくられていました。
 まず、「型取り」した銅板を金槌とタガネにより文様を刻み、切り口はヤスリ掛けを施します。それぞれの職人さんが、慣れた技で手早く作業を進めていました。
 工房のあとは、今までにつくられた作品を見せて頂きました。建築金物や祭具など、先代達によりつくられた作品も含め、すばらしい金物が陳列されています。
 京都ならではの時代を感じさせる祭具からは、日本人の心の豊かさ、繊細な優しさが伝わってきます。

迎賓館に生きる伝統技術

また、製作図案(原寸図)も拝見しました。一つ一つ手書きの図案は、とても綿密に描かれており、どのような作風にするかは、この段階で入念に考えられます。
このように錺師といわれる職人さんは、いつまでも良いものをつくり続けるため、また、京都だけでなく日本の伝統を守り続けるため、日々鍛錬されています。
先人の教えを守り、伝承されてきた技を磨きながら、今日も金槌を打ち続けているのです。

このコーナーでは迎賓館に生かされる伝統技術を紹介していきます。

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