淀川水系流域委員会 第4回琵琶湖部会(2001.8.22開催)速報

2001年9月28日
部会長 川那部 浩哉

 

1.第3回、第4回委員会の概要説明

・ 部会長より、第3回、第4回委員会の概要についての説明があった(資料1参照)。

・ 委員会及び部会の概略スケジュールも検討された。琵琶湖部会としては、おおむね現状把握を今秋まで行い、来年4月までに河川整備計画原案作成への意見の取りまとめを行うこととしたい。そして、委員会としては、来年秋には河川整備計画原案に対する答申を行いたいとの説明があった。

2.第2回、第3回琵琶湖部会(現地視察)の総括説明

・ 部会長より、第2回、第3回琵琶湖部会(両方とも現地視察)の総括的な説明があった
(資料2参照)。

3.琵琶湖を中心とする淀川水系の現状(環境)についての情報提供

・ 河川管理者及び委員から、琵琶湖を中心とする淀川水系の現状(環境)についての情報提供があり、各担当者が説明の後、質疑応答が行われた。

・ 河川管理者からの主な説明

・ 台風11号による琵琶湖及び直轄河川の状況、資料3−1に基づき、琵琶湖の環境の現状(琵琶湖水位の変化、琵琶湖湖辺の変化、水質の変化、生物の生息状況の変化、野洲川の環境概要、草津川の環境概要)についての説明があった。

(質疑応答)

・ データの取り方によって水草(沈水植物)の現存量が大きく変わると思うが、データを取った場所はどこか。(委員)

・ 滋賀県の水産試験場が昭和44年と平成7年に調査したものを比較したもので、琵琶湖全域の地点からデータを取っている。(河川管理者、西野委員)

・ 西野委員からの主な説明

・.漁獲量の変動とその要因について

・ アユの資源量は増大傾向にあるが、それ以外の魚類は減少傾向にある。要因としては、湖岸堤の建設によるヨシ帯面積の減少、洗堰の操作規則の変更が考えられる。

・ コイの産卵抑制という現象もみられ、水位が下がると産卵抑制が起こるのではないかと指摘されている。

・ 冬に高水位の場合はヨシをあまり刈らないが、低水位の場合はヨシを刈る。冬にヨシを刈った場合には、魚の産卵期にヨシの成育が間に合わないため、稚魚の生育面積が減少することが指摘されている。

・.琵琶湖の湖底の変化について

・ 琵琶湖の水質の経年変化をみるとほぼ横ばいであるが、水深30m以上の湖底では大きな変化が起こっている。

・ 湖底の温度は長期的に増大傾向にあり、1965年から現在までで平均で1.5℃の上昇がみられる。短期的にみても、1983年から1990年の間で3℃の上昇がみられる。また、湖底直上水の酸素量についてみると、地球温暖化と富栄養化の影響で年最低溶存酸素濃度が低下傾向にあり、湖底の生物に影響を与えている。

・ チオプローカのような硫黄酸化細菌が出現したり、沿岸部の動物が深底部に進入し、繁殖するなどの変化がみられるようになってきた。

・ 湖底が将来無酸素状態になると、植物プランクトンの大増殖が起きる可能性があるので、今後も湖底の状態をモニタリングしていく必要がある。

(質疑応答)

Q:30m以深で硫黄細菌のデータを調査したとあったが、硫黄細菌は30mより浅い場所でも採取できる。水相を採取して調査するよりも、底生動物を採取して調査した方が湖底の状況がはっきりわかるということか。(委員)

A:相互作用もあるので、水相と底生動物の両方でモニタリングした方がなおよい。
(西野委員)

Q:将来の湖底の生物環境が危ぶまれるとの説明があったが、どうすれば改善されるのか。(委員)

A:富栄養化が原因なので、栄養分の流入をストップすることと、地球温暖化防止が改善策として挙げられる。(西野委員)

Q:地球温暖化との関係で議論する場合、気温や湖面温度のデータを出して欲しい。
(委員)

A:陸水学雑誌に掲載されている、遠藤修一氏の論文を参照して頂きたい。(西野委員)

Q:夏季の産卵と水位の問題について、水位0・で産卵数が大きく変わるとの説明があったが、その理由を教えて頂きたい。(河川管理者)

A:コイ科の稚魚は水深が50・より浅くて、リター(枯れたヨシ)が10・以上堆積した場所にしか分布しないが、そのような場所の面積が水位低下によって大きく減少するということである。(西野委員)

Q:洗堰の操作規則が施行される前後(1964年と1996年の比較)で琵琶湖の水位の特徴が異なり、それによって産卵パターンが変わったという説明があったが(資料3−2参照)、水位変化の原因は洗堰の操作の仕方による影響なのか、それとも気象現象によるものなのか教えて頂きたい。(河川管理者)

A:様々な条件が異なるので比較が難しく、原因の分析も難しい。(西野委員)

Q:水位のコントロールの考え方は魚類への影響を重要視するかヨシ刈りを重要視するかによって相反したものになると思うがどう考えたらよいか。(委員)

A:どう折り合いをつけるか、話し合いによって解決する他はないと思う。昔はヨシ帯の他にも多くの産卵場所があったが、琵琶湖の環境が大きく変化し、今では魚類の産卵場所がヨシ帯に限られるようになってしまったことが遠因にあると思う。(西野委員)

・ 村上委員からの主な説明

・.ヨシ原とツバメの関係について

・ 映像に映し出されているツバメはびわ町の湖北水鳥公園で撮影されたものであり、1万羽程度は集まっていると思う。ツバメは夕方ヨシ原に集まって夜を過ごし、朝飛び立つ。

・ 8月中旬頃になると、子育てを終えたツバメや巣立ったツバメがヨシ原に集まり、9月頃には南方に渡っていく。ヨシ原はツバメにとって渡りの重要な拠点となっている。

・.水鳥の生態について

・ 鳥類は、水の中から空中まで非常に広い生息域をもっている。一羽の鳥がいるということは、その場所が、その鳥の持つ採食環境、休息環境を全て備えているといえ、ひとつの環境指標になる。殆どの鳥が水辺を利用しており、生息環境を整えていくためには、水面から水草帯、河畔林等の整備が重要である。

・ 乱獲や環境破壊によって、全国規模でオオヒシクイ(ガンの一種)の生息地が減少している。オオヒシクイにとって、今では琵琶湖は要となっている。

・ 琵琶湖の水位が上昇すると、オオヒシクイは餌となる水辺植物を捕食できず、やむを得ず、水田で捕食せざるを得なくなるというように、水位がオオヒシクイの生態に大きな影響を与える。

・ カワウは現在、琵琶湖において、竹生島と伊崎不動に大きなコロニー(集団営巣地)を形成しており、河口で魚を捕食する等、漁師との間で問題が生じている面もある。

・ 河畔林にサギのコロニーが形成され、糞害や鳴き声等によって、人とのあつれきを起こしている。そしてコロニーを追われて別の場所に追われる、という状況にある。しかし元を正せば、人とのあつれきのない場所にあったコロニーの適地が破壊されたためである可能性もある。

(質疑応答)

Q:魚、鳥、水田との関わりについてヨシ帯の説明があったが、水鳥の生息で水田が関わっているその他の事例があれば教えてほしい。(委員)

A:あぜ畔がサギ等の鳥やその他の生物にとって非常に重要な餌場となっている。また、水田に営巣をする鳥や、水田の魚を捕食するユリカモメ等の鳥もいる。(村上委員)

・ 嘉田委員からの主な説明

・.生活環境主義の立場からみた琵琶湖環境と景観の変遷について

・ 生活環境主義とは、近代技術によって環境を保全しようという立場とは異なり、村落や行政等の社会組織、地域の生活者からみた場合はどうか等、地域の人々と対話と交流を重ねながら考えていくという立場である。

・ 琵琶湖周辺の平地には、水路が毛細血管のように張り巡らされている。

・ 水の境界が字、小字といった地域社会関係の境界とよく合うことにも示されるように、日本では水と地域社会は密接な関係を持っている。

・ 水と地域社会の関係の捉え方をいろいろと考えてきた。言葉にならない、表現しにくい部分、いわば五感で表現する世界を言葉として引き出すためには、聴き取り調査だけでは十分でなく、いろいろ苦労してきた。その中で地域の生活環境の変化を写真で示すことが有効であることがわかった。

・ 例えば、野洲川河口部の昭和30年頃と現在の写真を比較して、魚類等の生態の実態が過去どうであったのか、写真に写っている人たちを追跡しながら調査を行った。

・ 野洲川河口に吉川という集落があるが、明治38年以降は閘門がつくられ、琵琶湖と水路が切り離された。しかし、琵琶湖とクリーク、内湖、水田間では水位差が少なく、水車で人間が水を逆水し、水の道がつながり、フナやナマズ等も集落の水田に入り込んでいた。生物にとっては、台風や梅雨も集落と琵琶湖を結ぶ水の道ができる重要な要因であったのではないか。

・ 昭和42年頃の吉川集落の写真をみると、人々が水田からつながる水路で洗いものをしたり、飲み水をとったり、生き物と人間と水がセットとなった複合的な生態系があった。現在では、水路は30・程度の溝としてかろうじて残っているだけである。

・ 昭和40〜50年代と現在の余呉川河口や大津市の名神高速道路付近の写真をみることによって、琵琶湖総合開発が完成するまでと現在で湖岸の状態が大きく変化していることがわかる。

・ かつては湖岸にはたくさんの桟橋が存在し、魚が逃げ込む場所を提供したり、船着き場になったり、人が洗いものをする場を提供していた。

・ 生物の多様性にあわせて文化も多様となる。500年、1000年の間に生物、人、水の関係がつくられてきたが、我々はこの30〜40年間でその関係を大きく破壊してきた。水資源開発の必要性があったため破壊したとも言えるが、もう少し配慮すべき点があったのではないか。

・ ヨシ帯の重要性については社会的な関心が寄せられるようになったが、水田の重要性も見直す必要があるのではないか。分断されてしまった水田と湖、内湖などをつなぐことによって、生き物のにぎわいを取り戻すことを提案したい。

(質疑応答)

Q:閘門の管理についての説明があったが、魚類は増水期に遡上して産卵するため、閘門が閉まっていると問題があるのではないか。(委員)

A:閘門の管理は水田の水位を高く保つために行うので、増水期は閘門を開ける。だから問題ないと思う。(嘉田委員)

Q:魚類にとって、水田・水路・琵琶湖の水のネットワークが大切である。(委員)

A:その通りだと思う。琵琶湖総合開発では水門を作り、水のネットワークを切断したが、これは当時の時代背景を考えると仕方ない面もある。しかし、これからは長い歴史を考え、将来を見据えて再考する必要があると思う。(嘉田委員)

Q:これまでは、生物と人間、水を分離させるということで事業を進めてきた。これからは、その分離を見直し、連続という観点で事業を行う必要があると考えている。これまでの分離の問題点等について、今後、どのように一般に説明していけばよいだろうか。(河川管理者)

A:緻密な科学的なデータを積み上げる一方で、価値観の転換といった哲学・思想の問題も含めた両側からのアプローチも必要だと思う。(嘉田委員)

・ 三田村委員からの主な説明

・.水質の経年変化について

・ 琵琶湖を考える場合、水質の指標として、・琵琶湖に流入した水が変化を受けず流出するパラメーター、・化学的、物理的に変化を受けるパラメーター、・生物によって変化を受けるパラメーター、の3つがある。
・ ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩化物、硫酸の6つは主要元素と言われるものである。重要度という意味では別になるが、琵琶湖の水質といえばこの6成分が殆どである。

・ 琵琶湖の透明度の経年変化をみると、だんだんと濁ってきており、その原因は植物プランクトンによるものが大きい。また、琵琶湖は徐々に水質悪化の方向をたどっているということがプランクトンの異常発生等、琵琶湖に現れた現象をたどればわかる。

・ 琵琶湖北湖底層水の溶存酸素量は年々減っているが、これは湖面の有機物が増えた等、湖面の汚染が原因である。また、窒素量をみると、1928年から2001年のわずか70年程でかなりの増加(単純計算で年間10%増)が見られる。これは我々の生活そのものに起因する。

・.物質循環と琵琶湖の水質について

・ 水温の季節変動についてみると、8月末には湖面は26℃程度になり、水深20m付近では急激に温度低下がみられる。秋口になると、湖面の水温は低下し、1〜4月頃には湖面と湖底付近の水温が同じになる。この時、琵琶湖で湖面と湖底の水が循環し、年に一度の水の大循環が起こる。

・ 硝酸濃度は11〜3月頃に湖面と湖底で同じになる。この時期に、琵琶湖の水を淀川を通して流して欲しい。そうすれば、琵琶湖の水質がよくなる。

・ 窒素の動きをみると、河川から流入してきた窒素が生物の食物連鎖によって移動するが、10%程度は光の届かない湖底に落ち、さらにその10%程度が堆積する。最近、琵琶湖の窒素の動きが変化してきているので、注意を払わないといけない。

・ 湖の富栄養化を防止するためには、かつてそうであったように、陸の物質循環、水の物質
循環が正常に機能するようなしくみをつくらなければならない。そうしないと水質はよくならない。

(質疑応答)

Q:化学成分の水平分布について、様々な化学成分の指標を示して頂いたが、琵琶湖の環境ホルモンの調査を行っているのかお聞きしたい。(委員)

A1:琵琶湖全域を詳細に調査した環境ホルモンのデータはないと思う。行政がいくつかのデータを持っていると思うが、正確な指標を把握するためには、基礎的な調査の蓄積も必要であると思う。(三田村委員)

A2:琵琶湖研究所では環境ホルモンの調査は行っていない。滋賀県では国の一斉調査の一環としてデータを持っているが、調査場所が限定されており、陸上と湖の因果関係までを考慮した調査には至っていない。

A3:環境ホルモンの行政の調査状況については、第2回委員会資料2−1−2の3−21ページに、平成10年度の結果が掲載されている。詳細な資料は後日改めて提供させて頂きたい。(河川管理者)

A4:部会委員へは、第2回委員会配布資料で配布された程度のものをできるだけ早く送付すること。(部会長)



4.意見交換

・ 河川管理者、委員からの情報提供を受けての主な発言内容

・.水質について

・ 水上バイクに関する資料(資料5参照)について寺川委員から紹介があり、詳細な説明は次回部会で行うことになった。

・ マリンエンジン排出ガスの資料(資料5−3、16ページ参照)には、琵琶湖での水質調査について触れているが、数値等の具体的な調査結果は掲載されていないので、近畿運輸局から調査結果を出して頂きたい。

・ 淀川水上オートバイに関する資料(資料5−1−・b、23〜24ページ)について、図の訂正資料を提出して頂いているが、図と表の数値が異なっている。吉野川の水量予測では後日になって不利な数値を出していなかったことが明らかとなっているが、そのようなことにならないように厳正な数値を出してほしい。

・ 資料5−1−・b、23〜24ページについてのご指摘については早急に調べ、結果を委員にお知らせする。(河川管理者)

・ 庶務は、関連する資料を集め、次回部会までに委員に配布して頂きたい。(部会長)

・ 琵琶湖の水上バイクの問題について、現在の対応等があれば教えて欲しい。

・ 琵琶湖の水上バイクの問題について、現在、滋賀県自然保護課では今後どうしていくか議論が行われている。(河川管理者(滋賀県))

・ 滋賀県からも琵琶湖の水上バイク関連の資料をできるだけ、庶務に提出して頂きたい。(部会長)

・ 水上バイクの問題については水面利用をどうするかという問題にもなるので法律面も考慮するべきである。諸外国の事例収集もして頂きたい。

・ 水上バイクの影響について、環境省では水質保全局、滋賀県では自然保護課で対応している。どのような視点で対応するかという問題もあり、整理が必要だと思う。

・ 水質を中心に、湖面利用についてもいずれは議論したい。諸外国の事例等、河川管理者からの資料だけではなく、各委員も手持ちの資料があれば出して頂き、議論したい。
(部会長)

・.河川整備の考え方について

・ 現地視察の際に、河川管理者が、野洲川、草津川が河川の優等生であるような説明がなされたが、河川を大型化、直線化するだけでよいのだろうか。魚道等を作っても、水が切断されている状態では、河川本来の働きをしているといえるであろうか。水を大切に考え、河川のあり方について、立ち止まって考える必要があると思う。

・ 琵琶湖の湖底に酸素を送り込む役割のひとつに、底引き網を使用する漁師の存在があった。この30年間で湖底の溶存酸素量が減少する等、琵琶湖は急激に変化した。魚の量が減少し、漁師が底引き網を行わなくなり、湖底が無酸素状態になってしまうと、それを解消するためには人工的に酸素を湖底に送り込むしかないと思う。

・ 琵琶湖総合開発は、水位を安定させることを目的にしているはずだが、ここ数年、何回か水位がマイナス50・のラインに到達している。コントロールが上手くいっておらず、水位変動が魚類等に与える影響は大きい。視点を変えて琵琶湖のことを考えないと、とり返しのつかないことが起こるのではないか。

・ これらの内容について、今後部会で考え、河川管理者に意見を出していく必要があると思う。(部会長)

・ これまでの河川管理は、治水、利水のみで行ってきたが、現在は集水域、生態系も含めた河川管理が問われるようになっている。どのような管理目標を持つべきかを議論すべきである。陸と川の水がどうつながっているのか、水の物理、化学、生物等も含めて考えざるを得ないと思う。この部会では、視野を広げて審議を進めて行くべであり、そのためにも、委員以外の専門家の意見が必要な場合もあると思う。

・.河川管理者の資料提供について

a.時系列表

・ 河川管理者から本日提供された資料について、例えば下水道の整備や水質等の項目について、時系列で並べることによって違った見方ができると思う。時系列に並べた資料を提供して頂きたい。(部会長)

・ 河川管理者からの環境の情報提供として、自然環境という要素もまとめ、提供して頂きたい。(部会長)

・ 因果関係までは難しいが、同じ時期に何が起こったかという時系列の表を作成する。(河川管理者)

・ 時系列の資料は河川管理者が河川整備計画の原案を作成する際、河川管理者自身の理解にも役立てて頂きたい。(部会長)

・ 時系列の資料を作成する際は、水質等と人口や農薬等の相互関係がわかるようシナリオを作成して頂きたい。いろいろなシナリオを比較し、これまでの20〜30年の河川管理が何だったのかを議論し、次の20〜30年につながればと考えている。

b.洗堰操作

・ 洗堰の水位操作では、6月15日に水位がマイナス20・になるように、1ヶ月間で水位を操作している。この操作による水流で南湖の稚魚が下流に押し流されるとの話がある。洗堰の操作規則が施行される前後で、押し流されている稚魚のデータがあれば、情報提供頂きたい。

・ 河川管理者は操作規則を忠実に守り洗堰を操作しているが、その操作基準は治水と利水のみを考慮した過去のものであり、環境は考慮されていない。今後は自然環境等も含めると操作規則の数値がどうなるのか考える必要があると思う。


・.その他

・ 琵琶湖湖面の説明があったが、直轄管理区間以外についても審議の対象になるのか。

・ 直轄管理区間の審議を行うためには、琵琶湖全体を考えざるを得ないということが、これまでの部会の審議で一致した意見である。(部会長)

 

・ 一般傍聴者からの意見
(意見交換の途中で一般傍聴者から意見聴取を行い、その後改めて審議を行った。)

・ 西野委員より、「低水位時にヨシが刈られると魚類が減少する」との説明があったが、かつての琵琶湖にはヨシ帯以外にも様々な産卵場所があった。コンクリートの護岸やダムによって水が切断される等の人工的な環境も魚類減少の要因になっている。全体の生態系が変わってしまったこと等、ヨシ以外の要因も考える必要があると思う。

・ 嘉田委員より説明のあった水田と河川の関係について、基盤整備が進んで琵琶湖の水をポンプで取水するようになったため、水田に魚類が入り込めないという状況もある。

・ 丹生ダムの利水目的は、・河川維持水、・水道用水、・異常渇水時の緊急水補給の3つとなっているが、河川維持水以外の目的は既に解決済みの問題であると思われるため、丹生ダムの計画は見直す必要があると思う。

・ 姉川の最下流に漁業権を持っているが、漁業権者からみると、滋賀県下の大きな天井川では、昭和40年代に農業用水を目的に頭首工が設けられ、本流の流量が減少した。農業用水として水田で使用された水が泥水となって農薬や肥料とともに、琵琶湖に流入するようになった。農業排水が下流の漁業権者にとって最大の問題である。琵琶湖の水質改善の審議を行う際、考慮して頂きたい。

 

・ 一般傍聴者からの意見聴取後の主な発言内容

・.水のネットワークについて

・ 琵琶湖総合開発は琵琶湖と内湖、水田を切断することが目的であったが、その目的が達成されると、魚類の移動ができなくなる等の重大な問題があることが判明した。休耕田を湖岸に集める等、まだ問題を解決できる部分もあるし、間に合わない部分もある。このようなことをこの部会で審議していきたい。

・.丹生ダムについて

・ 水需要は過剰部分と不足部分とがあり、アンバランスである。余剰部分を見直そうという動きもあるので、丹生ダムは、その中で十分に議論すべきダムであると思う。

・ 丹生ダムは高度成長期に計画され既に30年が経っている。水需要の予測等、是非とも見直す必要があると思う。

・ 丹生ダムのパンフレットを見ると事業費が掲載されていない。今後の議論において事業が対象となった場合には、事業費の情報を開示して欲しい。

・ 丹生ダムについては取水実績や安全度等の現状説明を行っており、今後、水の必要量等を利水者に確認した上で、部会で説明したい。また、色々な事業を今後行うにあたり、事業費やB/C(費用便益比)等の情報を提供していきたい。(河川管理者)

・ 丹生ダムについては今後、部会でも委員会でも議論しなければならないと考えている。(部会長)

 

・ 意見交換のとりまとめ

・ 淀川下流の水道用水の話が一般傍聴者からあったが、治水・利水を全体的に考えると、琵琶湖部会だけの問題ではなく、委員会としての議論になると思う。また、この話は淀川部会等でも取り扱ってはどうかと思う。(部会長)

・ 漁業関係者等、様々な生業を営んでいる人々が、これまでどのように環境を守ってきたのかについて、今後、議論を行う上でいろいろと考えていく必要があると思う。(部会長)

・ ヨシと水位の問題では、魚の立場やヨシ業者の立場等で様々あり、全体として議論していかなければならないと思う。(部会長)

・ ある講演で、「生態学の研究者よりも一般住民の方が環境の重要性をよく認識していたと言わざるを得ない」と発言したことがある。時代背景によって環境に対する考え方も変わってくるので、いろいろな意味で琵琶湖の総合保全について新しい考え方をする必要がある。(部会長)

5.今後の部会について

・.審議内容について

・ 次回の部会では少なくともテーマをしぼった方がよい。例えば、丹生ダムの議論と本日の議論のまとめを議論したらどうか。

・ この部会は直轄管理区間の整備をめぐる議論の場であるが、整備ということについて、河川管理者はどこまで考えているのか。ものを作ることだけを整備と考えているのか、それとも維持管理する仕組みまでを整備と考えているのか、或いは直轄管理区間の計画と琵琶湖全体の関連性を考えたしくみ、それをモニターするような機構までを整備と考えているのか、はっきりさせておいた方が議論しやすい。

・ はっきりとした決まりはないが、河川整備計画にはものを作ることから維持管理までが含まれると思っている。範囲については直轄管理区間が原則であるが、直轄管理区間に影響する範囲については、例えば流域対応という形で河川整備計画に盛り込んでいくことになるのではと考えている。(河川管理者)

・ 委員会に提出された計画に対して議論をするのが従来の委員会であるが、この流域委員会はそうなっていない。計画に盛り込む内容も委員会として河川管理者に提言することもできると思う。(部会長)

・ 環境という問題について本日は4委員からの説明があったが、次回部会では他の委員からも環境について説明して頂きたい。(部会長)

・ 現状認識の後、哲学等についての議論も早めにしたい。例えば水需要を絶対的なものとして見るのではなく、どう抑えるのかを議論し、その中で丹生ダムの事業をどう評価できるのかといった議論の進め方が必要であると考える。

・ 委員からの情報提供や、一般傍聴者からの意見があったが、それぞれ魚類、鳥類等の立場に立った意見であった。このような意見を、現在、或いは将来の社会システムをどう創っていきたいかという議論の中で、もう一度見直して頂きたい。

・ 河川整備計画を策定する際、技術的なことで制約があり、その制約によって流域委員会で議論しても、議論した内容が反映できないということもあるので、河川整備計画の原案が出される前に、その制約条件を言って欲しい。

・ 琵琶湖の漁業関係者は、漁業以外の外部要因のため、諦めの繰り返しであった。技術的なこと以外にも諦めざるを得ない、そのような制約があると思う。
・ 諦めてしまえばこの流域委員会の意味がなくなってしまうので、努力が必要である。(部会長)

・ 必ず出すべきかどうかわからないが、委員からも要望があるのも事実なので、河川管理者側から河川整備計画原案への意見に制約条件があるのであれば、わかった時点で言って頂きたい。(部会長)

・.現地視察について

・ 流域委員会の大きな目的の1つとして、河川整備計画原案に対して住民意見の聴取、反映方法があるが、我々流域委員会が素晴らしい原案のたたき台をつくるという使命もあると思う。そのためには、漁業、農業をされている方の意見も聴きながら、もう一度、現場を見る必要があるのではないか。

・ 様々な専門を持つ委員が一緒に現地視察することは非常に重要であると思う。

・ 水田と水路の視察や、漁師の船に同乗する、休日に水上バイクの現状を視察する等が考えられる。

・ 漠然と現地視察をしても仕方がない。問題意識をもって現地視察しないと意味がないと思う。


6.総括(部会長とりまとめ)

・.次回部会について

・ 第5回部会は、10月12日(金)、13:30〜17:00の時間帯で行う。

・ 第5回部会では、寺川委員から水上バイクに関する情報提供をして頂く。次回部会は委員から資料を多く提出して頂きたいと考えている。環境についての説明をしたい委員は、庶務に直接連絡して欲しい。

・ 現状説明(環境、人と川との関わり)の後、時間があれば各委員に河川に対する思いを語って頂きたい。

・.現地視察について

・ 現地視察を希望する委員は、現地視察のポイント、目的等を庶務に伝えて欲しい。その結果を踏まえ、調整した上で、各委員に後日お知らせるようにする。

・.住民意見の聴取について

・ 住民意見の聴取だけではなく、反映方法も流域委員会で審議し、提言しなければならない。次回、或いは次々回の部会までに住民意見の聴取・反映の方法を考えてもらいたい。アイデアのある委員は庶務に伝えて欲しい。

・.その他

・ 各委員から知りたい情報について意見を頂いているが(資料4−1参照)、先ずは各委員から持っている資料があれば提供して頂きたい。また、河川管理者も出来る限りの努力をし、資料を提供して欲しい。

以 上


 

注:速報は、会議の概要をできるだけ早くお伝えするものであり、随時修正される可能性があります。最新の速報はHPに掲載いたします。
委員名については、情報提供を行った委員のみ記載しています。

 

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