-淀川水系流域委員会 第1回猪名川部会(2001.5.23開催)速報 −

2001年6月12日
部会長 米山俊直

 

1.部会長からの説明、要望
  • 部会では、実質的な議論により、問題や課題が発見できる。部会で徹底的に議論し、最善若しくは次善の策を考えたい。

  • 弘法大師の三教指帰や、中江兆民らの三酔人経綸問答の智恵も参考に、徹底した自然保護論者、開発推進論者、地域社会・生活を大切にする人など、価値観の異なる人たちが議論しあって解決策を考えることが重要である。

  • 2100年の日本を考える際に、地球、人類、国家の存続など様々な前提があるが、環境問題もその一つである。

  • 発展途上の1901年より2001年の方がはるかに困難な問題に直面している。1世紀後の人達にも評価されるような選択をしていきたい。

  • 河川法改正により、治水、利水に環境が加わったが、環境の範囲は、自然環境だけを考えると対象が狭くなる。社会環境、文化環境についても考える必要がある。

  • 当面の部会の進め方としては、現地をできるだけ詳しく見るという観点からも第2回、第3回ともに現地視察を行ってはどうかと思う。
2.河川管理者による猪名川の現状説明
  • 河川管理者より、以下内容について説明があった。

    - 河川整備計画策定の流れ(現状〜課題〜対応〜集約)
    - 猪名川を取り巻く社会環境
    - 河道等の整備状況
    - 現状(ダム・河道整備)で大雨が降った時に想定される洪水量
    - 越水破堤、洗掘、浸透により破堤が生じる可能性のある区間
    - 高潮の現状
    - 耐震対策


     (主な発言内容) 

    • 猪名川の堤防に生えている植物の影響で、花粉症に悩まされている住民がいる。堤防のそばに住む人間に対して、治水、利水だけでなく、毎日の生活との関わりも重視してもらいたい。(委員)

    • 治水に関して、余野川ダムはどうなるか心配である。一庫ダム、箕面 川ダム以外にもダムが必要なのか。森林が成熟してきたことにより、災害の発生が少なくなったとの長野の報告もある。現地視察では、止々呂美など余野川ダムの周辺も行ってもらいたい。(委員)

    • 4つの洪水が説明されたが、雨の降り方の典型的な型として4つに分けられるのか、いろいろな型の中から4つを選んだのか伺いたい。また、上流に降った場合、下流の場合などで出水の仕方が異なるのかについても、お聞きしたい。(委員)

    • 戦後の大雨を4つ選んだところ、それぞれ雨の降り方が異なっていた。(河川管理者)

    • 100年に1回の確率で降る大雨、という説明ではわかりにくいと考え、過去の大きな雨を選んで、それと同じ雨が降ったらどうなるか、2割増しだとどうか、という観点から説明を行なった。(河川管理者)

    • 総合治水対策を考える時、何割を保水、遊水機能で維持するか、何割をダムで維持するか、土地利用の変化などを踏まえて説明して欲しい。(委員)

    • 手持ち資料がないので、次回説明したい。(河川管理者)

    • 洪水時の治水対策のみの説明であったが、環境への対策としては、平常時の水の流し方についても考えて、説明をして欲しい。(委員)

    • 治水、利水、環境と順に説明させて頂きたいので、平常時の水の流し方は、環境のところで議論してもらいたい。花粉の話のように河川管理者が知らない情報を教えて頂き、河川管理者は自分たちの知っている情報も出していきながら、現状についての情報を共有したい。(河川管理者)

    • 無制限な開発や人間の土地利用の後追いで治水対策を行なってもだめである。まずこういう川にしたいというビジョンがあって、河川計画を考えるべきではないか。発想の転換が必要である。水の氾濫によってできた沖積平野に住んでいる我々は、ある程度洪水を許容し、かつ人命は守るという考えが必要である。需要追随型で利水を考えるとビジョンは出ない。(委員)

    • 日本の河川の中でも、猪名川の管理は非常に難しい。一庫ダムは環境のために水を流せるようなダムではない。池田の渇水を防ぐ為のダムであるが、水を流しても地盤にしみこむため、平常時の河川の水量 を維持できず、管理が非常に難しい。(委員)

    • 蛇行部分の水質は非常に悪く、住民生活に悪影響があったが、治水のために直線に改修されて、水質が大幅に改善された。(委員)

    • 今回の現状説明は、夢が無く、今後どうしようかが分かっていないように感じる。猪名川の本質が分かっていないのではないか。歴史やこれまでの取組みなど、一緒に勉強することが必要ではないか。(委員)

    • 猪名川は、直轄区間周辺は都市、上流は山村で、バラエティに富んでいる。直轄区間が主な対象とは思うが、上流から下流まで考えていかなければならない。高潮や治水などの問題の優先順位 や、将来を見通した長期的な視点の議論が必要である。全体を網羅した議論が必要ではないか。(委員)

    • 説明の中に、猪名川の特性(池田炭、くぬぎ林、伊丹の酒等)も含めていただくとよかった。また、環境面 の説明が聞けなかったのが残念だった。(委員)

    • 過去の洪水の何割増し、何割減の方が分かり易いという説明だったが、他の委員も分かり易いと感じているのだろうか。(部会長代理)

    • 過去の何割増しというのは、時間軸を変えず、量だけを増減させたものである。100年に1度といった確率論の方が良いのであれば、その説明もする。(河川管理者)

    • 確率論による洪水流量の表現と、過去の洪水に基づく割増洪水流量 の表現という2つの方法の比較が必要である。すでに進めている事業との関係や優先順位 の問題を扱う時などに、2つの方法の間に整合性はあるのか?(部会長代理)

    • 次回は、両者を併用して説明する。(河川管理者)

    • 猪名川は、最上流部に大きなニュータウンが開発されている。こういう状況についても議論に加えてほしいと思う。(部会長)
3.一般傍聴者との意見交換
  • 余野川ダムのアセスは閣議アセスに準ずる形で行なわれているが、もっと精密なアセスを行なうべきだと思う。閣議アセスの資料を部会に出して欲しい。余野川ダムの湛水地域にオオタカが生息しているという事実があるので、自然環境調査に対する姿勢を聞かせて欲しい。(傍聴)

  • 今回策定する整備計画は直轄区間が基本となるが、それに影響を及ぼす場合には余野川ダムやその地域の説明もすることになる。オオタカについては、専門的な問題なので、大阪府が委員会をつくり、河川管理者も参加している。(河川管理者)
4.決定事項
  • 第2回猪名川部会は、現地視察とし、6月7日に開催する(JR尼崎駅13:00集合)。
  • 第3回も現地視察とするが、開催日程は、庶務で再度調整を行なう。

 

以上

 

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