2001年12月3日現在

淀川水系流域委員会 第5回猪名川部会(2001.10.9開催)速報

部会長 米山 俊直

1.第5回委員会の概要説明

・ 部会長及び庶務より、第5回委員会の概要についての説明があった(資料1参照)。

2.猪名川の現状(人と川との関わり等)に関する情報提供

@河川管理者からの主な説明

資料2−1を用いて、猪名川の現状(人と川との関わり)についての説明が行われた。

@.川(洪水)から災害を防御

  • 平常時より防災訓練を実施し出水時に備えている。また、各地に水防倉庫を設置しており、土嚢などの非常用物資などを備蓄している。

  • 水防体制として、府県や関係市の水防担当者が直轄区間の重要水防箇所の点検を行っており、左岸、右岸で各市の担当区に分けて水防活動に協力して頂いている。また、水防警報は、小戸水位観測所を基準として警戒水位に達する1時間前に「待機」「準備」次いで30分前に「出動」を出している。日常においても、河川巡視を行っている。

  • 住民に対しては安全で的確な避難行動がとれるよう、過去の浸水地域や避難場所、ルート等を示したハザードマップが公表されている。

  • 猪名川は、流域の都市化が進み一気に水が流れていくこと、河川改修が未完成のところがあること、開発がさらに進んでいることなどの理由から総合治水対策を実施している。対策としては、「流域」「河川」「その他」の3つで考えており、流域については保水地域、遊水地域、低地地域を設定している。保水地域では一定規模以上の新規開発の際の調節池の設置や自然地の森林保全を、遊水地域では盛土の抑制などの対策を行っている。

A.川の利用

  • 利水のうち、農業関係では流域市町村の米粗生産額が昭和40年をピークに下がり、田畑についても面積が減少している。漁業は、アユ、ニジマスなどの放流が行われている。

  • 6市2町で猪名川の水が飲まれており、川西市、豊能町では100%、池田市、猪名川町では70%以上が猪名川の水である。

  • 渇水時の対応は、利水者、大阪府・兵庫県の水資源担当部局と河川管理者による猪名川渇水調節協議会を開催し、一庫ダムの貯水率や長期的な天気予報等を目安に渇水調整に入る。近年では平成6年から7年にかけて、延べで271日、上水の最高で30%の取水制限が行われた。

  • 河川敷364haに対する高水敷の割合は13%(47.5ha)で、高水敷の内67%(31.9ha)が占用公園として利用されている。また、都市公園における猪名川の河川敷占用公園の割合は、池田市で89%、伊丹市で12%となっている。

  • 猪名川の利用形態についてはスポーツや散策などに利用する人が多い。利用場所は高水敷が最も多く、70%を占めている。

B.川の文化

  • 各市において、高水敷や堤防天端を利用していろいろなイベントが催されており、中学生のマラソンや川の日の記念イベント、河川敷の清掃、野草教室などが開催されている。

  • 猪名川流域の特産品としては伊丹や池田の酒、茶道に使われている池田炭などがある。池田市の細河地区は宝塚市の山本地区とあわせて、日本で植木の四大名産地となっている。

C.川の環境

  • 昨年、地域住民と連携してワンドを整備した。また、河川をショートカットした際に残された部分の水面を利用して、公園を整備している。

  • 堤防から直接建物の2階へ行くことができるように通路を整備したり、堤防から高水敷の公園につながる坂路を緩い勾配にして、車椅子が利用できるように整備されている。

D.地域住民との関係について

  • 資料4−1、資料5−2を用いて、猪名川工事事務所等と関係のある地域団体の説明と、地域団体の一つである阪神高速道路対策川西連絡協議会と猪名川工事事務所との経過について説明が行われた。

(質疑応答)

Q:総合治水対策メニューの遊水地域の箇所に「都市計画法による市街化調整区域の保持」「盛土の抑制」とあるが、猪名川流域で遊水地域に指定されている地域はあるのか、あるとすれば、盛土の抑制というのは自治体の条例などで行っているのか、国の方でやられているのか教えてほしい。

Q:総合治水対策メニューの中の河川対策と流域対策をどういうバランスで計画され、流量をどのように配分されているのか、そして、実績として何%達成されているのか教えて欲しい。

A:今は資料を持っていないので、次回、回答させて欲しい。(河川管理者)

A池淵委員からの主な説明

OHP及び資料2−2を用いて水循環についての説明が行われた。

  • 6000年前の近畿地方は、海が現在よりも内陸に相当進入していたが、河川から流れ出る土砂の堆積や埋め立てなどによって、猪名川流域においても陸地が拡大している。

  • 日本の年平均降水量は他の国と比べても多いが、面積が小さい割に人口が多いため、人口一人あたりでは少ない。明治以降の年平均降水量の推移を見ると、最近の傾向としては変動が非常に大きい。

  • 降水においては季節変動と時間的集中化が特徴である。地形特性としては堆積地形が主であることなど、土地利用では下流低平地に人口や資産が集中していることなど、流出特性としては流量変動が大きいことなど、人口・水利用では人口が過去100年で4倍に増加していることなど、がある。

  • 森林には水源涵養機能というものがあり、雨が少ないときには森林等で遮断されたり、土壌を湿らせるため流量は出てこず、降り続けると流量が出てきて、さらに降り続けると流域が飽和状態となって降った雨はそのまま出てくるようになる。

  • モデルによる試算では、猪名川流域の一庫上流域で110〜120mmの雨量に達すると雨が直接流れ出るようになる。一庫上流域の市街地を山地に戻した場合は、昭和28年の実績降雨でピーク流量が16m3/s減少するが、量的にはそう多くない。

  • 森林は中小洪水に対してはかなりの洪水調節機能を有するが、大洪水となると流域は流出に関して飽和状態となり、特にピーク流量の調節という面では期待できない。ただ、森林は水源涵養機能の他に多くの機能を持っているので、森林の整備保全が重要であることには変わりはない。

  • 森林の洪水・渇水緩和機能を超える洪水時や渇水時では、被害の軽減などをはかるには、ある程度の水準をもった森林以外の治水、利水機能を確保することが不可欠である。どの程度の安全度とするかは、議論があると思うが、森林だけでは限界があると思う。

  • 下流の都市域の水循環としては、非常に浸透しにくい面が多いのと同時に、下水道など人工循環系のシェアが非常に大きい。

  • 南海地震の発生確率が大きな数字で発表されているが、大阪湾の湾口等では津波を考えなければならない。特に下流域では高潮或いは津波を想定しておく必要がある。また、地球温暖化により、世界的にも変動が大きくなってきていることから、渇水や洪水の頻度を警戒していく必要がある。

(質疑応答)

Q:高潮という切り口から説明されたが河川管理の役割を広くとらえた場合、防災計画における河川空間と水の役割の明確化というようなことがモデルで提唱されているので、そういった面も取り上げて欲しい。

A:南海地震のシミュレーションで、津波が大阪湾に入ってくる時の波高などのアウトプットを防災研究所でも算出しているようなので、高潮防潮堤を上回る波高になるのかなども含めて用意できれば提示したい。(池淵委員)

Q:市街地を10%山地に戻すと流出量は1%減少するというお話だったが、100%山地に戻すとどうなるのか。やはり流出量は10%減少する程度なのか。ピーク流量の減少としてはそれほどあてにはできないのか。

A:モデルでシミュレーションしていないので、算出してみたいが、山地のパーセントが増加した分だけピーク流量が減少するとは予想はしていない。(池淵委員)

Q:愛知の洪水のように500mm程度の雨が集中した場合、ダムを造っても駄目だという試算はないのか。また、余野川ダムなど今猪名川流域で計画されているダムが完成した場合、500mmの雨が降った場合にはもつのか。

A:東海豪雨並みの降雨の場合には、一庫ダムを空にしておいて、流入してくるものは全て貯め、それを超えるものを流すという考えだと相当の効果があると思うが、そういった想定のシナリオをまだ描いていない。余野川ダムなどが完成しても、500mmの降雨ではもたない。従って、どのくらいの安全度、リスクまで頑張るかを決めて、それを超えるものについては氾濫するが、死傷者だけは出さずに、床上、床下浸水は覚悟するという選択が必要となろう。400、500mmがどのくらいの確率で起こるかは計算できるが、それをこの流域の合意としてがんじがらめで防御するのがいいのかどうか、という議論がある。(池淵委員)

A:第1回猪名川部会資料3に、大きな雨が降った場合、ダムはどうなるかということについてモデル的に試算した資料を載せている。ダムもある計画値を想定して運用しているため、計画を超えるような大雨が降れば、パンクする。(河川管理者)

Q:針葉樹林と広葉樹林で違いがあるといった細かいデータはないのか。

A:樹種による違いがどの程度出てくるのかといった、試験地サイドでの事例がほとんどないのが現状である。もし提示できるようなデータがあればと思う。(池淵委員)

B松本委員からの主な説明

OHP及び資料2−3を用いて猪名川に生息する生物(魚類)についての説明が行われた。

  • 自分の所属している団体では、生き物調査等を行っている。そのデータをもとに話をするので、定量的、専門的なデータをもとにした話ではないということを、初めに断っておきたい。

  • 猪名川の生物相、特に魚類については、まだ十分調査されていないのではという感想を持っており、そういった面から説明したい。

  • 猪名川流域には細かい分類をすると40種類くらいの魚が生息していると思われる。用水路或いは小河川が流入している部分に魚が集まる傾向がある。
  • 猪名川では、ギギやナマズが比較的豊富にいる。下流の方でも藻の群落が点々とあり、小魚のゆりかごになる場合が多々ある。また、深みがあって少し淵になっているような場所にもいろいろ集まってくる。

  • ムギツクは、岩場や障害物の多いところに生息しているが、今、減少が非常に著しい魚である。河川改修が進むたびに減少しており、平瀬が多くなっているのが原因の一つと考えられている。

  • スジシマドジョウは、大阪府下では非常に稀少になっており、猪名川でも消滅の危機にあるのではないかと思っている。

  • 河川は非常に著しく形態や環境を変える。過渡期のある時期にある環境があり、そこに出現する魚もいるのではという思いもある。

  • カワヒガイ、タナゴといった種類は二枚貝に産卵する習性があるが、猪名川流域のみならず、二枚貝は全国的に非常に減少している。二枚貝の生息する環境を取り戻さないとタナゴ類は戻ってこない。

  • 猪名川水系には比較的多くの種類の淡水魚・貝類が生息しており、まだ捨てたものではないが、今のまま放っておくと、近い将来消滅する種類も少なくはない、ということを結論として言いたい。

(質疑応答)

Q:猪名川水系の場合、大阪府のレッドデータと兵庫県のレッドデータがあるが、大阪府の方は参考になるのか。

A:大阪府の方が比較的ポピュラーなものを準絶滅種などとして取り上げている。大阪府の方には猪名川のデータが十分反映されていないという思いがある。資料2−3には、猪名川の大阪府に属する場所で生息している魚を意識的に載せた。(松本委員)

3.意見交換

@質問書に対する回答について

米山部会長より、9月10日に環境にやさしい街づくり推進会より出された質問書に対する回答(案)が提示され、内容について議論が行われた。

  • 「整備計画に対して拘束力、強制力は持っていない」と断言するのはどうかと思う。拘束力、強制力という言葉が適当かどうか分からないが、意見は反映されるのではないか。

  • 以前委員会で河川管理者が、流域委員会と河川整備計画の関係について言われた言葉を、もう一度確認したい。

  • 法的には、この流域委員会は、河川管理者が作成した河川整備計画の原案に対して「意見を聴く場」である。ただし、我々としては、意見が出れば尊重するつもりである、と説明している。「意見が尊重されると理解している」という表現も考えられるのではないか。(河川管理者)

  • (案)の中では「整備計画」と記述されているが、曖昧なので「新河川法の河川整備計画」と記述した方が良いのではないか。

  • この議論を受けて(案)を修正し、返事することにしたい。(部会長)

A猪名川モデルおよび河川整備の方向性について

米山部会長より、資料3について説明が行われ、内容について議論が行われた。

@.猪名川モデルについて

  • 資料3(骨子案)は委員それぞれにプランを立ててもらうためのたたき台として出している。また、委員から意見が出やすいよう、河川管理者寄りの案となっている。この案ついてそれぞれ意見を言って頂きたい。(部会長)

  • この案をスタートとし、各委員の意見を十分に聴いて頂き、具体的対策としてはより広い、包括的なものも入れてまとめ上げていけば良いと思う。

  • 新河川法では治水、利水、環境を同列に扱うという大前提があるのにもかかわらず、この案ではそうなっていない。これまでの開発や水需要を後追いする論理で、まず洪水対策、水需要の対策に目標が置かれており、環境は一番後ろに後退してしまっている。

  • 現在の計画で今の需要を乗り切るとしても、その後人口が減ってきたときにどうするのかというビジョンを最低限考えるべきである。ダムを取っ払う計画を30年、50年後のビジョンの中に持ってくる中で、今の計画は都市河川だから仕方がないと位置付けて、両者の間につながりを持たせないといけない。

  • 具体的な施策として記述されている余野川ダムについては重点的に考える必要がある。ダムの利水、治水上の必要性の検討も必要ではあるが、環境の面からも考えなければならない。そういう面で、一庫ダムでは選択取水装置や曝気装置などの装置を備えているが、それでもまだ十分でない点があるので、自分なりに分析して、次回に間に合えば意見を提出したい。

  • この案は、誰かが強い異議を唱えなければ、この方向で進んでしまう流れではないかと当初から感じている内容である。しかし、自分には適切な反論、代替案を出せる材料や根拠をまだ十分に持ち合わせていないのが現状である。

  • 将来的に、国は消えたとしてもシステムは残る。水を管理するシステムを残さないと人は生きていけないからである。国土交通省が消えても、猪名川のネットワークは全国につながっている、そのようなところまで考えておいた方が良い。(部会長)

  • アフリカでは最新の文明を享受する人がいる一方で、8〜9割は最貧困層である。日本が将来そうならないという保証はない。この案の最後につけた資料にもあるように、今後の人口減少を見越してこれからどうするか、という話である。それぞれ幸せな生涯を完結して送れるところに着地できればと思っている。(部会長)

A.環境、治水、利水のバランスについて

  • ダムを造っても、洪水を完全には防ぎきれないのであれば、ダムを造った場合と、造らなかった場合の洪水被害の程度と、それぞれでの水辺環境、植物、魚の状況を示した上で選択していくものだと思う。50年に1日の洪水を防ぐために残り99%の日はつまらない川で過ごすのか、1日の洪水を許容して環境豊かな所に住むのかといった選択になると思う。

  • 今までの水資源開発は過剰ではないかという意見もあるが、渇水が短いタームで起こってきていることや地球温暖化の進展など、地球環境の変化を考えるとそうでもないのではないか。心配しすぎかも知れないが、このまま温暖化が進むと、今の水資源を将来ずっと確保できるのか、という思いもある。費用面や環境との共生も考え、どうソフトランディングさせるか考えていくことが一番の課題である。

  • 従来は人の命、暮らしを守るために治水や利水の工事が行われてきた。その代わりに川が死んできているのではないか。環境も人間の暮らしには大切なものであり、次の世代に伝えていくべきものである。そういう意味では、治水、利水と環境のバランスをどうとっていくかが大切である。

  • 遊水池などを整備する前提となる基準を見直してみることによって、工事の方法や規模も変わり、環境を優先できる場合もあるのではないか。特に、余野川ダムは、今の計画通りのものが本当に必要なのか見直す必要がある。環境を考えて計画を立てるべきである。

  • 水需要の増加に対応した対策をとるのではなく、国土交通省として節水を呼びかけ、水利用をセーブさせることも重要である。その結果、ダムが一つ必要ではなくなるかも知れず、環境が守られる場合もあるので、そのような取り組みも整備計画の中に位置付ける必要がある。

  • 現在の施設で十分かどうかを決めるには、洪水や渇水に対してどの程度の安全や水準を確保するのか、という合意が必要である。このようなことを踏まえて、余野川ダムにシフトした議論ではなく、バランス、ソフトランディングを考えた議論を行っていきたい。合意の結果として余野川ダムも必要なくなる場合があるかも知れない。

  • 日本はあるレベルの生活水準を達成しており、現在は一層の豊かさを求めるのではなく、もっと環境に配慮した、自然と接して過ごしていけるようなことを求める、そういう段階に来ている。それを認識した上で、ダムなどについても考えていくべきである。

  • これまでの議論を聞いて、治水・利水・環境のバランスが大事だということが委員共通の認識だと受け取った。河川管理者としても、委員の方にきちんと判断して頂けるよう最大限の情報、現状や課題を提供したい。ある目標を立てたとき、それをダムで対応するのか、河道で対応するのか等の議論があると思うが、いろいろな代替案とその軽減策について分かる範囲で提示するので、議論頂きたい。(河川管理者)

  • 浸水を許容するという話があったが、浸水するという前提で生活していた昔に比べ、最近は浸水は起こらないと思い込んで生活している人が多いことが心配である。今は一度浸水が発生すると、相当被害があるという実態もあるので、その実態も良く見て、バランスをどうとるかということを考えて欲しい。そのために精一杯、情報提供させて頂きたい。(河川管理者)

B.今後の河川整備の課題、方向性について

  • 河川の環境を考えたとき、高水敷のあり方は非常に重要な問題である。現在、高水敷のほとんどが占用公園となっており、その大半が運動公園である。猪名川は特にその割合が高いのではないか。都市の中の自然は河川しかない状況である。環境といいながら、その河川に運動公園が整備されているのは問題ではないかと思っている。

  • 一度水が汚れるとそれを浄化するには非常にコストがかかる。元々の水がきれいであれば大きなコストはかからないため、水源を常に清浄な状態にしておくことが一番大事である。

  • ダムについては最初から賛成、反対という立場ではない。状況によってはダムを造った方が環境に良い場合もあり得るかも知れない。ただ、一般論を言えばダムを造れば水質が低下するため、それを下流でどう補うのか、全体での河川の維持管理を考えていくべきである。

  • 個人的な感想としては工事のたびに川は荒れ、魚の種類が減って単調になっていくことをずっと経験してきている。源流では本当にきれいな箇所がなくなる一方で、中・下流の水質の悪化は止まっており、全般的に中程度の水質という感じに全国的になっている。猪名川の山奥の開発で、さらにきれいな部分が失われるが、本当に地域住民が望んでいる工事になっているのか考えていきたい。

  • 環境を考えて、専門家が考案した部材等も活用すればよい。また、人と自然との関わりにおいてはインタープリターが重要であり、整備計画にも位置付ける必要がある。また、氷室のように、今は必要なくなった技術でも、次の世代のために残した方が良い技術を伝えていくことも必要である。

  • 開発をした後に自然を再生する努力は必要だが、その前に自然破壊を伴う工事は本当に必要なのかを、まず考える必要がある。人間が自然を復元することは不可能であるので、再生よりも工事の見直しをまず考えてほしい。余野川ダムの水没地域の森林の豊かさを見て、これを本当に水没させるのか、もう一度考え直す余地があるのではないか、と強く感じる。

  • 水収支で考えると、猪名川流域は雨の少ない瀬戸内海気候に属しているため、絶対量としてはまだ足りないように感じる。今のように、降水量の変動が激しい状況では、現在、渇水をほとんど経験していない猪名川の都市住民も、今後、博多の人々のように何年かに一度は大きな渇水を経験する可能性がないとも言えない。その上で、利水面で余野川ダム整備の可能性も考える必要があると思っている。(部会長)

  • 現在、物質的に豊かに暮らすことができるのは、過去の遺産のおかげであり、私たちも次世代に資源や自然環境を引き継いでいく義務がある。そのためには、今のライフスタイルを変えていく必要がある。暮らしが変われば許容の範囲も変わり、多くの環境を次世代に伝えることができる。人々が自然や河川と触れ合いながら、自分の暮らしを川から学ぶことでライフスタイルを変えていく、このようなことも整備計画に含めていく必要がある。

  • 余野川は、猪名川流域の中で海から源流までつながっている貴重なルートなので、せめてそういう川を一筋だけでもこのまま残して欲しい。それが一つの財産になるのではないか。

  • 10年、20年で人間の価値観は変化するため、変化する価値観や生活に伴って計画自体も見直していくという柔軟な対応が必要である。20年後の日本人の生活や地球の環境がどうなっているのかという視野で今の開発を見直して欲しい。そのために、柔軟に事業を見直す際には私たち住民も参加させて欲しい。

  • 猪名川の特徴は我々にとっては、総合治水であり、流域全体で考えることだと思っている。また、都市河川であり、治水も利水も環境も考えなければならない点も特徴である。その辺りも議論して頂きたい。(河川管理者)

B課題・意見募集について

  • 淀川部会では、委員の方から今後検討すべき課題を募集しているそうだが、猪名川部会でも同じようなことを行い、次回の議論のたたき台にしたい。(部会長)

  • 今後の検討課題を考えるにあたって、これまでの資料について疑問点が出てきた場合、どこへ問い合わせればよいのか。

  • それぞれ担当は違うが、窓口は一本化する。数名単位の勉強会に呼ばれて行くのも、個別に説明に伺うことも可能なので、庶務を通して質問を出して欲しい。(河川管理者)

4.一般傍聴者からの意見

  • 国土交通省は、「この委員会の法的な位置付けは『意見を聴く場』である。」と言っていたが、意見を聴いた後の検討内容についても情報公開して欲しい。余野川ダムは何年も前にできた計画であり、水需要なども変わってきているので、この部会では一度白紙に戻した上で、議論して欲しい。

  • 「関西のダムと水道を考える会」からは、琵琶湖部会と淀川部会への要望はすでに出ているので、猪名川部会についても期待して待ちたい。(部会長)

5.次回以降の部会について

  • 次回、第6回部会は12月18日(火)、17:00〜20:00の3時間で実施する。
    ・ 課題・意見募集については、11月15日ぐらいを目途に庶務宛に提出する。次回部会での議論のたたき台にする。

  • 河川管理者に質問したいことがある場合には、庶務へ問い合わせる。

以 上

 

注1:速報は、会議の概要をできるだけ早くお伝えするものであり、随時修正される可能性があります。なお、議事内容の詳細につきましては議事録をご確認下さい。最新の速報及び確定した議事録はHPに掲載しております。
注2:委員名については、情報提供を行った委員のみ記載しています。

 

 

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