@河川管理者からの主な説明
資料2−1を用いて、猪名川の現状(人と川との関わり)についての説明が行われた。
@.川(洪水)から災害を防御
- 平常時より防災訓練を実施し出水時に備えている。また、各地に水防倉庫を設置しており、土嚢などの非常用物資などを備蓄している。
- 水防体制として、府県や関係市の水防担当者が直轄区間の重要水防箇所の点検を行っており、左岸、右岸で各市の担当区に分けて水防活動に協力して頂いている。また、水防警報は、小戸水位観測所を基準として警戒水位に達する1時間前に「待機」「準備」次いで30分前に「出動」を出している。日常においても、河川巡視を行っている。
- 住民に対しては安全で的確な避難行動がとれるよう、過去の浸水地域や避難場所、ルート等を示したハザードマップが公表されている。
- 猪名川は、流域の都市化が進み一気に水が流れていくこと、河川改修が未完成のところがあること、開発がさらに進んでいることなどの理由から総合治水対策を実施している。対策としては、「流域」「河川」「その他」の3つで考えており、流域については保水地域、遊水地域、低地地域を設定している。保水地域では一定規模以上の新規開発の際の調節池の設置や自然地の森林保全を、遊水地域では盛土の抑制などの対策を行っている。
A.川の利用
- 利水のうち、農業関係では流域市町村の米粗生産額が昭和40年をピークに下がり、田畑についても面積が減少している。漁業は、アユ、ニジマスなどの放流が行われている。
- 6市2町で猪名川の水が飲まれており、川西市、豊能町では100%、池田市、猪名川町では70%以上が猪名川の水である。
- 渇水時の対応は、利水者、大阪府・兵庫県の水資源担当部局と河川管理者による猪名川渇水調節協議会を開催し、一庫ダムの貯水率や長期的な天気予報等を目安に渇水調整に入る。近年では平成6年から7年にかけて、延べで271日、上水の最高で30%の取水制限が行われた。
- 河川敷364haに対する高水敷の割合は13%(47.5ha)で、高水敷の内67%(31.9ha)が占用公園として利用されている。また、都市公園における猪名川の河川敷占用公園の割合は、池田市で89%、伊丹市で12%となっている。
- 猪名川の利用形態についてはスポーツや散策などに利用する人が多い。利用場所は高水敷が最も多く、70%を占めている。
B.川の文化
- 各市において、高水敷や堤防天端を利用していろいろなイベントが催されており、中学生のマラソンや川の日の記念イベント、河川敷の清掃、野草教室などが開催されている。
- 猪名川流域の特産品としては伊丹や池田の酒、茶道に使われている池田炭などがある。池田市の細河地区は宝塚市の山本地区とあわせて、日本で植木の四大名産地となっている。
C.川の環境
- 昨年、地域住民と連携してワンドを整備した。また、河川をショートカットした際に残された部分の水面を利用して、公園を整備している。
- 堤防から直接建物の2階へ行くことができるように通路を整備したり、堤防から高水敷の公園につながる坂路を緩い勾配にして、車椅子が利用できるように整備されている。
D.地域住民との関係について
- 資料4−1、資料5−2を用いて、猪名川工事事務所等と関係のある地域団体の説明と、地域団体の一つである阪神高速道路対策川西連絡協議会と猪名川工事事務所との経過について説明が行われた。
(質疑応答)
Q:総合治水対策メニューの遊水地域の箇所に「都市計画法による市街化調整区域の保持」「盛土の抑制」とあるが、猪名川流域で遊水地域に指定されている地域はあるのか、あるとすれば、盛土の抑制というのは自治体の条例などで行っているのか、国の方でやられているのか教えてほしい。
Q:総合治水対策メニューの中の河川対策と流域対策をどういうバランスで計画され、流量をどのように配分されているのか、そして、実績として何%達成されているのか教えて欲しい。
A:今は資料を持っていないので、次回、回答させて欲しい。(河川管理者)
A池淵委員からの主な説明
OHP及び資料2−2を用いて水循環についての説明が行われた。
- 6000年前の近畿地方は、海が現在よりも内陸に相当進入していたが、河川から流れ出る土砂の堆積や埋め立てなどによって、猪名川流域においても陸地が拡大している。
- 日本の年平均降水量は他の国と比べても多いが、面積が小さい割に人口が多いため、人口一人あたりでは少ない。明治以降の年平均降水量の推移を見ると、最近の傾向としては変動が非常に大きい。
- 降水においては季節変動と時間的集中化が特徴である。地形特性としては堆積地形が主であることなど、土地利用では下流低平地に人口や資産が集中していることなど、流出特性としては流量変動が大きいことなど、人口・水利用では人口が過去100年で4倍に増加していることなど、がある。
- 森林には水源涵養機能というものがあり、雨が少ないときには森林等で遮断されたり、土壌を湿らせるため流量は出てこず、降り続けると流量が出てきて、さらに降り続けると流域が飽和状態となって降った雨はそのまま出てくるようになる。
- モデルによる試算では、猪名川流域の一庫上流域で110〜120mmの雨量に達すると雨が直接流れ出るようになる。一庫上流域の市街地を山地に戻した場合は、昭和28年の実績降雨でピーク流量が16m3/s減少するが、量的にはそう多くない。
- 森林は中小洪水に対してはかなりの洪水調節機能を有するが、大洪水となると流域は流出に関して飽和状態となり、特にピーク流量の調節という面では期待できない。ただ、森林は水源涵養機能の他に多くの機能を持っているので、森林の整備保全が重要であることには変わりはない。
- 森林の洪水・渇水緩和機能を超える洪水時や渇水時では、被害の軽減などをはかるには、ある程度の水準をもった森林以外の治水、利水機能を確保することが不可欠である。どの程度の安全度とするかは、議論があると思うが、森林だけでは限界があると思う。
- 下流の都市域の水循環としては、非常に浸透しにくい面が多いのと同時に、下水道など人工循環系のシェアが非常に大きい。
- 南海地震の発生確率が大きな数字で発表されているが、大阪湾の湾口等では津波を考えなければならない。特に下流域では高潮或いは津波を想定しておく必要がある。また、地球温暖化により、世界的にも変動が大きくなってきていることから、渇水や洪水の頻度を警戒していく必要がある。
(質疑応答)
Q:高潮という切り口から説明されたが河川管理の役割を広くとらえた場合、防災計画における河川空間と水の役割の明確化というようなことがモデルで提唱されているので、そういった面も取り上げて欲しい。
A:南海地震のシミュレーションで、津波が大阪湾に入ってくる時の波高などのアウトプットを防災研究所でも算出しているようなので、高潮防潮堤を上回る波高になるのかなども含めて用意できれば提示したい。(池淵委員)
Q:市街地を10%山地に戻すと流出量は1%減少するというお話だったが、100%山地に戻すとどうなるのか。やはり流出量は10%減少する程度なのか。ピーク流量の減少としてはそれほどあてにはできないのか。
A:モデルでシミュレーションしていないので、算出してみたいが、山地のパーセントが増加した分だけピーク流量が減少するとは予想はしていない。(池淵委員)
Q:愛知の洪水のように500mm程度の雨が集中した場合、ダムを造っても駄目だという試算はないのか。また、余野川ダムなど今猪名川流域で計画されているダムが完成した場合、500mmの雨が降った場合にはもつのか。
A:東海豪雨並みの降雨の場合には、一庫ダムを空にしておいて、流入してくるものは全て貯め、それを超えるものを流すという考えだと相当の効果があると思うが、そういった想定のシナリオをまだ描いていない。余野川ダムなどが完成しても、500mmの降雨ではもたない。従って、どのくらいの安全度、リスクまで頑張るかを決めて、それを超えるものについては氾濫するが、死傷者だけは出さずに、床上、床下浸水は覚悟するという選択が必要となろう。400、500mmがどのくらいの確率で起こるかは計算できるが、それをこの流域の合意としてがんじがらめで防御するのがいいのかどうか、という議論がある。(池淵委員)
A:第1回猪名川部会資料3に、大きな雨が降った場合、ダムはどうなるかということについてモデル的に試算した資料を載せている。ダムもある計画値を想定して運用しているため、計画を超えるような大雨が降れば、パンクする。(河川管理者)
Q:針葉樹林と広葉樹林で違いがあるといった細かいデータはないのか。
A:樹種による違いがどの程度出てくるのかといった、試験地サイドでの事例がほとんどないのが現状である。もし提示できるようなデータがあればと思う。(池淵委員)
B松本委員からの主な説明
OHP及び資料2−3を用いて猪名川に生息する生物(魚類)についての説明が行われた。
- 自分の所属している団体では、生き物調査等を行っている。そのデータをもとに話をするので、定量的、専門的なデータをもとにした話ではないということを、初めに断っておきたい。
- 猪名川の生物相、特に魚類については、まだ十分調査されていないのではという感想を持っており、そういった面から説明したい。
- 猪名川流域には細かい分類をすると40種類くらいの魚が生息していると思われる。用水路或いは小河川が流入している部分に魚が集まる傾向がある。
- 猪名川では、ギギやナマズが比較的豊富にいる。下流の方でも藻の群落が点々とあり、小魚のゆりかごになる場合が多々ある。また、深みがあって少し淵になっているような場所にもいろいろ集まってくる。
- ムギツクは、岩場や障害物の多いところに生息しているが、今、減少が非常に著しい魚である。河川改修が進むたびに減少しており、平瀬が多くなっているのが原因の一つと考えられている。
- スジシマドジョウは、大阪府下では非常に稀少になっており、猪名川でも消滅の危機にあるのではないかと思っている。
- 河川は非常に著しく形態や環境を変える。過渡期のある時期にある環境があり、そこに出現する魚もいるのではという思いもある。
- カワヒガイ、タナゴといった種類は二枚貝に産卵する習性があるが、猪名川流域のみならず、二枚貝は全国的に非常に減少している。二枚貝の生息する環境を取り戻さないとタナゴ類は戻ってこない。
- 猪名川水系には比較的多くの種類の淡水魚・貝類が生息しており、まだ捨てたものではないが、今のまま放っておくと、近い将来消滅する種類も少なくはない、ということを結論として言いたい。
(質疑応答)
Q:猪名川水系の場合、大阪府のレッドデータと兵庫県のレッドデータがあるが、大阪府の方は参考になるのか。
A:大阪府の方が比較的ポピュラーなものを準絶滅種などとして取り上げている。大阪府の方には猪名川のデータが十分反映されていないという思いがある。資料2−3には、猪名川の大阪府に属する場所で生息している魚を意識的に載せた。(松本委員)
注1:速報は、会議の概要をできるだけ早くお伝えするものであり、随時修正される可能性があります。なお、議事内容の詳細につきましては議事録をご確認下さい。最新の速報及び確定した議事録はHPに掲載しております。
注2:委員名については、情報提供を行った委員のみ記載しています。