淀川水系流域委員会 第3回淀川部会(2001.7.6開催)速報

2001年8月1日
部会長 寺田 武彦

 

1.第3回委員会の概要

○ 第3回淀川部会は、部会長代理が司会進行を行った。今後は部会長、部会長代理が交代で司会進行を行う予定。
○ 第3回委員会の概要(資料1)について部会長代理より説明があった。

2.淀川水系の現状説明

○ 紀平委員より、淀川に生息する魚の生態(樟葉のワンドに棲むコイ、淀川大堰を遡上するアユ等)について、VTRを用いての説明があった。
○ 河川管理者より「河川環境と河川利用の現状と課題」について以下の説明があった。

【生態系】
−変化する淀川の生物
−生態環境の変化要因
−単調・ドライから、多様・ウェットへの取り組み
【河川利用】
−水利用

3.淀川水系の現状認識についての意見交換

(主な発言内容)
○ 淀川水系の現状説明について、今回の説明はこれまでの中で一番よく、淀川の問題が見えてきた。

○ 魚のメス化についての記事を見たが、淀川水系から大阪湾へ流れ込む環境ホルモンが引き起こす現象についてのデータがあれば教えて欲しい。

○ 大阪湾の環境ホルモンやダイオキシン等に興味がある。建設省と運輸省が統合されて国土交通 省になったので港湾部門との連携を図り、そのようなデータも把握するようにして欲しい。

○ 大阪湾の環境ホルモンに関するデータは淀川工事事務所にはない。大阪府等が把握していると思うので、データの有無を調べ報告する。(河川管理者)

○ 関連する団体等が持っているデータの有無も調べ、大阪湾の環境ホルモンに関するデータを説明する機会を設けて欲しい。(部会長代理)

○ 現地視察の際、宇治川に奇形のオイカワが大量に発生したことを聞いたが、現在も宇治川で発生しているのか。淀川のアユの遡上について、宇治川だけではなく、桂川、木津川への遡上についての実態も教えて欲しい。サケ・マス等のデータもあれば教えて欲しい。

○ 森下郁子氏(猪名川部会委員)の著書『生物からのメッセージ 川と湖の博物館(5)バイオロードの生物』によると、年間3〜4万匹のアユが遡上しているらしい。木津川についてもアユがたくさん獲れるらしいが、放流されているので、遡上しているのかわからない。高山ダム、相楽発電所等の堰がない頃、かつて名張川にマスが上っていた。

○ イタセンパラが木津川下流で発見されたことは、淀川の冠水頻度の低下と関係があり、安住の地を求めて木津川に遡ってきているのではないかと思う。淀川のイタセンパラは保護されていると聞くが、木津川については公的に確認されていないため、保護されていない。

○ 淀川では、昭和46年頃、アユは全く獲れなかったが、昭和50年には、長柄可動堰でアユが獲れるようになっていた。昭和58年には淀川大堰ができ、アユのための魚道をつくり遡上しているが、それでも不備な点はある。

○ 生物について、淀川水系は長い歴史や固有種を有する琵琶湖を含んでおり、他の河川と違うということを理解する必要がある。琵琶湖の持っている長い歴史や生物の固有性が、今日までどう担保されてきたのかわからない。琵琶湖・淀川水系として、歴史、固有性に配慮する必要がある。アユがどんどん遡上すればよいというものではなく、それが歴史や固有性を壊す恐れもあるので、非常に怖い面 がある。

○ 淀川大堰の湛水域で淀川の小アユが育っている。海産のアユは本来、河口域で産卵するはずであるが、淀川大堰の関係もあり、木津川、宇治川の色々な砂礫帯のポイントで産卵している。海産のアユが海に戻れず、ダム湖でアユが再生産されているのかもしれない。

○ アユが海から上ることには関心を払うが、下ることについては関心を払わないという面 がある。アユが海に戻れないのは、我々人間が再生産のサイクルを断ったせいであり、生物学的に考えたら異常なことである。

○ サツキマスは昭和12年の農林水産省の資料によると、淀川で76トンの漁獲量 があり、日本一であった。

○ 河川法が改正され、治水・利水・環境の三本柱になったことには敬意を表す。今日のテーマは環境だが、環境に対しては何を言ったらよいのかわからない。治水・利水については基準が明確であるため、訴訟を起こしやすい。しかし、環境についてはどう訴えたらよいのか難しい。それは、環境の目標が明確でないからである。今後、環境についての総合的な目標をつくっていくことが大切であり、そうしないと局所的な議論になってしまう。

○ 現在は環境についての目標はない。淀川水系河川整備計画を策定するにあたり、本流域委員会で、まず淀川水系の現状認識を行い、課題を共有したい。課題を共有化してはじめて、環境についての目標も浮き彫りになってくると考えている。(河川管理者)

○ 上流の賀茂川について問題提起したい。20世紀は水資源開発、ダム開発等の経済優先の公共事業が時代の流れであったが、現在に至り、森や海等の自然を蔑ろにしたつけが現れているのではないか。

○ 洪水への危険意識も大切だが、より重要な問題は汚染である。水質について、クリアしているとの話があったが、人間に対してなのか、生物に対してなのかはっきりしない。

○ 人間中心的に河川を操作するという従来の考えではなく、水、河川への信仰、畏敬の念を抱き、生きる命のための環境という意識を抱くことが大切ではないか。このためにも、子供への教育が非常に大切だと思う。

○ 第1回部会において、委員会、各部会の進め方についての議論をした。淀川水系流域委員会は、委員が主体的に役割を担うという従来にはない委員会となることを目標として設立された。その中でまず、淀川水系の現状の認識を深めるため、現地視察等を行い、様々な角度で学習を行うということになった。このように、現状認識を進めることによって、秋頃には検討課題の輪郭が見えてくると考えている。(部会長)

○ 本日の部会では、紀平委員から説明があったが、次回部会から、毎回1〜2名の委員から淀川水系の情報提供をしてもらい、学習を進めることとしたい。(部会長)

○ 今後、現地視察等を開催する場合は、河川管理者の資料のみではなく、委員からの該当分野に関する資料提供もして欲しい。

○ 学校教育、地域の子供を教育することがこれからの河川づくりには重要であると思う。

○ 委員は、河川管理者に対して意見を言うのか、それとも河川管理者になったつもりで考えればよいのか、まず整理をしないと議論が発散する。

○ 渇水についての説明があったが、琵琶湖の渇水なのか、淀川の渇水なのか、よくわからない。

○ NGOの取り組みは、専門家を招いて議論する等、色々実施しており、進んでいるという認識を持って欲しい。

○ 審議時間が短い。3時間は必要ではないか。

4.現地視察について

○ 現地視察について、次のような意見があった。
- 現地視察は直轄管理区間外も行うべきだと考えており、上桂川も含めて欲しい。
- テーマやどこに重点を置いて視察するかを先ず決める必要があり、場所は後からついてくるものと考えている。
- 漁業の面で特に重要な河川は、近畿では上桂川と木津川上流であり、視察すべきである。


5.一般傍聴者からの意見聴取

(主な発言内容)
○ 淀川の河川公園を、現在の面積の4倍以上に広げるという計画があるようだが、計画の内容と予算を、データとして示して欲しい。費用と環境に及ぼす影響を考慮して計画を進めて欲しい。(一般 傍聴者)

○ 昨年よりフォローアップ委員会を開いており、今年度から淀川の河川公園の基本構想を全面 的に見直すことになっている。河川公園の整備も淀川水系河川整備計画に関わってくることなので、フォローアップ委員会の状況は委員会、もしくは部会に適宜報告したい。(河川管理者)

6.決定事項

○ 次回部会からは、毎回1〜2名の委員から淀川水系の情報を提供してもらい、現状認識を進める。

○ 次回現地視察について、以下の通り決定した。
- 8月9日(木)、8月11日(土)、8月19日(日)の3日の日程で現地視察を行う。
- 「木津川上流域」「木津川下流、桂川下流域」「桂川上流域」の3地域を1日ずつ視察する。
- 3回の現地視察のうち、1回は委員の意見交換の時間を2〜3時間確保する。
- 庶務と河川管理者で現地視察の計画(案)を作成し、各委員に示す。

○ 9月早々に通常の部会を行う。

以上


Copyright(C) 2006 淀川水系流域委員会 All Rights Reserved.