淀川水系流域委員会 第7回淀川部会(2001.9.10開催)速報




2001年10月19日現在
部会長 寺田 武彦

 

1.第4回委員会の概要説明

・部会長代理より、第4回委員会の概要についての説明があった(資料1参照)。

・委員会及び部会の概略スケジュールについても説明された。淀川部会としては、今回で現状把握がほぼ終わり、今後は課題分析・方向性検討を行う。

・住民意見の聴取・反映方法について、各部会で自由に議論するという委員会での決定を受け、淀川部会でも今後、委員の意見を聴きながら進めることとしたい。

2.淀川水系の現状(川と人との関わり)に関する話題提供

@河川管理者からの主な説明

資料2−1に基づき、淀川と地域住民との関わりを中心に、淀川水系の現状(川と人との関わり)についての説明があった。なお、水防団の現状については、淀川左岸水防事務組合の松永氏より説明が行われた。

@.水防団の現状

・現在では治水施設が整備され、淀川沿いで洪水や高潮が発生する筈がないと考える人々が多数いる。このため水防に対する住民の意識は低くなり、水防倉庫の設置等、地元の理解が得られないといった問題も起こっている。

・水害を経験していない若い世代は水防団に入る人が少なく、団員の定数割れ、高齢化が進んでいる。そのため、淀川左岸水防事務組合では、団員の獲得に力を入れている。

・淀川の治水対策は向上したが、洪水の危険は残っているため、当組合では、土嚢づくり等の水防訓練を行っている。これらの水防技術を若い世代にいかに伝承していくかが、我々の課題である。

・流域委員会においても、住民の意識をどう盛り上げ、水防活動を進めていくか、考えて欲しい。

A.洪水危機意識の低下

・宇治川、木津川、淀川本川には、堤防のすぐ側に人家が密集している地域がみられる。

・沿川住民の危機意識は低く、若年層ほどその傾向が顕著であることがわかった(淀川沿川の住民に対する洪水危機意識のアンケート調査結果より)。

B.河川公園の評価

・東京オリンピックを契機として、河川敷にグラウンドなどを整備していこうという動きがあり、淀川国営河川公園もスポーツ施設を中心に整備を行ってきた。

・淀川河川公園について、利用者が、「自然とふれあえる公園」「芝生広場などのある公園」という将来像を持っているのに対し、学識経験者からは、「今の淀川河川公園は河川公園ではなく単なる都市公園だ」という意見、沿川市町村長は、「スポーツ施設を整備して欲しい」との要望があり、三者で考え方に乖離がある。

C.不法行為、迷惑行為

・不法工作物や不法耕作等の問題については、河川管理者は指導や撤去作業等を進めている。

・水上バイク等については、沿川住民からの苦情や事故等の問題があったため、平成12年7月に水面利用暫定区域及びルールを設定した。

D.淀川における生業(なりわい)

・淀川水系の漁獲量は、大阪府域では昭和45年に比べて減少しており、京都府域では、平成3年をピークに減少している。

E.舟運復活のロマンと航路維持の確保

・淀川は、千数百年にわたり、水運の大動脈として機能してきたが、現在は砂利採取船や水上バス等が航行している程度である。

・淀川沿川市において舟運を復活させるための活動が行われているが、舟運を復活させるためには、水深を深くするか、浅い水深でも航行できる船を開発するか、どちらかが必要である。

A川上委員からの主な説明

OHP、資料2−2、資料2−2補足を用いて木津川上流についての説明があった。

@.木津川上流域における川の会・名張のNPO活動について

・かつて名張川には、民家から川まで直接降りることのできる階段があり、河川は人の暮らしと密着していた。現在は堤防が建設され、伝統的な川の姿が見られなくなった。

・1998年の台風7号で木津川上流の山林が大きな被害を受け、現在も土砂流出の危険性が迫っている。川を守るという立場から行政と協力し、子供でも参加できる植林を実施し、山林の荒廃を防ぎたいと考えている。

・産業廃棄物処理場からの流水による影響を調査した結果、流水が流れ込む箇所では殆ど生物が生息していないことがわかった。

・川を舞台にした子供への体験学習・環境教育の推進のため、昨年、「川に学ぶ」シンポジウムを開催した。これを受け、(財)河川環境財団内に事務局を置いて、川に学ぶ体験活動協議会がつくられ、現在、全国各地で川に学ぶ体験活動が推進されている。

・総合学習における小中学校からの依頼を受け、川を舞台にして水生生物や水質の調査・指導など、体験活動を行っている。

A.木津川上流域の水質について

・5年ほど前に、週刊誌に、「淀川三川のうちで木津川が最も汚染されている」という記事が掲載された。

・木津川下流の水道事業者からは、毎年三重県知事に対して、排水処理施設の整備や生活排水の対策等の要望が出されている。

・木津川上流域のBODの状況をみると、人口に対する汚濁負荷量の割合は、上野市が名張市を上回っている。

−名張地域の水質について

・1998年から1年間、約400万円をかけて20地点で名張川の水質調査を行った結果、名張市では人口が急激に増えたが、名張川は思ったほど汚れていないということがわかった。また、24時間調査の結果、生活活動の盛んな時間帯に汚染のピークがあることがわかった。

・環境ホルモンの調査も行ったが、木津川流域のどの河川からも満遍なく検出された。

・名張市では、農村集落排水処理事業や公共下水道の整備事業が進められている。また、開発指導要綱により、汚水処理場の建設を住宅開発業者に義務付けているため、人口の増加に比べ汚濁が少ないと考えられる。

−上野地域の水質について

・1999年から1年間、約300万円をかけて上野市についての水質調査を行った結果、上野市街地の排水が、木津川を汚染しているということがわかった。また、24時間調査の結果、上野市においても生活活動の盛んな時間帯に汚染のピークがあることがわかった。

・上野市においても、農村集落排水処理施設の整備が進められている。

・木津川の汚染を防止するため、市民が関わることができる汚水処理施設の建設を行政に提案し、実現することになった。この事業は、植生浄化を中心としたもので、提案から計画・建設・維持管理まで、官民がパートナーシップを組んで行う、新しいスタイルの公共事業である。

B.木津川について

・木津川は、上流から下流にいくにつれ、きれいになる。これは、まだ木津川が豊かな再生能力をもった河川であることを示している。上流の水質を改善すれば、下流の水質はもっと良くなる。

・木津川は琵琶湖に比べて淀川水系の中では存在が薄い。一方、三重県においては唯一、大阪湾に流れ込む河川であるため、特異な川として位置付けられている。木津川に対する事業費も、宮川など三重県の他の河川に比べると非常に僅かである。そのため、近畿圏、三重県における木津川の地位の確立が必要であると考えている。

3.意見交換

@市民による調査と官民のパートナーシップについて

・本来、行政が行うべきと考えられる水質調査を、市民が行う意味を教えて欲しい。

・行政は、調査したデータを元にして、汚染原因を突き止め、具体的な対策を講じること等を行っていない。一方、地域に密着し、川に対する様々な思いを抱いている住民が、自分達で調査することは、川への関心を高めることや、汚染原因を確かめる、行政に働きかける等、具体的な行動につながっている。住民の自立的な活動のためには、自分達で調査することは欠かせないと考えている。(川上委員)

・行政の水質調査は頻度が低く、時間帯や天候について充分な配慮がされていない。川の会・名張では、24時間調査を行う等、きめ細かな調査を行っている。(川上委員)

・川上委員の話には、本来の行政や住民の役割は何かという問題を孕んでいる。行政はサービス機関であって、住民が行政を先導していく時代が到来しつつあるのではないかと思う。今後、このようなことも流域委員会で議論していく必要があると思う。(部会長代理)

・住民側から発意が起こるためには、自らデータを調べる等、住民自身がアイデンティティを持つことが重要だと思う。緻密でなくてもよいので、住民自らが取り組むことが大事だと思う。

・川上委員の説明を聞き、人口10〜20万人の都市は、近年、急激に都市化が進み、行政機能が都市化に追いついていない都市が多く、上野市のように河川の汚染等の問題が発生するのではないかと感じた。

・川上委員の説明を聞き、住民レベルで非常に綿密に調査していることがわかったが、それには費用もかかると思われる。善意のもとでの費用の持ち出し等があるのではないか。

・単年度で決算を行っており、活動は予算内で行っている。時間や労力等という面では、住民の持ち出しと言えるかも知れないが、費用面での持ち出しはない。また、調査では、大学とも連携し、機器や人材・知識等を提供してもらっている。(川上委員)

・木津川、宇治川、桂川の三川のうち、25年前と比べ、一番汚くなったと感じられるのは木津川であるが、この問題に対して、行政はそうたくさんのことはできないと思う。この流域委員会の方向性も、行政が全て対応するのではなく、任せることができる部分は住民に任せるということではないか。

・河川整備計画の内容には、整備内容だけではなく、整備のし方や、維持・管理まで含まれる。住民との役割分担も、計画の大きな内容だと思っている。今は、これまでの「全て我々に任せて下さい」ではなく、「一緒にやりましょう」という姿勢でやっている。(河川管理者)

・21世紀はパートナーシップの時代である。20世紀は行政があらゆる問題を抱え込んでいたが、うまくいっていない。そこで、住民や住民団体、企業がどれだけの役割を担うことができるかが大きな課題となる。そのためには、行政はそのような方向に転換できるか、また、住民や住民団体は、受け皿となるために何をしていくべきか、が大きな課題となっている。(部会長)

・NPO活動という言葉がひとつのキーワードだと思う。行政は、住民の視点で地域の環境を考えることには不向き、不利な面がある。行政と住民をうまく、ハーモナイズすることが重要である。税金を行政が100%使うという仕組みは見直すべきだと思う。例えば、淀川の環境問題について行政は100%カバーできない。不足する部分にNPO等の組織が必要となる。行政は税金の一部をそのような組織支援に使うべきである。また、NPOであれば、川のことだけではなく、行政の枠組みを越えた、様々なことができる。

・今回、河川管理者が提出されたデータは、従来の行政が提出してきたデータとは異なり、住民の中にある不合理というテーマを含んでいる。住民が川を認識し、川と親しく付き合うためには、川や水だけではなく堤内地も含めたつながりがないと関心が持てない。そのため、国土交通省で河川の連続性をふまえ総合的にやっていくことが重要ではないか。

・住民自身がデータを持つことが非常に重要である。ただし、過去には住民が実施した調査結果をまともに受け取ってもらえなかった例もある。住民が自ら調査した結果を河川整備にどうつなげていくか興味がある。

・資料2−2、7ページの河川公園の将来像についてのアンケートの中には、「川を感じることのできる公園」という項目がなかった。現在の河川公園の存在そのものが、川の自然を感じさせないのだと思う。淀川の河川公園によって人々が、淀川を体感できるようになれば、住民自らのデータを持つということにつながるのではないか。また、高水敷にありながら水に浸ることのない現在のような河川公園の存在自体が、洪水等の危険意識を感じさせないようにしているのではないか。

・水質は数字で結果が現れるが、数字では現れない魚や植物についてのデータを住民が持つにはどうすればよいのか、考えている。

A目指すべき河川のあり方

・現在の水質調査では、表層水のみを調査しているが、中・下層水の調査も行って欲しい。水質が改善したといわれているが、木津川では河床に生息している貝やスジシマドジョウ等も激減しており、中・下層水は逆に、水質が悪くなったと感じている。国土交通省だけではなく、農林水産省や地域の住民も含めて、水質に加え生物の調査も行えばよい。今しなくては、知らない間に絶滅する生物が出てきてしまう。

・河川工学の人も生物に関係のない人も、川に入ると、川や生物から教わることがたくさんある。老いも子供も、誰もが川に入れる川づくりをして欲しい。また、川の自浄作用を活かせる川づくりもして欲しい。現在の河川整備は実際に川に入っている人々と話をせずに実施しているのではないか。

・流域にはゴルフ場や石油スタンドが多数ある。産業廃棄物処理場からの垂れ流しについての報道もあった。ルールを守らない人もいるので、国定公園に指定して規制する必要がある。

・次の世代のためにも夢のある展開を皆さんの英知を集めて考えていくべきではないか。気持ちのゆとり、文化的意識を持つことも重要である。

・団員の減少や高齢化等、水防団の問題は由々しき状況である。これまでは幸いにして水防団が必死で出動するような状況がなかったが、これから、たとえ淀川本川が安全であっても、堤内地の内水氾濫や、支川の氾濫の危険はある。そのような時には水防団が必要であり、水防団の問題について、この流域委員会でも議論する必要があると思う。

・人によって自然の捉え方が異なる。これがこれからの川づくりの根底になると思うので、この部会において、各委員が持つ自然観について徹底的に曝け出して欲しい。

4.一般傍聴者からの意見

・現在の淀川の河川公園は国営公園であり、レジャー施設等がある広域を対象とした公園であるが、地域の住民が親しめる公園を目指すのであれば、国営公園という考え方を見直し、地区毎の公園という位置付けにする必要があるのではないか。(一般傍聴者)

・昭和40年以降、河川敷に広場やグラウンドを整備してきたが、若干の見直しが必要であると考えている。ただ、「スポーツ施設を整備しないから国営公園にする必要はない。」というのは違うと思う。淀川の河川を活かした公園を国営で整備し、広域から多くの人々に来てもらうことも意義があると考えている。(河川管理者)

・「地域を重視した公園だから国営ではなく地域で整備する」というのは、言葉が先行している。国営であっても地域を主体とするような公園は整備できるし、そのような動きもある。(委員)

・サッカー等のスポーツは、専用施設でやるべきで、河川の中でやるべきではないと思う。本来、河川は河川としての機能を果たすべき場で、できるだけ自然に戻すことが大切である。たとえ公園として整備するとしても、河川環境を勉強したり体験できる、自然豊かな公園として回復させることが、最低限の譲歩である。(委員)

・参考資料2、13〜15ページに私が所属する団体の意見が掲載されている。大阪府の水需要は水余りの状況にあり、大阪府が参画している5つのダム事業は利水の面では必要ないと考えている。再検討して頂きたい。(一般傍聴者)

5.次回以降の部会について

・次回、第8回部会は10月31日、13:00〜17:00の4時間で実施する。(部会長)

・各委員は、今後の部会で検討すべき項目や課題を庶務に提出して欲しい。次回部会までに庶務はそれを整理し、各委員に配布する。各委員から出された検討項目・課題について、10月以降の部会で順次、議論していきたいと考えている。12月中にはその内容をある程度整理したい。(部会長)

・次回部会でも委員からの話題提供をお願いしたい。動物、植物の状況や水質等も含め、どのような河川整備のあり方が望ましいか、どのような整備が考えられ、そのプラス、マイナス面は何か等、まとまった形で発表して頂ければと考えている。(部会長)

以 上

 

 

注1:速報は、会議の概要をできるだけ早くお伝えするものであり、随時修正される可能性があります。なお、議事内容の詳細につきましては議事録をご確認下さい。最新の速報及び確定した議事録はHPに掲載しております。

注2:委員名については、情報提供を行った委員のみ記載しています。

 



 

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