神戸市中央区

地域住民と自治体とがコミュニケーションし、
情報共有してきちんと対策を取る

 当時、大倉山の神戸医師会館でレストランを経営しておりまして、その日は、学会があって、先生が300名くらい集まっていました。学会のあとお食事される方もいるというので、それなりの用意はしておったんですが、朝から降っていた雨が、お昼ごろには経験したことのないような、それこそバケツをぶちまけたような雨になっていて皆さん外に食事に出られなくなって全員が殺到したんです。
 宇治川が氾濫してひどいことになってるってことは聞いたんですけど、レストランから離れられなかった。だから現場に遭遇したわけではないんです。今なら自治会長をしているので、周辺を見回りに行くだろうけど、当時は商売のことしか考えていなかった。
 ただ、後からですけど、宇治川商店街の南端、高架に出る前の角にあった3階か4階建ての薬局のビルが傾いていたのを現認しました。水害でビルが傾いたのは珍しくて驚きました。
 当時は宇治川の水門がちゃんとできていなかったので、上から流れてきたのがつまって何度か氾濫していたんです。昭和13年のときも山の上の牧場から牛が流れてきたなんてことを聞いていました。それからやり直したんやと思います。山の上にも砂防ダムとかできてますよね。
 自宅は花隈にありまして、ここは坂も急で水が流れていくので被害はありませんでした。余談になりますけど、活断層もこの下はきれているらしく大震災の時もたいした被害はなかったんです。昔、花隈城ってのがあったんですが、昔の人は地形をよく知っていましたよね。
 昨今のゲリラ豪雨については、昔も兵庫区の方は雨が降っていても、中央区は降っていないってことがよくありましたが、雨の降り方が極端になってますよね。
 被害に遭ったときに身を守る術を皆が知っていないとあかん。そのためには、情報を発信していかないといけないと思います。知らないと危険なのか、危険じゃないのかの判断ができない。人任せにしていてはダメなんです。自分で気づいて行動しないと。そのためにもしっかり情報発信して知ってもらわないと。それこそ「備えあれば憂いなし」ということですよね。地域住民と行政とがきちんとコミュニケーションをとって、必要な情報を交換して、こういう場合はどうするとかきちんと対策をたてていないといけない。役場の人は現場で一所懸命働いているけど、それを周りの人は知らない。実際の体験談や被災の写真を見なかったら全然頭にはいらないでしょ。情報発信は大事ですね。特に中央区はタワーマンションが増えて、他所から何千何百人って入ってくる。若い世代が中心だが、ドーナツ化で一旦郊外に出た人が高齢になって通院とか買い物とかに困って、戻ってきてマンションに住む人も多いんです。そういった人たちは、なかなかマンションから出てきてくれない。マンションの管理組合で防災とかやってはいるんでしょうが、災害にあったときは外に出て避難所に行かないといけない場合もあるし、ゴミや交通など地域に関わって行政との窓口になっているのが自治会なので、その大切さをわかって欲しい、地域の自治会とつながって欲しいと頑張っているんです。消防が防災訓練とか避難所を作ったりいろいろやってますけど、それもどこに何があるか、いざという時にどういう行動をしたらいいのかきちんと伝えていかないといけないと思っています。