電子植生図鑑 六甲山の種多様性

はじめに1:構成種の要素に着眼する2:照葉樹の質に注目3:他地域のブナ林と比較

2:照葉樹の質に注目

遷移が進むと、原生林に戻っていくような気がします。
実際には、どうでしょうか。

六甲山の低海抜域は、人の影響がなければ照葉樹林が成立していた地域です。確かに、アカマツ林やコナラ林では、照葉樹林化が進んでいます。では、遷移の進行と共に、原生林の状態に戻ってきているのでしょうか?
ここでは、二次林における出現頻度の違いにより、照葉樹を4つの種群にわけて、六甲山の照葉樹の質をみてみます

好二次林種群 : 兵庫県南東部の二次林において、出現頻度が60%以上の種
二次林種群 : 兵庫県南東部の二次林において、出現頻度が20%以上、60%未満
準二次林種群 : 兵庫県南東部の二次林において、出現頻度が5%以上、20%未満
非二次林種群 : 兵庫県南東部の二次林において、出現頻度が5%未満

種群の区分は、次の文献に基づいています。
「兵庫県南東部における照葉樹林の樹林面積と種多様性,種組成の関係」
石田弘明・服部保・武田義明・小舘誓治(1998).日本生態学会誌48:1-16.

照葉樹の出現傾向

赤文字:六甲山のアカマツ林やコナラ林に出現した種
ランキング:六甲山系で調査した全地点に対する出現頻度ランキング上位50位に入っている種

←多い少ない→二次林に出現する頻度
好二次林種群 ランク 二次林種群 ランク 準二次林種群 ランク 非二次林種群 ランク
ヒサカキ
ソヨゴ
1位
4位
アラカシ
ヤブツバキ
ネズミモチ
ナワシログミ
ヒイラギ
アセビ
ヤブコウジ
ナガバジャノヒゲ
シュンラン
テイカカズラ
13位
14位
2位
20位
11位
10位
28位
サカキ
シキミ
カクレミノ
モチノキ
ヤマモモ
イヌガヤ
モッコク
ヤブニッケイ
ウバメガシ
カナメモチ
シャシャンボ
アオキ
マンリョウ
ヤブラン
ノキシンブ
トウゲシバ
ベニシダ
クマワラビ
ムベ
キヅタ
サネカズラ
 
32位
 
 
 
42位
 
18位
 
 
 
21位
コジイ
モミ
カゴノキ
リンボク

タラヨウ
ナナメノキ
ウラジロガシ
イヌガシ

イズセンリョウ
ジュズネノキ
ウチワゴケ
ホソバカナワラビ
コバノカナワラビ
キジノオシダ
オニカナワラビ
イタビカズラ
ツルグミ
 
 
24位
  • 六甲山でよく見かける照葉樹は、自然林よりも二次林に偏って出現する種が多いようです。
  • 「非二次林種群」のように、アカマツ林やコナラ林にはほとんど生育していない照葉樹もあります。