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四季:「天然アユの一生」
大阪府環境農林水産総合研究所水産技術センター 大美博昭氏

大阪湾の環境保全・改善と水産資源の管理・増殖技術についての調査や試験研究を行っておられる大美氏に、1年魚である天然アユが春夏秋冬どのような一生を過ごすのか、大和川で分かってきたことなどを示しながらお話頂きました。
アユの一生 大美氏の発表の様子の写真
アユの一生 大美氏の発表の様子

(天然アユの一生について)

アユの一生
  • アユの一生を簡単に要約すると、秋に川の下流域から中流域で産卵が行われ、生まれてすぐに海に下り、海で約半年近くを過ごした後、水が温む春になると川の中に向かって遡上を始めます。夏は川の中で成長しその後秋になると少し下り産卵し一生を終えます。
  • アユの一生の特徴は、寿命は1年で、あまり知られていませんがアユの子どもは半年あまりを海で過ごします。

(大和川の天然アユの場合)
【秋〜冬のシーズン】

大和川で生まれたアユも大阪湾にたどりついています
アユの子は大阪湾で育ちます
  • 大和川での産卵は11月から12月頃で、ふ化まで10日から数週間、水温により長くなったり短くなったりします。直径約1ミリの卵からふ化した仔アユの大きさは5〜7ミリで、お腹に卵黄という4日分くらいの栄養分を持って生まれてきます。この卵黄を持っている間は、エサを食べなくても生きていますが、卵黄を吸収し終える前に次の生活場所であるエサが豊富な海へたどり着く必要があります。
  • 2007年、大和川河川事務所ではどのくらい時間をかけて生まれたアユが大阪湾へたどり着くのか調査しています。河内橋と大正橋の間に産卵所があり、大正橋で午後7時からアユの子どもが入り始め、時間を追うごとに下流の橋で採れ始め、一番下流の遠里小野橋、河口から4.4キロの場所には大正橋で午後7時に採れた仔アユが約6時間後に到達していたと考えられます。
  • 大和川ではふ化して1日から2日後、卵黄が吸収する前には大阪湾にたどり着いていると考えらます。河内橋から下流は人工の堰がないため割とスムーズに仔アユは大阪湾にたどり着けるのではないかと思われます。実際に大和川の河口域で網をひくと流れてきたアユが採れ、海にたどり着いていることが分かっています。
  • 海に到達した仔アユは、川の流れにのり海へ出て、沖方向に数キロの川の水の影響が及ぶ範囲に主に分布することが各地の調査で分かってきており、中には生まれた川から十数キロも分散していく個体もあるという報告もあります。
  • 海にたどり着いた仔アユは海で1〜2センチに成長すると今度は砂浜や河口域に隣接する岸沿いの浅い波打ち際に移動してくることがわかっています。アユは日本を代表する魚のため、古くから調査・研究が行われていましたが波打ち際に寄ってくるという習性はなかなか分からず、80年代になって確認され、そこから「海におけるアユの生活研究」が飛躍的に進みました。
  • アユで有名な四万十川の河口に隣接する砂浜の他に、東京湾の人工海浜公園の砂浜でも波打ち際にアユの子ども達が多数集まってきていることが報告されていて、海で生活するアユの子どもの時期にとって浅場の保全はかなり重要であるということが指摘されています。
  • 大阪湾での調査でも、岸沿いの波打ち際で網をひくと1〜2センチに成長したアユの子どもが沢山採れています。淀川の河口では流下していたアユの子どもが徐々に成長していることが確認されていますが、大和川の河口では流れついた子どもが育っているのかまだ疑問符がつく状態で今後の調査が課題となっています。

【春のシーズン】

柏原堰堤を超えてさらに上流へ
  • 海で育ったアユの子ども達は、水が温む春になると河口に集まり川へのぼり始めますが、そんな稚アユにとって最大の障壁となっているのが堰堤で、大和川の場合、柏原堰堤のそばで飛び跳ねる稚アユが過去にも観察されていましたが中々越えることができなかったようです。そこで河川事務所で魚道を新設したところアユ、ウナギ、モクズガニといった海と川を行き来する生物が魚道を利用し、下流から堰堤の上流へ上っているという結果が得られており、こういった魚道づくりや上流へアユを上らせていくことも今後重要になってきます。

【夏のシーズン】

  • 河川での生活では、縄張りを持つようになり、侵入者は威嚇して追い出すなどして自分の縄張りを守りエサを独占するようになります。この習性を利用したのがアユの友釣りで、アユが戻ってくれば大和川でもこの光景が見られるかもしれません。アユは石についたコケをはんで食べます。アユが生息している川の石を見るとハミ跡がついており、どれだけアユがいるのかという指標にもなっているそうです。

【秋のシーズン】

アユの産卵が確認された場所(河内橋付近)
  • アユの産卵は場所を選び、浮き石状態の砂利底からなる瀬に形成されるため、少し砂利があり、浮いた状態で石が乗っているとアユが寄ってきて産卵します。そして石の隙間とか砂利の隙間に卵が入り、卵が守られるのです。これに対して隙間がなく硬く締まっている場所だと卵を産んでも表面にのるだけなので、流されたり、他の生物に食べられ生き残ることができません。

(つながりつつある、大和川〜大阪湾)

  • 産卵や仔アユの流下が確認され、天然アユが遡上し、魚道も作られるなど、だんだんと大和川でのアユの一生のピースがひとつずつはまりつつあると感じています。今後、こういう活動を近隣河川とも情報交換しながら活動していければ、、大和川にもっと天然アユが戻ってくるのではないでしょうか。

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