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夏のテーマ:アユはさらに上流にのぼり成長します
「手づくり魚道からはじめて」 芥川倶楽部代表 田口圭介氏

淀川の支流、芥川の下流で天然アユの遡上を確認したことから、行政と市民による魚道づくりがスタート。試行錯誤と悪戦苦闘を繰り返し、みんなで作った魚道にアユやいろんな生き物が戻ってきたようすについて、市民だから出来る活動の取組みを芥川倶楽部の田口さんからお話頂きました。
田口氏の発表の様子の写真
田口氏の発表の様子

(芥川について)

  • 大阪府高槻市
    芥川は淀川水系の支川で、淀川の河口から25km上流に芥川の河口があります。支川のため直接海とはつながっておらず、川幅も下流で30〜40mで上流は標高300m程、原大橋までは山地渓流で落差約200m流下し、そこから盆地になりまた摂津峡という渓流を約2km経て淀川の河口まで非常に勾配が緩くなっています。下流域では土砂の堆積も多く、天井川を形成しています。
  • 水質は70年代の高度成長期に高槻市は年間2万人程の人口増加があり、新しい住宅地からの家庭排水が山川を経て芥川に入り込み、中流〜下流部のかなりの汚染源になっていました。芥川の一番下流の鷺打橋と上流8kmの摂津峡下の塚脇橋の2地点の年平均BODを比べると、汚染源の少なかった塚脇橋では平均2ppm以下でしたが鷺打橋の濃度は5ppmを越えており、中流からの家庭排水と下流の支流から工場排水も入り、両方の影響で下流の水質汚染はひどい時期がありました。その後下水道整備や工場排水の規制とともに水質も改善され、最近では下流も2ppm以下で大変きれいな状態になりましたで。アンモニア濃度も、鷺打橋で無機窒素(T-N)で0.5ppm程度で、高くても1ppmの間を推移しており、アユの遡上には問題ない濃度だと思います。
  • 芥川の上流1キロの所は流れも緩く底は泥も多く、2.5kmの辺りがアユが産卵しているのではないかと言われていますがまだ確認できていません。底は適当な砂と砂利があり浮石は少なく少し硬い状態です。上流6km地点では夏季、特に水量が減り底も硬い石で8.5kmあたりは早瀬もあります。
  • 経緯
    芥川は下流の芥川大橋から塚脇橋まで大小10個くらいの落差工があり、城西橋までが国土交通省の管轄区域、そこから上が大阪府の管轄区域の河川になっています。アユが遡り一番最初に出会う落差工が芥川大橋上流にある高さ2.2mの堰で、毎年この下までアユは来ていましたがこの落差工が障害になっていました。丁度平成16年に市民団体と、行政がこの場所に同席し、天然アユを確認したことが契機となり市民、行政共にアユをシンボルにした、自然豊かな芥川の創生を目指すことになり、平成17年7月7日の川の日に「芥川・ひとと魚にやさしい川づくりネットワーク」が誕生、通称、芥川倶楽部はここから運動が始まりました。

(芥川倶楽部の取り組み)

  • 実験魚みちづくり(芥川大橋上流)
    活動は、落差工下までアユが来ているのに何故上れないのだろう、上らせたいなというみんなの想いが一緒になり、専門家を集め魚道部会を作り検討しました。そして最初の試みで大阪府の管轄区間の門前橋の落差工で手づくりによる土嚢を積んだ魚道を作りました。どうすれば流れが緩やかになるのか、プールはどの辺にしたらよいか等試行錯誤しながら作り、土嚢による初の魚道は大雨で無残に流れましたが、作る過程でそれまで会話のなかったおっちゃんがスコップの使い方や土嚢の担ぎ方などを教え若者の尊敬を一気に集めたりと、辛かいこともありましたが連帯感も生まれ非常に楽しい貴重な時間でした。市民運動の川づくりは楽しくないと“運動”は続かないと思います。そういう意味で、土嚢で魚道を作るというのは非常に楽しいイベントでした。
  • 実験魚みちづくり(門前橋下流)
    次に門前橋の経験を生かし、少し下流の3段の落差工のあるJR下流でも取り組みました。ここも雨で土嚢が流れましたが、小さい土嚢を1トン袋に詰めるべきだったとか、どういう風に土嚢を固定するかとみんなで学ぶよい経験になりました。これら経験と実績で、国土交通省の了解を得て、一番下流の2m20cmの落差工のところで手作り魚道をつくることになり2500袋を用意しました。この時も雨で流れましたが、再作業を行い平成18年6月16日、念願のアユの遡上が確認されました。しかし、次に問題となったのが遡上したアユが天然か放流されたものかということで、芥川では上流に漁業組合があり琵琶湖のアユを放流していたため、どちらのアユか確認ができなかったのですが、遡上したアユを漁業組合に見てもらった結果、放流アユはもっと大きい、天然アユだろうと結論が出ました。その後、この成功で大阪府が予算をとりJR下流の魚道づくりを本格的に行うことになりました。
  • 芥川創生基本構想の3つの目標
    その活動において、基本的な方針が必要になり平成18年(2006)の9月に芥川倶楽部と大阪府、高槻市で芥川創生基本構想を作り、3つの目標を「多くの命を支える川」、「清らかな水が流れる川と安全なくらし」「楽しみ憩う」と定め、川作りの仕組みを作っていくことになりました。これは市民と協働でいくつか取組んでいく中でNPOを作り活動拠点の整備が進んできました。

(本格的な魚道づくり)

  • 門前橋の魚道
    自然創生の基本構想の中で大阪府が予算をとり芥川倶楽部で一緒に進めてきた2つの「サカナミチ」を紹介します。「門前橋魚道」は最初に土嚢をみんなで積み実験した場所は魚道は落差75cm、長さ11mほどあり、50cmくらいの小型のブロック(38kg)を1736個使い専門家が積上げました。特徴は流路を緩やかに湾曲させ、プールをどこにするかとみなで検討しました。これは土嚢の思想の延長で設計変更が簡単に行え、最終的にはアンカを打って固定しました。成果として、オイカワ29匹が魚道下におり、魚道設置後上で41匹に増えたのでみんなで検証した結果、設置前から魚が安心して棲みやすい場所だったようで、実験前にいた魚が休みながら、生活しながら上がってきたものがデータに出てきたようでした。台風1週間前の増水した時にも定置網を置きデータをとりましたが専門家からもよい魚道だとお墨付きを頂きました。
  • 最近出来た「正恩寺橋魚道」ですが、魚もよく上がっており後はアユが遡上するかが問題ですが、国土交通省が計画した魚道工事が始まっています。今年3月に完成し、6月にアユが上ってくれば「アユちゃんお帰りな祭」という大イベントを実施しようと思っています。

(今後の課題)

  • こうして市民と行政による魚道づくりは試行錯誤を繰り返しながら、一応成果が出ています。現在残されている課題は、魚道後の検証と、外来魚も上がってくるという問題です。下流にはブラックバスもブルーギルもおり、モニタリングを当然していく必要があります。アユについては産卵場の確認および整備や餌環境の調査など必要です。また、魚道を作っても水がない川では生き物にも影響するため、水利権者との話し合いも必要になります。そして、我々が取り組んでいるクリーンナップや外来種のミズヒマワリの駆除の問題などです。
  • 最後に、川づくり運動は行政が参加しないとできません。これまでの活動が上手く進んできたのは行政の方々の熱意のおかげだと思います。これからも関係性づくりを大切に取り組んでいきたいと思っております。

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