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秋のテーマ:産卵して生涯を終えます
「武庫川のアユの産卵場造成について」
兵庫県宝塚土木事務所 前田優夫氏

武庫川では河川整備計画の中でアユをシンボル・フィッシュとして位置づけ、関係機関や地域住民の参画と協働のもと、アユの数を増やすべく「武庫川探検隊」を結成しアユの産卵場の造成に取り組みました。取り組みのようすとその結果について、宝塚土木の前田さんからお話を伺いました。

稚アユ

前田氏の発表の様子
前田氏の発表の様子

(武庫川について)

  • 武庫川地図
    武庫川は兵庫県南東部に位置し、上流は丹波山地から大阪湾へ注ぐ約65,7km流域面積、約500km2の川です。上流は勾配が緩やかな河川ですが、真ん中、河口から約30キロ辺り、六甲山系から狭められた峡谷で勾配がきつくなりその後、平地に出てきて緩やかになる河川形態です。武庫川のアユは下流から、約20kmの辺りで調査を行いました。その間下流から潮止堰、床止めが約11基、取水堰が5基あります。大和川と似たような都市部を流れる河川で上流部は田園地帯で下流部は住宅街を流れる河川です。

(アユの産卵場づくりについて)

  • 機械による造成
    武庫川は河川整備計画で、アユをシンボルフィッシュと位置づけていることから平成21年から3年を目処に、アユの分布調査を行っており産卵場、稚アユの降下等も合わせて調査を実施しました。その中で産卵場の状況が良くないという報告があり、できることから始めようと武庫川漁協さんと協働で産卵場の造成をすることになりました。2010年10月3日(日)、兵庫県の「県立人と自然の博物館」の田中先生と三橋先生の指導のもと、朝から生き物観察会を行いその後産卵場の造成を住民参加で行う予定でしたが前日の雨の増水でイベントは中止となり、アユの産卵場の時期が限られているため、漁協さんと県、民間関係者十数名で、10月13日(水)に関係者だけで産卵場の造成を実施しました。
  • 人力による均し
    実施場所は河口から約4.2kmの2号堰堤の下流で昨年度も一部で産卵の実績があった場所の隣接地で計画しました。作業は重機を入れ流れと直角方向に行き来し、石の間にかんだ泥や砂を下流に流しました。この場所には中州があったのですが水量を確保したかったので中州の部分の土の移動をし、造成部分の水を増やすことを検討しました。
  • 均し後の河床
    機械で均したあとは人による敷き均しで、野球のグラウンドで使用するトンボを使用し、最後機械で均しきれないキャタピラの跡や産卵場が平らになるよう人力で均していきました。産卵場の造成した範囲は約500m2くらいで、去年は造成場所のすぐ上流辺りで、数は少なかったのですが産卵が確認されましたのでその部分を残し、下流で人工の造成をかけました。
  • 産卵場を作る前は、石の間に砂がしっかりと詰まり、コケもしっかりと張り付いていましたが、造成後は砂と石をほぐしたので浮石が増えたのですが、産卵場とすれば大き目の石が少しありすぎたのかなと思いました。しかし、大きい石や粒度調整をしようとするとだいぶ手間がかかるので結果的には砂、ヘドロを流して平らに流しただけ、という作業内容になってしまいました。しかし、産卵の数からすればまだまだ不足があったと思います。

(取り組みの結果)

  • アユの卵
    産卵調査は秋に2回、10月と11月に行いある一定の成果が出ました。データ的には水深、水温、流速、埋没深ということで一応、産卵場はふかふかの砂利状態がよく、理想としては水深が30cmから50cmくらいで、水温も20℃以下くらいが産卵には向いています。流速も毎秒50cmから毎秒70cmくらいが産卵には適しており、昨年の産卵の実績からも検証し、理想に近い状態の産卵場の場所の選択、造成ができたのかなと思っています。
  • 産卵調査
    産卵場造成後のモニタリングですが、水がほしいために土を動かした場所がたまたま産卵に適した場所になったのか、その場所で48万個くらいの産卵が確認されました。それ以外の場所でも、6万4600個とそれなりの産卵が造成した場所で確認されました。
  • 生まれて4日以内に海に辿りつかないといけない仔アユですが、今回の産卵場は河口から約4.2kmくらいの場所で、これより上流には井堰なり床止めが結構たくさんあり実際、これ以上の上流では産卵は確認されてはいません。それらから検証しても今回造成した産卵場は理想に近かかったようで、アユは本能的にこの場所を産卵場に選んでいるのかなと思いました。

(今後の目標)

  • 産卵調査結果
    来年度は今年の結果を踏まえ、場所や、面積を広げたりしながら、専門家と相談し、いろんなパターンのデータ蓄積をし、地域のみなさんとアユを増やしていきたいと考えています。春に群れをなしてアユが遡上する武庫川を目指したいと思います。

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