HOME 大和川の水環境 改善への取り組み 水環境改善活動発表・交流会2011 【まとめ】解説大和川の天然アユに関するノート

大和川の水環境

さらなる改善へ向けて

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大和川天然アユ研究会会長
大阪教育大学名誉教授 長田芳和先生

「大和川天然アユ研究会」は流域市民、大学、行政が協働し持っている知恵、情報を統合し、天然アユを都市河川大和川にもう再生するために集まったグループです。その最初の立ち上げで「大和川の天然アユに関するノート」を編集しました。本日の活動発表・研究・交流会で発表された取り組みや課題等を参考に、大和川の天然アユの産卵場の造成や水環境づくりについて産・官・学・市民の方々と相談しながら進め、「大和川の天然アユに関するノート」の内容もより精度の高いものに仕上げていきたいと思っています。
大和川天然アユ研究会会長:長田先生の様子
大和川天然アユ研究会会長:長田先生より
大和川の天然アユについての説明がありました

(過去のアユの遡上記録について)

  • 大和川の天然アユに関するノート
    大和川の天然アユがどこまで遡上していたのか、1937年、昭和12年の報告では王寺町付近まで数は多くはないのですが確かに上がっていたという記録があります。それから、昭和25年水産技師の方の報告でも大阪府から奈良県の境にある「亀の瀬」で確認したという記録があります。その後1965年、昭和40年くらいから天然アユの遡上が急激に減り、あまり減るので昭和42年、昭和43年に渡り王寺町の漁業組合の方がアユを1万尾ずつ放流しましたが、すでに水質が悪く全く釣れなかったという記録が残っています。なお昭和29年に柏原堰堤ができましたが、アユは増水時にそれを乗り越えて遡上していました。しかし、1970年、昭和45年くらいになると水質の関係でアユの確認はできなかったということです。

(天然アユ遡上の可能性について)

  • 大和川の本川で4万2千平方メートルの早瀬があります。アユは生長盛りの時に、早瀬の1平方メートルに1〜2匹の縄張りを作って生息しますので、大雑把な計算ですが本川には4万から8万尾が生息可能なのだと推定できます。大阪湾から遡上した稚アユのうち10%が生き残り早瀬で生育すると仮定すると、40〜80万尾の稚アユが遡上してほしいということになります。支川の石川(ダムができる前)についても同じ様なやり方で計算すると早瀬の面積は2万平方メートルで、同様に計算すると2〜4万尾くらいが生息可能です(大和川の天然アユノート22頁参照)。支川にはきれいな水が流れ、アユが食べるコケがついた石がたくさんあります。石川や竜田川などの支川を天然アユの生育に使えるように水環境を整えていくことが将来に向けた大きな課題であり、私の夢です。

その他参加者から寄せられたご意見

(漁業の観点からの大和川と大阪湾)

  • 各発表を受けて会場内でいろいろな意見交換が行われた様子
    各発表を受けて会場内で
    いろいろな意見交換が行われました。
    大和川の漁業者として、アユの回復も大事ですがその前に砂に「虫」、例えばゴカイとかシジミとか、そういう微生物の棲める様な砂地が先決問題ではないのかなと思います。昔、大和川ではいくらでも貝類が獲れました。自然はいつでも生まれ変わろうと必至で、例えば埋立地の失敗でできた砂地に大きなアサリが戻ってきています。環境さえあれば自然は回復するのです。今、一番たくさん増えたのがモクズガニです。川がやっぱり良くなってきたのだなと私らは判断しております。
  • アユの生息する場所で一番私が一番記憶に残っているのは安治川です。安治川にアユが多いのは、スズキが多いからだと思います。また、大阪湾は本当に母なる海で栄養分が多くチヌダイ、アナゴ、ウナギなど成長が倍早いです。特に、大和川から淀川にかけてのアナゴはずんぐりむっくりで成長していきます。それぐらい、大和川の水と淀川の水は重要だということです。

(大阪湾の再生を)

  • 大和川の上流の奈良県に住んでいます。飛行機が関空に着陸するときに大阪湾が見えますが、大阪湾で獲れたナマコや太刀魚をお金を払って自分らの口に入れる以上、大阪湾をもっときれいにするために私達奈良県の人間も、もっと水をキレイにしないとアカンと思っています。この川の流れていく先は大阪湾だからとたびたび説明しているのです。そこでご提案ですが堺には、立派なグリーンランドがあり、そこに太陽光発電の技術を持っている工場があります。太陽の光でできた発電の電気の力を回転のモーターに変え、圧縮空気を作り大阪湾に送れば、海草や魚が育てられるのではないかと、行政、地元の堺市民の方々が協力してアイディアを持っていってほしいと思います。

(大和川でアユの産卵場造成のアプローチを)

  • 提案ですが大和川は実際、結構砂が多い川で産卵場が少ししかありません。ただ、河内橋の下流や浅香付近で、少数ですが産卵していることが確認されています。そこで、河内橋辺りで秋に重機ではなく人力でも産卵場造成に取り組んでみる価値はあるかな、と今日のお話を聞いて思いました。市民団体の方と行政が一体となり、「都市河川大和川」をどう再生するかの典型的なアプローチではないかと思います。

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