江戸時代の砂防

(A)山腹工

山崩れなどで荒れた山の斜面を階段状に仕立て、松やヒメヤシャブシなどの苗木を植えて、その根の力で斜面を強く丈夫にします。芝積苗工、ブロック板積工などの工法があります。

(B)砂防ダム

土石流の防止にもっとも効果的だといわれています。豪雨などで河川の水量が増えて土砂が一度に流れ出したとき、大きな岩石をとどめ、水や細かい土砂を少しずつ下流へ流します。

(C)流路工

谷の出口部分の平地は、土砂が堆積して川底が平地より高くなった天井川が多く、氾濫しやすくなっています。水がスムーズに流れるように、川の流れを直す改修工事を行います。

江戸時代の砂防

河村瑞賢
河村瑞賢
江戸時代になると、土砂の流出による水害がたびたび発生して、流域に大きな被害をもたらしました。幕府は、寛文6年(1666)に草木の伐採や山の焼き畑を禁止し、裸地に苗木を植えることを定めた「諸国山川掟(しょこくさんせんおきて)の令」を公布して、山林保護に乗り出しました。また、天和3年(1683)の大水害の後、当時の有名な土木家、河村瑞賢の指導のもとで本格的な砂防工事が行われました。

石垣留

石垣留…

砂防ダムの原形の一つで、常時流水のある谷間に設けます。川底に直径30cm以上の松丸太を敷いて、上に石垣を高さ2m程度に積み上げ、裏に小石を厚さ90cmほど詰め込み、さらに粘土を混ぜて突き固めます。



杭柵留

杭柵留…

崩壊した土砂の流出を防ぐために、傾斜のゆるやかな山の斜面に設置します。山腹に45cm間隔に杭を打ち並べ、割竹などで高さ45cmほどの柵を編みます。



蒔わら工

蒔わら工…

山の斜面をわらでおおい、土砂の侵食をおさえ、凍結を防いで草木を発生しやすくします。わら束の穂先を結び、そこへ竹串を打って山腹に固定し、根本を下にして扇状に広げて山肌をおおいます。



飛松留

飛松留…

裸地山に松を植えて、緑化をはかります。山地に75cmずつ間隔を置いて、縦横15cm、深さ9cmの穴を掘り、そこへ土厚6cmの根土ごと掘り取った高さ45cm程度の自生の松を植え込みます。



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明治・大正時代の砂防

明治6年(1873)には「淀川水源砂防法」が制定され、オランダ人技師らの指導のもと、瀬田川流域でも大規模な砂防工事が進められていきます。大正時代になると、多くの技術者たちの努力により、砂防ダムの建設や流路工、山腹工などが施工され、その志は現在まで引き継がれています。
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現在の砂防

現在では砂防技術も発達し、さまざまな新工法が開発されています。田上山(たなかみやま)においても苗木の植栽を中心とした山腹工が進められ、荒れていた山も見違えるほど緑がよみがえってきました。環境保全が地球規模で問題となっているいま、日本の砂防技術はますます重要な役割を果たすものと期待されています。
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