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3.3 洪水年表

明治時代以降における洪水および土砂災害記録を、年表としてまとめると表2.1.7のとおりである。

表2.1.7(1) 洪水および土砂災害

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年代 記事
年号 年月日 西暦
明治 元. 1868 6月6日と22日に大出水、8月1日にも大出水で不作。
8. 1875 大洪水。東岸各村堤防決壊し、下流の村11ヵ村が水害。家屋、人や家畜に被害甚大。
14.5. 1881 5月より6月にわたり九頭竜川暴溢。被害多し。
18.6.30~7.8 1885 諸川氾濫越水。溺死者数名。福井市街殆どが浸水。既往20年来の大洪水といわれ、破堤、浸水の被害が大きかった。死傷者3人、堤防切所6,678間、決壊12,670間、田畑の流亡92町歩、浸水面積2,367町歩 建物流失6戸、建物破損1,244戸
・量水標最高水位
九頭竜川本川 吉田郡森田村稲田 17尺8寸(約5.39m)
日野川 丹生郡吉野村家久 13尺 (約3.94m)
足羽川 福井市佐佳枝上町 11尺5寸(約3.48m)
28.7.28~8.6 1895 7月24日~8月6日まで連続降雨、特に7月28日および8月5日の豪雨により諸川が氾濫する。越前平野は泥海と化した。福井市では、2/3が浸水した。県内では遠敷・大飯の2郡を除くほかは、未曽有の被害となる。南条郡河野村、今庄村などでは山地崩壊による死者がでる被害が発生した。被害は死傷者86人、流失・全壊家屋244戸、浸水家屋26,920戸、堤防決壊73,783間、堤防破損35,038間、田畑・宅地等の浸水面積16,556町歩。
・量水標最高水位
九頭竜川 吉田郡森田村稲田 18.4尺(約5.58m)
日野川 丹生郡麻生津村三尾野 22.7尺(約6.88m)
足羽川 福井市佐佳枝上町 11.9尺(約3.61m)

・総雨量
九頭竜川 大野町 806mm(7月28日~8月6日)
日野川 今庄 650mm(7月28日~8月6日)
足羽川 福井市 346mm(7月28日~8月6日)
29.8.30~9.7 1896 雨は8月30日以来降り続き、9月7日の明け方より九頭竜川本川、日野川、足羽川の3河川ならびにその他の河川で急激に増水し、溢水、決壊、氾濫した。稲の開花中で農家の被害は多大。福井市は濁水に埋まり、浸水位は床上6尺以上となった。
被害は死傷者96人、流失・全壊家屋1,197戸、浸水家屋47,796戸、堤防決壊35,942間、堤防破損70,930間、田畑・宅地等浸水面積29,883町歩。
・量水標最高水位
九頭竜川本川 吉田郡森田村稲田 17.5尺(約5.30m)
河合村中角 24.7尺(約7.48m)
日野川 丹生郡麻生津村三尾野 23.7尺(約7.18m)
足羽川 福井市佐佳枝上町 13.2尺(約4.00m
・総雨量
九頭竜川 大野町 557mm(8月30日~9月11日)
日野川 今庄 656mm(8月30日~9月11日)
足羽川 福井市 434mm(8月30日~9月11日)

表2.1.7(2) 洪水および土砂災害

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年代 記事
年号 年月日 西暦
明治 32.9.6~ 9.8 1899 明治28、29年の水害に次ぐ大災害である。雨は9月6日より降り続き、8日午前より暴風となり各河川とも一時に出水、越水、破堤、氾濫した。
被害は死傷者5人、流失・全壊家屋15,346戸、耕地流失面積1,510町歩、田畑等浸水面積68,232町歩。堤防決壊30,501間、堤防破損21,015間、
・量水標最高水位
九頭竜川本川 吉田郡森田村稲田 20.0尺(約6.06m)
日野川 丹生郡麻生津村三尾野 23.4尺(約7.09m)
足羽川 福井市佐佳枝上町 12.7尺(約3.85m)
・総雨量
九頭竜川 大野 220mm(9月6日~9月8日)
日野川 今庄 376mm(9月6日~9月8日)
足羽川 福井市 232mm(9月6日~9月8日)
35.7.14 1902 福井の降水量は14日に193.6mm。中小河川が増水氾濫。九頭竜川と足羽川が最も甚しく増水し、大土呂~森田間の鉄道不通が2日にわたる。福井測候所構内の浸水2~3尺(0.6~0.9m)。
36.7.9 1903 大雨で各河川増水。日野川及び足羽川で破堤。今庄187mm
9.8 木田村下馬に大洪水。死者1名、流失家屋11戸、田畑10町歩不毛に帰す。
大正 元.9.21~9.23 1912 台風による洪水で、九頭竜川流域での被害が甚大。被害はほぼ全県下に及んだ。
流失・損壊家屋120戸、浸水家屋1,026戸、
堤防決壊6,947間、堤防破損8,347間、田畑浸水面積6,011町歩、
田畑流失・埋没面積193町歩、山崩れ19ヵ所。
・総雨量
九頭竜川 大野  198mm(9月21日~9月23日)
日野川 武生 113mm(9月21日~9月23日)
足羽川 福井市 104mm(9月21日~9月23日)
14.8.16 1925 大野郡の山間部に豪雨、九頭竜川で大増水。下荒井橋が流失。
昭和 8.7.25 1933 日本海を通過した台風と、それに刺激された前線による大雨により、各河川は平均5m増水し、各地に被害をもたらした。
福井では、25日22時から26日22時までの24時間降水量が201.4mmという記録的な降雨となった。
9.7.10 1934 九頭竜川本川、支川7~9尺(2.1~2.7m)増水。打波川橋流失、堤防決壊あり。
17.9.19~21 1942 台風による総降水量は福井186mm、三国224mm、勝山199m、大野219mm。床上浸水家屋110戸、床下浸水家屋640戸、田畑浸水1,100町歩等の被害が発生。

表2.1.7(3) 洪水および土砂災害

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年代 記事
年号 年月日 西暦
昭和 23.7.23~25 1948 6月28日に発生した福井地震によって、坂井平野の各河川の堤防が陥没・崩壊など致命的な打撃を受けた所に、7月23日よりの前線による大雨で九頭竜川本川・支川とも増水し、左岸灯明寺地先で破堤。福井市街地の北部一帯が浸水した。また右岸木部村池見付近で堤防が決壊し、兵庫川左岸堤防まで濁水が達した。
26.2.28 1951 南の暖風強くなり、降雨と相俟って融雪洪水が生じ、九頭竜川本川および日野川、足羽川の各川は急激に増水、警戒水位を突破。道路、護岸の決壊、根固、水制などが流出するなどの被害が生じた。
7.2 ケイト台風と梅雨前線により、短時間に強い雨が降ったため、河川は急激に増水し被害が多かった。
28.3.11 1953 低気圧の日本海通過によってもたらされた降雨のため、九頭竜川水系の山岳地帯で融雪が起こり、河川は増水し道路が各所で決壊、護岸・根固工の流失などの被害を生じた。
28.6.6~8 台風2号の影響で前線活動が活発となり、奥越で100~150mmの大雨となる。死者2人、床上浸水5戸、床下浸水206戸、田畑冠水4,783町歩、山崩れ9ヵ所等の被害が発生。
9.23~25 前線をともなった台風13号による暴風雨で、九頭竜川流域の日野川および嶺南地方の南川、北川で大災害となり、4市7町38村に災害救助法が発動された。日野川では各所で破堤、越水したが特に日野川右岸三郎丸地先の破堤によって福井市西北部の一部を泥海化した。
死者・行方不明者13人、負傷者256人、流失・損壊家屋1,252戸、被害は床上浸水家屋9,517戸、床下浸水家屋8,110戸、非住家被害1,061戸、罹災者数85,338人。
33.7.25 1958 前線の活動によって、25日の夜から26日の朝にかけて北部の竹田川、権世川流域に200mm上の集中豪雨があり、被害が発生した。
33.9.10 14時~19時頃、九頭竜川本川中流域と足羽川中流域の山間部で、雷をともなう局地的大雨が降り、芦見川流域に被害が発生した。
34.8.12~14 1959 8月12日からの前線と、13日夜からの台風7号による豪雨により洪水ピークが二度発生する2山洪水となり、九頭竜川本川布施田で計画高水位を、また九頭竜川本川中角、日野川深谷で警戒水位を越え、堤防の破堤、決壊が続出し、被害の大きかった福井市、森田町、清水町、鯖江市、今立町に災害救助法が発動された。死者・行方不明者2人、負傷者1人、流失・損壊家屋54戸、床上浸水家屋5,542戸、床下浸水家屋7,347戸、罹災者数54,516人。
34.9.25~26 伊勢湾台風(台風15号)による豪雨で、雨量は嶺南東北部と西部の山地に多く、各河川とも計画高水位を越えるか、またはこれに近い増水となり、九頭竜川本川布施田、中角では計画高水位を、日野川深谷では警戒水位を越える出水となった。特にに和泉村大谷では、2時間降水量104mm達する強雨のため、和泉村では鉄砲水となって一瞬にして20数名が流死した。
被害は死者・行方不明者34人、流失・損壊家屋99戸、床上浸水家屋1,517戸、床下浸水家屋5,031戸、罹災者数31,616人。

表2.1.7(4) 洪水および土砂災害

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年代 記事
年号 年月日 西暦
昭和 35.8.29~30 1960 前線と台風16号により、29日から30日午前中にかけて、大野郡和泉村では時間雨量50mm前後の豪雨が続き孤立状態となった。この地方では、伊勢湾台風時と同じ最高水位となった。また、布施田・中角・深谷地点では警戒水位を越えた。山地で山崖崩れ10ヵ所発生。流失家屋2戸、浸水家屋109戸、田畑の流失・埋没・冠水148ha。
36.6.23~7.1 1961 梅雨前線と台風6号の北上に伴い、福井県内で300~600mmの降水量となる。福井の6月降水量は440.9mmとなり、明治30年以来の多雨記録となる。床上浸水69棟、床下浸水2,326棟、田畑冠水2,259ha、堤防決壊15ヵ所、道路損壊33ヵ所、崖崩れ50ヵ所等。
36.9.14~16 第2室戸台風(台風18号)によって、水源山間部が豪雨に見舞われ、九頭竜川本川下流の布施田および中角と日野川深谷が計画高水位を越える大洪水となった。福井と敦賀では明治30年以来の最低気圧を観測し、台風接近時の強風によっても大きな被害が発生した。
被害は流失・損壊家屋125棟、床上浸水家屋1,740棟、床下浸水家屋2,621棟。
39.7.7~9 1964 梅雨前線と台風5号くずれの低気圧による大雨で九頭竜川本川下流布施田では計画高水位を越え、中角および日野川深谷では警戒水位を越えるなど、流域各地で被害が発生した。
被害は流失・損壊家屋1棟、床上浸水家屋2,435棟、床下浸水家屋3,612棟。農地および宅地の浸水面積8,595ha。
40.9.8~18 1965 福井県の「40.9三大風水害」と名付けられた出水で、9月10日の台風23号、14日の前線による「奥越豪雨」、17日の台風24号と連続して県下全域に追いうちをかけ、大きな災害の爪跡を残した。特に「奥越豪雨」は、笹生川ダム本戸で1時間雨量89mm、日雨量844mmの集中豪雨を記録した。そのため、西谷村に壊滅的な打撃を与えた。「奥越豪雨」による出水は、九頭竜川本川下流布施田および中角、日野川深谷で何れも警戒水位を越えた。また、台風24号による出水は、日野川が大きく、深谷で計画高水位を越え、九頭竜川本川布施田、中角では警戒水位を越えた。
死者・行方不明者25人、重軽傷者126人。
47.7.9~12 1972 梅雨前線による9日夜半から15日まで降り続き、最も雨勢の強かったのは、11日夕方から夜半にかけての6時間で、総雨量の1/3である100mm程度の雨を降らせ、堤防の決壊、崖崩れなどにより、家屋などに被害が発生した。このため福井市、武生市、鯖江市、今立町、南条町などで災害対策本部が設置された。
床上浸水家屋96棟、床下浸水家屋1,580棟、農地・宅地等浸水面積1,347ha。
47.9.15~16 台風20号の大雨で、九頭竜川中角および日野川深谷で警戒水位を越えた。流域各地では、河川・砂防・道路など公共施設に被害が発生した。

表2.1.7(5) 洪水および土砂災害

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年代 記事
年号 年月日 西暦
昭和 50.8.22~23 1975 台風6号による大雨で、九頭竜川本川中角、日野川深谷では警戒水位
を越え、各地に被害が発生した。特に足羽川ではJR北陸線足羽川鉄
橋の橋桁が浸水し、一時不通となった。
今立町では災害対策本部が設置された。
被害は床上浸水家屋6棟、床下浸水家屋166棟、農地・宅地等浸水面積19ha。
51.9.8~13 1976 台風17号と前線により8日から10日にかけた大雨で、九頭竜川本川中角、
日野川深谷で警戒水位を越え、各地に被害が発生した。
九頭竜川本川上流の九頭竜ダムでは、竣工以来始めて洪水調節を行ったが、
中角ではダム完成後最高の8.88mの水位となった。
被害は床上浸水家屋10棟、床下浸水家屋369棟、農地・宅地等浸水面積72ha。
56.7.2~3 1981 梅雨前線と雷雨により、2日までに 100㎜を越す先行降雨があり、
そのうえ3日夜半からの短時間の大雨で、九頭竜川本川中角、日野川深谷では
警戒水位を越え、低地の浸水、山くずれが相次ぎ支川の小河川では氾濫や
堤防決壊の被害が生じた。
被害は全壊流失・半壊家屋21棟、床上浸水家屋624棟、床下浸水家屋2,356棟、
農地・宅地等浸水面積3,756ha。
58.9.26~29 1983 台風10号の大雨で日野川深谷で警戒水位を越え、日野川流域を中心に
各地で被害が発生した。
被害は床上浸水家屋5棟、床下浸水家屋292棟、
農地・宅地等浸水面積234ha。
平成 元.9.5~7 1989 前線の活動により九頭竜川上流で局地的な豪雨となった。
被害は床上浸水家屋6棟、床下浸水家屋381棟、
農地・宅地等の浸水面積約25ha。
元.9.18~20 停滞していた秋雨前線が台風22号に刺激され活動が活発となり、
福井市や武生市などで局地的な豪雨となった。
被害は床上浸水家屋1棟、床下浸水家屋329棟、農地・宅地等の浸水面積約22ha。
10.7.10 1998 7月10日に丹南地方で梅雨前線による豪雨があり、浅水川で越水氾濫した。
被害総数は床上浸水家屋68棟、床下浸水家屋506棟。
10.8.7~15 奥越地方で梅雨前線による豪雨があり床上浸水家屋8棟、床下浸水家屋99棟。
14日には吉田郡を中心に豪雨があり、流失家屋1棟、床上浸水家屋38棟、床下浸水家屋198棟の被害があった。
10.9.22 台風7号による豪雨。朝日町、織田町、宮崎村で、46棟が床上浸水し、
60棟が床下浸水被害を受けた。日野川深谷地点で警戒水位を越えた。
天王川が越水した。(平成10年福井県消防防災課資料による)
参考資料: 「福井気象台資料」 「福井県土木史」 「台風十三号災害誌(福井県)」 「40.9 三大風水害記録(福井県)」 「福井県史」および「各市町村史」 「九頭竜川の洪水関係資料(高橋信忠・廣部英一)」 「福井県災害速報」
参考資料
台風13号による被害の概況及び要望事項 昭和28年10月2日現在 福井県
台風13号災害誌 昭和31年3月 福井県総務部統計文書課
昭和40年三大風水害記録 昭和41年3月 福井県
災害の発掘ー風化する被災体験を求めてー 福井県
  福井県の気象百年 福井地方気象台・敦賀測候所 百年誌編集委員会:平成9年1月
福井県史
関係市町村史
福井県土木史 昭和58年5月 編集・発行:福井県建設技術協会
福井県の気象 昭和38年10月 編集:福井地方気象台 発行:(社)気象協会福井支部
九頭竜川の洪水関係資料 金沢大学日本海域研究所報告 第19号 昭和62年
著者:高瀬信忠・廣部英一
人文地理 Vol.20 No.2 1968 研究ノート
福井平野における水害の研究 宮越博輔