1. 概要

  九頭竜川流域は、山間部で年降水量が2,600〜3,000mmを超えることから、水資源に恵まれた流域である。しかし、地形が急峻であることなどから、豪雨時には一気に流出して沿川部に被害を与える一方、渇水期には水不足を生じる地域が出てくる。したがって、流域では古くから、豊かな水資源を合理的かつ効率的に活用するための施策が執られてきた。
  九頭竜川流域では、昭和32年(1957)完成の笹生川ダムと雲川ダムを皮切りに、九頭竜ダム、広野ダム、真名川ダムなどが順次建設され、平成10年(1998)末現在において小規模な発電用のダムを含めて13基が完成している。これらのダムを利用して、中島発電所など25発電所で最大出力約53万kwを発電し、水力を使った電力供給面でも大きな役割を果たしている。また、農業用大型取水施設としては九頭竜川鳴鹿大堰、松ヶ鼻堰堤、足羽川堰堤などの堰や頭首工があり、各々の施設が重要な役割を果たしている。
  しかし、これらの施設は、水需要との関係では必ずしも十分な供給力を備えていないのが現状である。それは平成6年(1994)の渇水の時に、日野川・足羽川流域での長期にわたる給水制限や農作物に被害が発生したことでも十分理解できる。特に、都市用水の地下水依存度は約85%と高く、地下水位の低下、取水量の減少などが生じており、河川水への転換が急務となっている。既存ダム施設のうち、都市用水を確保しているのは広野ダム(県営第一工業水道40,000m3/日)、笹生川ダム(福井市上水道80,000m3/日)、龍ヶ鼻ダム(坂井郡6町の上水道47,500m3/日)のみであり、今後は長期利水計画を十分考慮した、より効率的な施設整備が課題である。
  一方、農業用水の大部分を占める水田の灌漑用水は、豊水期には比較的安定して供給されているが、渇水期には取水の相互調整、反復利用、地下水の緊急取水など、臨時的措置での対応を余儀なくされている地域もあり、安定した水源の確保が必要となっている。すでに、河川の自然流量からの取水には限界に達しているため、今後の新規需要への補給を図るとともに、安定した水利用を確立するには、多目的ダムなどによる水資源の開発を一層促進する必要がある。
  そこで、九頭竜川流域においては、福井県の長期的展望に立った「福井県水資源総合開発計画」に基づき建設省、農水省、福井県、電源開発梶A北陸電力鰍ネどによって、洪水調節、河川の流水の正常な機能の維持、都市用水および灌漑用水の開発、電力開発などを目的とした多目的ダムの調査・建設を実施している。
  九頭竜川流域の管理中および建設中のダムは、図4.3.1に示すとおりである。

図4.3.1 九頭竜川流域のダムと発電所
図4.3.1 九頭竜川流域のダムと発電所

表4.3.1 九頭竜川流域のダム・主要堰堤一覧
ダム名 河川名 管理者 目的 型式 竣工年 堤体諸元 貯水池諸元 洪水調節 発電 不特定
用水容量
103m3
特定
かんがい
ha
水道用水 工業用水
堤高
m
堤長
m
堤体積
103m3
集水
面積
km2
湛水
面積
ha
総貯水
容量
103m3
有効貯
水容量
103m3
洪水調
節容量
103m3
流入量
m3/s
調節量
m3/s
事業者名 発電
所名
型式 最大
出力
kw
使用水量 貯水容量
103m3
取水量
m3/s
貯水容量
103m3
取水量
m3/s
最大
m3/s
常時
m3/s
九頭竜 九頭竜川 建設省
(電源開発(株))
F・P ロックフィル S43 128.0 355.0 6,300.0 184.5 890 353,000 223,000 33,000 1,500 1,230 電源開
発(株)
長野 ダム式
揚水式
220,000 266.0 24.47 - - - - - -
真名川 真名川 建設省 F・N
P
アーチ式
コンクリート
S52 127.5 357.0 507.0 223.7 293 115,000 95,000 89,000 2,700 2,550 福井県
企業庁
真名川 ダム水路式 14,000 15.0 3.37 (第1期洪水期)
15,900
(第2期洪水期)
6,000
- - - - -
笹生川 真名川 福井県 F・N
W・P
直線重力式
コンクリート
S32 76.0 215.0 224.5 70.7 234 58,806 52,244 11,280 470 330 福井県
企業庁
中島 ダム水路式 18,000 16.0 7.59 32,100 - 900 0.996 - -
広野 日野川 福井県 F・N
I・P
直線重力式
コンクリート
S51 63.0 162.0 143.0 42.3 54 11,300 9,600 5,600 350 265 福井県
企業庁
広野 ダム式 1,400 3.2 1.39 3,100 - - - 900 0.5
龍ヶ鼻 竹田川 福井県 F・N
W・P
直線重力式
コンクリート
H元 79.5 215.0 355.8 31.1 38 10,200 8,900 4,600 420 320 福井県
企業庁
山口 ダム水路式 1,900 4.5 0.60 1,900 339.3 2,400 0.550 - -
九頭竜川 電源開発(株) P アーチ重力式
コンクリート
S43 45.0 277.0 113.0 191.6
(142.7)
62 9,650 6,100 - - - 電源開
発(株)
湯上 ダム水路式
遠方制御式
54,000 53.0 25.06 - - - - - -
山原 九頭竜川 電源開発(株) P 直線重力式
コンクリート
S43 23.0 114.6 23.0 191.6
(142.7)
19 900 - - - - 電源開
発(株)
- - - - - - - - - - -
石徹白 石徹白川 電源開発(株) P アーチ重力式
コンクリート
S43 32.0 113.6 20.0 96.8
(7.8)
12 917 - - - - 電源開
発(株)
- - - - - - - - - - -
仏原 九頭竜川 北陸電力(株) P 直線重力式
コンクリート
S43 48.6 141.0 50.0 422.7
(16.7)
29 3,723 1,522 - - - 北陸電力(株) 西勝原第3 ダム水路式 48,000 56.0 25.86 - - - - - -
雲川 真名川 福井県 P 変半径アーチ
式コンクリート
S32 39.0 95.0 18.0 55.8 18 1,490 1,490 - - - 福井県
企業庁
中島 ダム水路式 18,000 16.0 7.59 - - - - - -
小原 滝波川 福井県 P アーチ重力式
コンクリート
S40 35.5 77.8 20.0 26.5 2 152 50 - - - 福井県
企業庁
滝波川
第1
ダム水路式 12,300 5.0 0.57 - - - - - -
下荒井
堰提
九頭竜川 関西電力(株) P 重力式
コンクリート
S19 6.0 253.9 45.0 960.0       - - - 関西電力(株) 市荒川 水路式 45,700 80.0 20.00 - - - - - -
富田取水堰提 九頭竜川 北陸電力(株) P 直線重力式
コンクリート
S33 14.0 126.2     558.5       - - - 北陸電力(株) 富田 水路式 19,200 80.0 18.00 - - - - - -
真名川頭首工 真名川 真名川
土地改良組合
A 固定堰 S29 5.0 74.6   238.3       - - -   - - - -   - 1,038 - - - -
双葉
堰提
足羽川 福井県 A 可動堰 S35 3.4 98.4   355.0       -  - -   - - - -   - 3,053 - - - -
松ヶ鼻堰提 日野川 福井県 A 可動堰
固定堰
S42 1.4 205.2   294.0       - - -   - - - -   - 1,143 - - - -
鳴鹿
大堰
九頭竜川 建設省 F・N
W
可動堰 H11 5.7 311.6   1,181.8 25 667 132 - 5,500 - - - - - - - 47 10,400 85 0.100 - -
(目的 記号 F:洪水調節 N:不特定用水 A:農業用水 W:上水道 I:工業用水道 P:発電 S:砂防)
集水面積の(   )内値は間接流域である。

表4.3.2  九頭竜川流域の発電所一覧
河川 発電所名 最大出力
kw
最大取水量
m3/s
落差
m
管理者 竣工年
九頭竜川筋
(15発電所)
長野 220,000 266.000 97.50 電源開発 昭和43年
湯上 54,000 53.000 120.10 昭和43年
西勝原第1 10,000 11.130 115.40 北陸電力 大正12年
西勝原第2 7,200 26.410 37.24 大正9年
西勝原第3 48,000 56.000 99.00 昭和43年
上打波 10,200 8.300 150.70 昭和33年
下打波 4,500 6.710 80.90 昭和14年
東勝原 2,610 8.600 37.70 昭和12年
富田 19,200 80.000 28.20 昭和33年
壁倉 25,600 80.000 37.70 昭和33年
市荒川 45,700 80.000 69.00 関西電力 昭和19年(一号館)
昭和24年(二号館)
平泉寺第1 560 0.834 95.50 北陸電力 昭和9年
平泉寺第2 400 1.002 55.00 昭和11年
滝波川第1 12,300 5.000 298.40 福井県 昭和40年
新薬師 5,000 6.300 97.10 北陸電力 平成7年
小計   465,270 689.286      
真名川筋
(4発電所)
中島 18,000 16.000 136.03 福井県 昭和33年
中島第二 2,400 1.400 214.82 平成4年
五条方 17,500 16.000 129.95 北陸電力 昭和28年
真名川 14,000 15.000 109.80 福井県 昭和52年
小計   51,900 48.400      
足羽川筋
(4発電所)
持越 860 5.290 21.21 北陸電力 明治42年
白粟 400 4.290 15.03 昭和4年
足羽 3,000 10.500 41.70 昭和25年
小和清水 1,500 5.570 35.00 明治44年
小計   5,760 25.650       
日野川 広野 1,400 3.200 54.40 福井県 平成8年
竹田川 山口 1,900 4.600 52.30 平成元年
(25発電所)   526,230 771.136      


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