ヨシ原に夏鳥がさえずる近江八幡の水郷

ヨシ原に夏鳥がさえずる近江八幡の水郷

 近江八幡市の北東に広がる西の湖(内湖)は、古くからヨシの群生地であり、特有の湿地生態系をもっていました。天正13年(1585)、豊臣秀次が城下町を開き、さらに西の湖を経由し、琵琶湖に通ずる八幡堀を開削しました。八幡堀沿いの街は栄え、楽市楽座などの自由な商工業政策も打ち出されました。近江商人たちは、西の湖に面した円山の集落で作られるヨシを原料としたスダレやヨシズなどの製品を江戸で取り引きしたといわれています。西の湖とヨシ原などの自然環境が、ヨシ産業や内湖と共生する地域住民の生活と結びつき、価値の高い景観を形づくっていることから、昨年1月、「近江八幡の水郷」が全国で初めて重要文化的景観として国の選定を受けました。この時期、水郷めぐりの舟でヨシ原を往くと、水を切る櫓の音とともに、オオヨシキリのさえずりが響きわたり、内湖がもたらす自然の豊かさを感じずにはいられません。ヨシ原には、野鳥や水鳥の他にも、琵琶湖のさまざまな在来魚や水生昆虫など、あらゆる生き物の大切な生活の場でもあります。人々は、太古から内湖の自然とともに暮らし、ヨシという恵みによって生計を立ててきました。自然との共生から生まれ、受け継がれてきた水郷の景観が、これから先も守られ、安らぎを与えつづけてくれることは、地域はもとより、私たちにとっても大きな喜びといえるでしょう。

内湖…琵琶湖の周囲にあり、琵琶湖と直接つながっている池や湿地帯のこと。その多くは干拓(農地化すること)などによって数が減っている。

オオヨシキリ

オオヨシキリ

スズメ目ウグイス科
体長約18センチメートル、頭から背中、尾にかけては黄色っぽい褐色。 滋賀県には4月頃から飛来してくる夏鳥。水辺のヨシ帯に棲み、ヨシの茎などに巣をつくる。 喉から腹にかけては淡い褐色。大きな声で「ギョギョシ」と鳴くことから「行々子」と書き、俳句の季語にもなっている。
近江八幡の水郷に関するお問い合わせ先:近江八幡市役所協働政策部秘書広報課 TEL.0748-33-3111(代)


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