【決定事項】
- 平成16年度に全国で発生した災害を踏まえ、当協議会では、被災ポテンシャルを下げるための「逃げ方」「住み方」「土地利用の考え方」等のソフト施策を中心に議論していくことを再確認した。
- 4回にわたる担当者会議で作成された「行動計画書(1次案)」について説明し、基本的に了承された。今後、当協議会での議論は、この「行動計画書」を尊重して進める。
- 「行動計画書」の中から協議会として早急に取り組む事項として、「浸水危険度マップ(仮称)原案の作成」「避難勧告技術基準(案)の作成」「情報伝達(伝達方法、情報内容)の見直し」のアウトプットイメージを説明し、基本的に了承された。今後は、担当者会議において原案を作成し、次回の協議会に図ることとする。
【報告事項】
- 野洲川堤防の質的安全度(侵食、浸透)に関する概略点検結果について琵琶湖河川事務所から報告があった。
- 琵琶湖河川事務所内に「災害情報普及支援室」を設置した旨の報告があった。
【平成16年水害の被害状況の説明に対するご意見】(資料2)
- 淡路島の洪水によるため池被害は、阪神・淡路大震災の1.5〜2倍と査定されている。
- 402ヵ所の土砂埋没と表現されているため池が、破壊されずに下流への土石流の流下を食いとめたため、ため池は、洪水緩和機能の他に土石流に対する防災機能を有していると言える 。
- ため池は、土石流をとめるというような効果もあれば。ため池自身の被害に加えて、決壊による周辺への影響もあったと考えられるのではなかろうか。
- 通常主要な河川施設の機能評価は概ね実施されているが、ため池等の民間でマネジメントされている比較的小規模な施設では、実際に効果がプラスになるのかマイナスになるのか、あるいは条件が異なればそれらがどうなるかが、よく解らないのではないか。
(→国土交通省事業で農業用のため池を借用し、一部治水容量を持たせるという事業もあり、その場合は越流しても大丈夫な構造としている。)
-
大規模なため池では、土地改良区が直轄で管理している場合、事前に水位を落とし洪水調整を積極的に行っている事例もある。
- 淡路島の例では、大財池という大規模な池が決壊した。これは、歴史の古い池で、貯水量の増加のために余水吐き、洪水吐きの敷高を上げて、堤体が弱くなったことが原因である思われる。
- 淡路島全体で死者2名であり、ため池が壊れて田んぼの確認に出向いたお年寄りが亡くなられた。決壊することによって、若干の下流側の農地被災は起こるが、直接的な浸水被害は見られない。
- 洪水調節機能では、最近私どもの研究室で実施したため池、水田等が存在する小流域における理論的な解析結果では、ため池が満水状態であっても全体として洪水を調節する機能があるということが理論的に明らかになった。
【行動計画書(1次案)、担当者打合せ概要】(資料-3)
- 自主防災組織を整備し、地域リーダーを育成するという作戦が掲げてあり、この自主防災組織と協議会との関係をどのように考えているか。
- 自主防災組織は形骸化する可能性が高いため、その組織の持つ防災に対する能力あるいは基礎体力、そういうものを調整するキャパシティービルディングをいかに図っていくかが非常に重要である。
- 大きなスケールの協議会を開くことも重要であるが、一番末端の組織単位を集落にするのか、あるいは学区にするのかをある程度の見通しを立てた上で、アクションプランを考えていく必要がある。
- 行政と住民、住民同士、つまり、縦横、立体的な防災コミュニケーションを通じて地域の防災力を高めていくことが本会議のねらいであると考える。その場合、具体的な末端での組織体制や、その組織の能力、基礎体力の向上を図る作戦の一つが、地域リーダーの育成となると考える。
- 草津市では、自治会単位で自主防災組織があり、現在は、地震災害を対象に201町内会のうち約120の町内会で組織をつくっている。
- 水防については、現在中小河川の浸水区域図を今後作成していく必要がある
- 現在の自主防災組織は、地震に対する防災組織であり、地域は地域で守るといった観点から、近隣自治会間で相互に対応していく組織をつくっている。
- 初期体制が一番大事であると考える。行政はすぐには対応ができないため、災害が起きた時にいち早く地域の中で動いてもらうというコンセプトで組織化をしている。
- 上記の組織を拡大していくことを考えており、そのような立場からこの協議会は別の組織として認識している。
- 地域リーダーについては、災害ボランティアという組織を立ち上げており、その中でコーディネーター養成講座を市で予算化して実施しており、講習会、神戸への視察等を通じて、コーディネーターの育成に取り組んでいる。
- 保水機能の確保という表現があるが、保水だけではなくて貯留という機能もあり、保水・貯留機能、さらには防災機能の確保と言ってはどうか。
【今後の検討方針(1次案)についてのご意見】(資料4-1〜4-4)
- 自主防災組織を整備し、地域リーダーを育成するという作戦が掲げてあり、この自主防災組織と協議会との関係をどのように考えているか。
- 災害の問題では、総合的な対応が必要となり、特に、事前の対策や行政のみでは取り組むことが困難な部分について検討する場合、非常に横断的なテーマになってくる。
- 防災の最前線は、国や県というよりも各市町であり、取り組むべき課題も多い。そのため、その最前線での調整が非常に重要であることから担当者ワーキングがスタートしている。
- 行動計画書は、少なくともその中に書かれている部分に焦点を当てていかなければ、これからの防災、水害に対する安全性は高まらないということが、議論の積み重ねの中で担当者ワーキング参加者の共通認識として作られたことに意義がある。
- 行動計画書の内容は、今後水害に強い地域づくりに対して、このような形で取り組んでいくという意思表明のあらわれである。そのため、この協議会の中でもその内容を尊重し、可能な限りこの中の1つなり2つでも取り上げて実施するような形で進めていくべきだと考える。
- 早急に実施すべき施策と、地域の実情に応じて取り組む施策を分けたことによって、国として施策に取り組む場合のイメージとなっていると感じる。したがって、市町もしくは県が協議会において、どこを議論すればよいかがわかりにくくなっている。 現在の自主防災組織は、地震に対する防災組織であり、地域は地域で守るといった観点から、近隣自治会間で相互に対応していく組織をつくっている。
- 情報提供では、それぞれの市町が主体となって取り組むべきハザードは何か、どういう問題がその市町にあるのか、あるいは県の中で対応されているところではどこが問題なのか等を議論した場合、相互にその知識を共有して対応するための共通のマニュアルは何かを議論していくことは考えられる。しかし、ある特定の部分について、こういうものを作成し、公表していくということに対しては、イメージが合わない。
- (→浸水危険度マップの作成では、都市計画、土地利用計画、建築や開発に際するときの許可の考え方が密接に関連するため、国というよりはむしろ市町が中心となって議論すべき内容であると考える。
- (→情報伝達の見直し等では、基本的には、各市町が策定した地域防災計画がベースとなり、災害時要援護者への対応、ITの活用等、判断の主体はすべて市町であると考える。)
- 1つのフォーマットとして市町で取り上げてほしい所があれば、そこに関しては重点的に手伝うのか、標準的なフォーマットを提案しているのか、全部を実施すべきだと強制しているのか、そのスタンスが不明瞭である。
- (→強制することは全く考えていない。資料はあくまでイメージであり、議論をする上で、行動計画書の言葉で議論するよりは、解りやすいと考えて提示している。)
- (→このイメージに対して、委員から意見、要望等を得て、さらに具体的な形として取り組んでいくことを考えている。)
- (→本日提示したイメージで今後取り組んでいくことを宣言しているわけではありません。)
- 自分で守るにおける土木の戦略が書いていない、あるいはそれに対応する自分で守るにおけるテーマ設定の背景とか戦略のところが空白になっているところが埋まらないか。
- 例えば、個人の防災意識を高めるための情報提供とかでもいいのでは。
- 水害ポテンシャルという言葉がわかりやすいか。潜在的な危険度という表現はどうか。
- 各種申請時に事前に上記内容を理解してもらうという部分が奇異に感じる。各種申請時は何の申請なのかをわかるように記述しては。
- 作戦というのは、費用対効果も必要ではないか。
- 市町では、中小河川があふれた場合、どのように対応するのかという問題が、住民の間で一番関心が高いと考える。
- 新潟県あるいは福井県では、ほとんどが直轄河川は大丈夫で、県管理の河川で多く氾濫被害を出している。現在琵琶湖流域の浸水区域図と、野洲川の浸水区域のハザードマップを住民に説明した場合、上記状態になるまでの間に何が起こるのかということが不明であり、市町が説明しきれない部分があるのではないかと考える。
- 各河川について、1/20とか1/30とか、そういったレベルで、国交省がマニュアル化しているハザードマップ以外のよりきめ細かな、日常的な内水、中小河川のはんらん等のマップを作成していく提案と考えてよいのか。
- (→各河川等についても、低いレベルも含めて、堤防が決壊した状態の時だけではなく、その前の内水等による浸水状況も含めた形で作成する予定である。しかし、これらの技術計算を進めるに当たって、データ有無が大きなネックになる。そのため、琵琶湖、野洲川、日野川までは、中小規模も含めて検討可能であるとおもわれるが、それ以外についてはデータ等の問題があるかもしれない。)
- (→日野川、愛知川等の流域面積が大きく、浸水被害を受けたときに大きなダメージを受ける河川について、洪水予報や浸水想定区域図の公表を行うために現在検討中である。)
- (→昨年5月に日野川は洪水予報河川に指定して、浸水想定区域図を公表している。続いて、野洲川の上流、愛知川、姉川、高時川、安曇川といった規模の大きい河川について、現在検討中である。)
- (→規模の大きい河川の検討だけで、作業的にも追われており、中小河川については現在では着手できていない。)
- (→ハード対策では、基本的に50ミリ対応、県の確率で10年確率の河川改修を実施していく予定である。しかし、その整備率も50%を若干上回る程度であり、全体的には遅れている。そのため、ソフト対策として情報伝達の問題等を検討している。)
- (→県の水位情報等を市町の情報端末にリアルタイムで送信している。)
- (→県のホームページででは、水位情報とか雨量情報を公開しており、住民のアクセスが可能となっている。)
- 避難勧告の客観的基準をつくるときに、野洲川、瀬田川、日野川等の比較的大きな河川の水位に着目してとあるが、他の河川については、もし要望があれば議論することは可能なのか。
- (→まずはデータがそろっている大規模な河川から検討していくことになると考える。検討には、少なくとも水位観測所で時々刻々のデータが必要となる。)
- (→上記データが無い場合は、水位観測所の設置、テレメーター等の整備から行う必要があり、直ちに対応することが困難である。)
- 都市河川では、水位等の情報が無い場合があるため、雨量を基準にしたり、あるいは、土砂災害も水害であり、累加雨量と短時間雨量の組み合わせとか、いわゆるスネーク曲線的な考え方で検討する基準もあるのかもしれない。
- (→何時間後に水位がどれだけ上がるかといったことを検討する場合は、小河川における水位上昇は、雨が降って即現れるため難しい。)
- (→上記河川では、行政側から情報を提供するよりも、住民が今降っている雨の状況、あるいはこれからどのような雨量となるかを想像して、近隣の河川の水位が急激に上昇するかどうかを判断していく方が望ましい。)
- (→比較的規模の大きい流域の河川では、上流に降っている雨が1時間後、2時間後に下流に到達するため、何時間後に水位がどの程度上がるかといったことが検討できると思われる。したがって、野洲川、瀬田川、日野川という流域の大きな川を代表として挙げている。)
【その他のご意見】
- 今後、都市計画のマスタープランを改定されていく場合、どういう情報が欲しいのか、どういう部分の情報が少ないと困るのかということを、協議会の中で発言してほしい。
以上
備考:( )内の文章は事務局がその場で回答等をさせていただいた内容です。