2.3 足羽川ダム

(1) 概要
  近年における足羽川の洪水被害は、昭和23年(1948)と同28年(1953)の堤防決壊に代表されるが、その後も度々洪水に見舞われ、破堤はまぬがれているものの決壊寸前ということも幾度か発生している。
 特に足羽川は、県都福井市を東西に貫流する重要河川で、ひとたび堤防が決壊すれば市街地が極めて深刻な損害を蒙ることとなるため、早くから洪水対策が実施されてきたという歴史がある。しかし、こうした対策には限界があり、抜本的な洪水防御の必要性がクローズアップされてきた。
 そこで、九頭竜川水系足羽川の足羽郡美山町蔵作地先に多目的ダムの足羽川ダムを建設し、足羽川前波地点の基本高水流量2,600m3/sのうち、800m3/sの洪水調節を行い、足羽川沿川および日野川・九頭竜川本川下流域の水害の軽減を図ること、足羽川ダム下流沿川で取水している諸用水(不特定用水)の渇水時の補給を行うこと、流水の正常な機能の維持と増進を図るとともに、福井市および下流沿川の諸都市に対して、新たに都市用水の取水を可能とする目的で計画が立てられた。
 なお、比較的福井市に近い地点に建設される足羽川ダムは、直接治水の効果が発揮されることから、極めて効率性に優れたダムであるという特徴を有している。
 建設省は、昭和58年(1983)4月に足羽川ダム調査事務所を設置し、実施計画調査を進め、平成6年度には足羽川ダムが建設事業となったことを受け、「足羽川ダム工事事務所」と改称し、事業の促進を図っている。
(2) 計画概要
  足羽川ダムは、九頭竜川水系足羽川の福井県足羽郡美山町蔵作・東天田地先に建設する多目的ダムで、高さ約80m、総貯水量71,800千m3の重力式ダムとして計画している。
(3) 目的
 1) 洪水調節
 梅雨や台風などで大雨が降ったときに上流から流れ込む洪水の一部をダムに貯め、ダムから下流の河川の洪水を低減させる。このことにより、足羽川、日野川および九頭竜川の下流地域の洪水による被害が軽減される。
 2) 流水の正常な機能の維持
 10年に1回程度生ずる規模の渇水時でも、足羽川および日野川に一定量以上の水が流れるようにダムから水の補給を行う。このことにより、足羽川および日野川では、河川の水質が良好に保たれるとともに、ダム下流の既得の農業用水等も安定して取水できるようになる。また、魚をはじめとする河川生物の生息環境が保全され、美しい水辺の環境の保持などを図る。
 3) 水道用水の開発
  福井市の水道用水が安定的に供給できるよう、新たに日量2.5万m3の水を確保する。
 4) 工業用水の開発
  テクノポート福井および九頭竜川右岸の繊維工業団地に対し、工業用水が安定して供給できるように、新たに日量5万m3の水を確保する。
 5) 発電
  ダムからの放流水を利用して、クリーンなエネルギーをつくりだす。
(3) 足羽川ダム建設事業の審議委員会と今後の方針
  ダム事業を進めるにあたっては、水没関係者を含めた地域の人々の理解と協力を得ることが大切である。また、ダム事業は、受益者が流域内の広域に及ぶことから、流域全体として考える必要がある。
  このことから、足羽川ダム建設事業に関し、事業の目的、内容等の透明性、客観性の確保を図る観点から、学識経験者、知事、関係市町長、県および関係市町議会の議長で構成した「足羽川ダム建設事業審議委員会」を平成7年(1995)9月に設置し、12回の審議を重ね、平成9年(1997)9月に「足羽川ダム建設事業についての意見」が提出された。
  審議の結果は、「足羽川の治水、利水(生活用水、工業用水、農業用水)ならびに環境(河川美化)を考慮すれば足羽川ダム建設は必要である。事業推進にあたっては、今後とも地域住民の意見を十分に聴取し理解を得るとともに、足羽川の治水、利水、環境の重要性ならびに計画発表から40年近くを経過した現状に鑑み、委員会の意見を十分勘案され、早急にその可能性について検討されたい。」ということであった。
  審議委員会の意見は、次の5項目である。
(a) 足羽川ダムの建設は、住民を水害から守り、流域の灌漑用水の供給、生活、産業活動に不可欠な水資源確保のために必要である。
(b) 現行立地での推進には、大きな犠牲を伴い、地元同意を得ることが困難と思われるので適当とは認めない。
(c) ダム建設による水没世帯が極力少なくなるようダム規模の縮小、河川改修等、事業者は最善の努力をすべきである。
(d) ダム建設には、下流流域の受益者の協力が特に重要である。
(e) やむを得ず水没世帯が生ずる場合は、事業者と受益者は納得のいく代替地の提供等十二分な補償を講ずるべきである。また、関係市町村にわたる広域観光開発等を強力に実施する等、地域振興をはかるべきである。
  以上のような審議委員会からの意見を受け、建設省近畿地方建設局は、次のような方針で検討を進めることとなった。
(a) 治水計画については、現在の足羽川ダム計画を加え、これまでに検討し公表してきた代替案の他、ダム建設による水没戸数を極力少なくする可能性について検討すべきとの同審議会の意見を踏まえた代替案も検討する。
(b) 水道用水、工業用水については、その確保の方法等について、建設省、福井県、水道事業者及び工業用水事業者が共同で、治水計画の代替案検討と連携して検討を進める。
(c) 調査・検討ののち、その結果を公表し、福井県知事、関係市町長、関係住民等の意見を聴いた上で、今後の足羽川ダム建設事業の進め方について判断することとする。


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