サンゴ壊滅を見て「やばい」と活動開始

いきなりですが、「CAN」ってステキな名前ですね。
can

正確には「環境教育技術振興会」。Creative と Communication の「C」、Active と Action の「A」、
(for the) Nature の「N」の頭文字をとった愛称です。

海に潜る中で自然環境を守っていくことの大切さを痛感し、「地球のためにいいことをしたい」と行動しているダイバーたちのグループで、みんな自然が好き、生き物が好き、人が好き・・。私たちを取り巻く環境をより素晴らしいものにしたいから、自分たちも楽しみながら「できる」ことからやっていこう・・という思いを込めて「CAN」なんです。

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いつからどんな活動をやってこられたのですか?

2003年、和歌山県南部の「鹿島ビーチ」で行った「サンゴ再生移植活動」からです。みなべ沖のサンゴ礁はサンゴ生息の北限で、私たちは「リトル沖縄」と名付けてよく潜りに行っていたんですが、サンゴが壊滅状態に陥っていっているのを目の当たりにして「やばい」と思ったのがきっかけでした。

▲サンゴは黒潮に乗ってやってきた魚の住処

原因は、地球温暖化による水温の上昇や生活排水の流入と考えられるんですが、ちょっと待てよ、私たちダイバーもスキル不足から無意識のうちにサンゴを傷つけていたのかもしれない。人間が破壊したサンゴは、人間の手で復活させなくては、とね。

近くのサンゴ海域で台風の影響などで折れたサンゴのかけらを集めて、壊滅した地域に「移植」し、再生させようとした。なかなかうまくいきませんでしたが、5回目くらいで、サンゴを接着剤で岩に固定させることに成功。サンゴ自身の力で根付き、成長につれて岩場に定着し、自然と魚たちの住処になった。その過程を定期的に写真におさめ、資料として関係機関に提供しています。

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海の恩恵受けてきたダイバーだからこそ

松本さんは、その当初からのメンバー?
▲CAN代表の関藤さん(左)たちと

ええ。23歳の時、通っていたスイミングスクールのコーチに誘われて串本にダイビングに行ったのが最初で、「うわっ。目の前に魚が!」とハマり(笑)、会社勤めしながら休みごとに沖縄や和歌山方面に通っていたんです。鹿島ビーチもお気に入りのダイビングスポットだったので、サンゴの壊滅はショックで・・。のちにCAN理事長となる関藤博史さんと知り合い、「私らダイバーは、海の恩恵を受けてきたのだから、少しでも地球環境にお返しできることをしたいね」と思いが一致。立ち上げ当初からCANのメンバーになりました。

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潜っている海が汚くなったら、他の美しいダイビングスポットに移動するダイバーも多いでしょうに・・。

う〜ん。私たちは好きなダイビングスポットを見捨てるなんて出来なかった。黒潮に乗ってやって来ていた来遊魚を身近に見ていたから、サンゴの壊滅は魚たちの住処がなくなることだと思ったし。このサンゴ再生移植活動をきっかけに、いろんなことが見え始め、自然環境への興味がどんどん湧いてきたんです。

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どんなことが見えてきたんですか?
▲潜ると「発見」することも多い

たとえば、私たちダイバーも海水浴に来た人も、海辺でシャワーを使いますよね。シャンプーもする。使った水の行方はというと、そのまま溝伝いに海に流れていっている。私たちも海を汚していたんだ、と改めて自覚。自然溶解する石けんを使わないといけないと気づいたり。

行政主導などで「浮遊ゴミを拾いましょう」という活動はよくあっても、「海底ゴミを拾いましょう」という活動はないと気づいたり。

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なるほど。誰もが無意識のうちに海を汚しているし、海をきれいにしなくちゃと気づいていてもまだ手が届いていないこともあるわけですね。CANは、他にはどんな活動を?

大阪府湾岸域環境創造研究センターが「都市再生プロジェクト」として,堺市浜寺公園内に、ゴカイ類・貝類などの水生生物が生息できるミニ干潟をつくると聞き、協力を買って出たり。私たちは学者でも海の専門家でもないけど、ダイビングしているからこそ、海の環境をよくしたいと思う気持ちは人一倍。
「それ、面白そうだから、やろうよ」なんです。

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楽しみながら自然体で活動していらっしゃるからカッコいい!

いえいえ。「おもしろがり」なだけですよ(笑)。その延長で、アマモ移植にも首をつっこんだんです。

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アマモ移植し、大阪湾にダイビングスポットを

アマモ移植? 詳しく教えてください。

アマモは浅瀬に生える海草の一種で、かつては大阪湾奥のあちこちに群生していました。アマモ場は、魚が卵を産んだり、稚魚が生育し、餌を探しにやってくる大きな魚から小さな魚が身を守るための隠れ家。まさに「海の揺りかご」だったんですが、埋め立てが進み、浅瀬に砂地がなくなった昭和30〜40年代から激減。これを、移植によって取り戻そうという試みなんです。

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まさに、地球のためのいいこと、ですね?
▲関西空港近くのサザンビーチで

ええ。ただ、何度も言いますが、私たちの活動のコンセプトの一つは「自分たちが楽しく」なんです。2004年2月に「大阪湾でダイビングを。まもなく海底環境調査を開始」と書かれた新聞記事を見て、「おっ、大阪湾でダイビングスポット出来たらいいな」と思い、「何か手伝えることありますか」と,大阪府や国交省に手を挙げたのが始まりで、アマモ移植のお手伝いをすることになりました。

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具体的にはどんな作業を?
▲ペットボトルに海水と砂、アマモ種子
 を入れて育てる「アマモ育苗キット」

「アマモ育苗キット」というのがあり、市民グループなどが育てています。2、3ヶ月で移植可能な5〜10センチほどになるので、それを泉南市の垂井サザンビーチとせんなん里海ビーチなどへ手植え。また、アマモ種子を付着させた「播種シート」の設置も行っています。

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ダイバーだから、浅瀬での作業など得意中の得意?(笑)
▲冬場、海底にアマモを手植え。地下茎を伸ばし、春先に黄色い花をつける

それはもう(笑)。アマモは窒素、リンを吸収し、光合成も行うので、水質浄化を促すばかりか、地下茎を伸ばすことにより海底を安定化させる役目も期待できるんです。まだまだ始まったばかりで、移植後のモニタリング調査も行っていますが、定着率は1割以下です。でも、30年くらい経つと効果を発揮し、大阪湾にダイビングスポットが出来るのも夢じゃない。それに、こういった活動を行うことで、海の環境ひいては海につながる川や山の環境に興味を持つ人が増えてくれればいいなと思って。

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このニュースレターのタイトルじゃないですが、「ぼちぼちいこか」なんですね。
▲CANの愉快な仲間たち

はい。モニタリング調査で、自分たちが移植したアマモが育っていると飛び上がるほどうれしい(笑)。楽しみながら、ぼちぼちやっていきたいと思っています。

NPO法人CAN(環境教育技術振興会)
松原市高見ノ里6-7-4 Tel: 072-332-1507
Web Site: http://www.npo-can.org/

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