「日本のマングローブ」だからこそ

専門家からの注目も浴びた?


2月のハマボウ。満潮になれば潮が満ちる地に自生している

ええ。多くの研究者もやって来られて、成ヶ島には、大阪湾に生息する700種類の貝のうち434種が棲んでいて、うち30種が絶滅危惧種だということや、約250種の植物が確認され、うち14種が兵庫県版レッドデータブック絶滅の恐れのある野生生物の生態分布などを明らかにした資料)に名を連ねていることなどを、私たちは知ることになりました。府立大学の矢吹萬壽先生(名誉教授=農学生命科学)が 「日本のマングローブだ」と言われ、私たちは始めのうち地元を自慢できると思った。

でも、次第に、逆に、他地域から減っていっていることを憂うべきことだと思うようになった。残された成ヶ島の自然を絶滅させてはいけない、学習の場にしないといけないと強く思うようになっていったんです。

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細田先生と一緒に「成ヶ島探見の会」というのを作っていらっしゃいます。
砂浜を掘ると貴重な貝類との出会いも

私たち地元民は自然の恵みを享受して暮らしてきたわけですが、成ヶ島にはどれほどの自然があるのか、細田先生がコーディネーターになってくださって調べてみようとなったのです。細田先生の学術調査を手伝ったり、希少価値のある貝類を探したり、ウミガメの産卵を見守ったり、稚魚が集まる海草アマモの生態を見たり。様子を「探見」の文字どおり、自然の様子を探り、見るといった活動を、不定期に行っているんです。由良以外から「成ヶ島を見たい」という方が来られたら、案内もしていますよ。

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地元の自然、再発見ですね。
「去年はここでウミガメが産卵した」と話す花野さん

そうです。成ヶ島にはハマボウだけでなく、潮が満ちると海水の没するのに枯れない「ハママツナ」の群生もあり、晩秋に真っ赤に紅葉しますし、ハマボウ群落の近くに自生するハマヨモギの根に寄生しながら生きる「ハマウツボ」も6月頃に淡紫色の花をたくさんつけます。ウミガメの産卵はやわらかい砂の上で行われます。手つかずの自然が残っているからこそなんです。

大阪湾にわずかしか残っていないアマモも群生している。だから、島を荒れさせてはダメ。漂流ゴミをなんとかしないといけないことともつながっているんですね。

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それで、大がかりなゴミ拾い──クリーン作戦もしようということに?
記念すべき第1回のシンポジウム(1999年)

そうそう。1999年、ちょうど私が由良中学校のPTA会長だったこともあり、中学校と連携し、クリーン作戦がスタートしました。今年で13年目になります。

その後、探見の会の発足以来、海の日に午前中ハマボウの観察会と海岸清掃、午後は由良中学校の体育館で「みんなで見て考えよう成ヶ島を」のテーマに自然環境シンポジウムを開催しています。

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成ヶ島に、異常なほど漂着ゴミが多いのはなぜなんですか。
波が穏やかなこの日のゴミは少ないが・・

私たちは最初、由良の地元住民のマナーが悪いからだと思っていたんですが、違ってました。細田先生の研究によると、大阪湾に浮くゴミが、埋め立て護岸や港の垂直護岸には漂着せずに移動し、時計回りの潮流に乗って、自然海岸や自然の渚が残る成ヶ島にやって来るということなんです。半端じゃないです(笑)。

クリーン作戦以外に、有志で定例の掃除を毎月やっているわけですが、どんなにきれいにしても1カ月後にはまたゴミが山のように漂着し、台風の時は砂地が見えないほどになる・・・・。

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