陸域から流れ流れて成ヶ島へ

どんな種類のゴミが多いのですか。

最も多いのは発泡スチロール、ペットボトル、ビニール袋ですね。最近とみに増えているのはペットボトルに詰めた注射器。覚せい剤を使用したもののようです。ライターや空き缶、タイヤからクーラー、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など家電製品まで、「これだけあれば暮らせる」と思えるほど、ありとあらゆる種類が流れ着きます。

内陸部から「長い旅」の末に成ヶ島に漂着したゴルフボール

ぎょっとするのは、ゴルフボールの出所。ゴルフクラブや練習場の名前が明記されていますから、どこから流れてきたか一目瞭然でしょう? 兵庫県や奈良県の山間部、岡山県の平野部など海に面していない土地の名前が書かれたものも多いんです。交通標識や「ゴミの投げ捨ては、法により処罰されます」と書いた自治体の看板までまで流れ着いているんですから、これはもうブラックユーモアです(笑)。

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海洋投棄されたゴミだけでないということなんですね?
たくさんの交通標識や看板が流れてくる不思議

そう。成ヶ島に漂着するゴミは、山や谷、小川、農業用水路に捨てられたものも含まれています。それが川の本流を通って大阪湾に流れ込み、流れ流れて成ヶ島に届いているのだという事実。何気なく捨てたもの、落としたものでも、大都市部を抱えた自然海岸に積もり積もれば莫大なのだということを、広くみなさんに知ってもらいたいと思います。

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クリーン作戦で拾い上げられるゴミの量は?
クリーン作戦の日にゴミ拾いする由良中学生たち

10分も拾うと45リットルのゴミ袋がいっぱいなりますから、由良中学全校90数人の生徒が1時間余りずつ清掃して、2トン車6台分ほどになりますね。最初の頃は、拾ったゴミを野焼きで処分していたんですが、中学生のほうから「僕たち、掃除に来てダイオキシンを発生させていてはまずいのでは?」と指摘され、洲本市の協力を得て、ゴミ回収車に来てもらうようになったんです。

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ところで、漂着ゴミがこんなに増えたのは、いつごろからなんでしょう?

私が子どもの頃の漂着ゴミといったら木の枝くらいなもの。焚き木にしていました。増えたのは、高度経済成長期からでしょう。ビニールや発砲スチロールなど腐らない石油化学製品が増え、使い捨てが増えると同時に、大阪湾がコンクリートの直立護岸に囲まれていった時期と一致しますね。

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なるほど。大阪湾から自然の海岸が消えたことも、成ヶ島にゴミが漂着する要素なんですね。まつり、掃除、ハマボウ見学会など一連の活動から見えてきたことは?
今よりも悪くならない努力をするのが一番

成ヶ島の魅力をさまざまな角度から再発見でき、今よりも悪くならない努力をするが一番でしょうか。掃除に関しては、どんなに掃除しても、大量の漂着ゴミといたちごっこですが、継続は力。一連の活動が、地元民にも地元外の人にも 理解を深めてもらうことにつながったと思う。行政にも伝わり、水洗の公衆トイレの設置や渡し船の復活を見ました。

残念なことは、調査にやって来るさまざまな研究者や学生の中には、情報を提供する私たちに調査の結果をフィードバックしないばかりか、中には成ヶ島の植物を他地に持って行って植えるケースもあること。自然の生態系を変えるという見地から、私は反対。私たち人間は「自然」に試されている。無茶なことをしてはいけないと思うんです。

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今後の活動の抱負を教えてください。
活動をずばり「楽しい」と言う副代表の山中千晴さん(右)、生嶋史朗さん(左)と

この19年間に、活動をしなかったら知り合うことのなかった人たち──成ヶ島を研究対象とする研究者や大阪湾の他の地で活動をしている人たちとずいぶん知り合いました。島へ大勢の人が来られるし、私たちが活動報告などに出かけることもある。“外の風”は刺激的だし、地元の仲間も広がりました。 だから、活動していて実に楽しいんですね。今後も、“外”と“地元”両方のネットワークをさらに広げ、楽しみながら活動を続けていきたいと思っています。


成ヶ島を美しくする会
TEL 0799-27-0393
HP http://www1.sumoto.gr.jp/ymnk4a/index_001.htm

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