「かけがえのないこの浜を次世代に残したい」
御前浜・香櫨園浜プロジェクト しなやかに稼働中

砂浜が続く、兵庫県西宮市の御前浜(おまえはま) と香櫨園浜(こうろえんはま) は、大阪湾の湾奥部に残る自然海岸が1%に過ぎない中、貴重な存在だ。
かつて魚も獲れ、潮干狩りもでき、海水浴も楽しめたが、取り巻く環境の変化などにより、昨今は荒廃を免れなかったこの浜で、「もう一度美しい浜、人が遊べる浜に戻したい」と思っていた地域住民たちと、行政、大学生らがゆるやかに連帯した活動が繰り広げられている。
御前浜・香櫨園浜プロジェクト」(事業主体:兵庫県阪神南県民局県土整備部尼崎港管理事務所=通称あまかん)という、浜の再生を目指した、“ハード・ソフト一体型”の協働活動だ。その経緯と現状を取材した。

マイペース&マイスタイルで

 参加メンバーは年々増え、目下約50人。リタイア後の男性が最も多いが、女性もいる。大学生もいる。なぎさカフェでは、年配者が語る「昔の浜辺の思い出」に大学生や若いカップルが耳を傾けたり、年配者が大学生や子どもたちと一緒に浜の遊びに興じたり・・・。地域外から、時々顔を出す人も現れるようになった。
 9月23日(日) には、「大人も子どもも“浜であそぼう!”(※3)」という、大イベントを開催し、延べ約1000人もの人たちが浜にやって来た。

9/23「大人も子どもも "浜であそぼう!"」
イベントの会場案内
この日のイベント参加者は延べ約1000人

 「イベントで浜に来た人が、この浜の良さを分かってくれ、『大切にしたい』との思いを私たちと共有してくれたらうれしい。活動を重ねることで、浜を少しでもきれいにして、次世代に引き継ぐのが私たちの責任だと強く思うようになってきました。私たちにできることは何か。手探りは続きますが、私たちのスタイルとペースで楽しみながら活動を続けていきたいですね」
 と、当初からの参加メンバーは言う。

砲台外壁をスクリーンにして開かれた
「砲台映画館」も大盛況(9/23)
「きれいな浜を次世代に残す」のが、
プロジェクト参加者みんなの願い

 「海辺の砂浜を最もよく利用するのは近隣の人たちですが、その人たちの所有物ではなく、訪れるすべての人に開かれた空間です。そのため、近隣の人たちを核に、来訪者のだれもが利用者であると共に主体になれるのが、このプロジェクトの特徴でしょう。行政の呼びかけからスタートしましたが、参加する側の活動の自由度が高く、まさに『協働』。今後は、行政が参加者の思いをより一層くみ取った上で、ハード面の整備とメンテナンスに関する継続的な責任部署としての役割を果たし、市民も管理の一翼を担うような形が取れればいい」
 と、5年にわたってプロジェクトを見てきた神戸芸術工科大学教授、川北健雄さん (建築計画) は話している。

取材・高田次郎 文・井上理津子
写真・豊崎寛樹/丸井隆人
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