かけがえのない自然環境の証人、ヒシクイ。

ヒシクイ

「堅田の落雁」で知られるように琵琶湖には古くから雁がやってきて、人々に親しまれていました。現在も、天然記念物のヒシクイという雁の仲間がやって来ますが、とくに琵琶湖のヒシクイは雁の中でもいちばん大きい亜種オオヒシクイで9月下旬から飛来しはじめ、琵琶湖で冬を過ごします。
ヒシクイは体の大きさに比べ、非常に警戒心が強く、環境の変化に対する適応性も低い鳥です。釣り人や水上バイク、プレジャーボートなどにも過敏に反応するため、隠れ場となるヨシ原などの減少にともない、しだいに住む場所を追われ、現在では、湖北地方のごく一部でしか見ることができません。さらに、主なエサであるヒシの実やマコモも激減しつつあり、越冬期の後半には田んぼに上がり、二番穂や落ち穂を食べて、ようやく冬を越しているのが現状です。
現在、準絶滅危惧種に指定されている亜種オオヒシクイの存在は、まさに環境のバロメーターであり、その姿が湖から消えることは琵琶湖の自然環境がさらに低下することを意味するといっても過言ではありません。このような希少な動植物を守ることは、たんにその種を保全するのではなく、琵琶湖の自然全体を守ることといえるのです。
ヒシクイというかけがえのない自然の証人が、眼前から飛び去る前にもう一度、人と自然のより良い関係について考えなければならないのではないでしょうか。

資料提供・取材協力/湖北野鳥センター
亜種オオヒシクイは、9月下旬から2月下旬にかけて湖北野鳥センターで観察することができます。


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