琵琶湖に春を呼ぶ魚、“氷魚”を次代に。

氷魚

厳冬期の琵琶湖では、古くから氷魚漁が行われてきました。氷魚とは、体長約2〜3センチメートルのアユの稚魚をさし、体が氷のように透き通っていることから、この名がついたといわれます。琵琶湖の氷魚漁は、沖合のエリの先端に設けたツボ状の網をたぐり、魚体を傷つけないようザルを使って汲み上げる「エリ汲み」という独特の漁法で行われます。
「かつては食用に珍重されましたが、現在では主に放流用のアユ苗として採捕されています。また、近年は資源を守るために、漁獲量が業者からの受注量に達すると漁を終了するように取り決められています。昨年の12月から初回の漁をスタートした湖西の高島漁業協同組合にお話をうかがいました。
「今シーズンは、アユの産卵も順調という報告を受けていましたが、実際に漁に出た印象では豊漁とはいいがたいですね。遡上する河川の水質や湖の環境の変化などによって、氷魚は確実に減少しています。出荷の相場も次第に高値になり、食用として流通することもほとんどなくなりました。昔は、躍り食いを楽しんだり、熱湯にくぐらせて二杯酢で食べたり、春を呼ぶ琵琶湖の味として喜ばれましたが、今日では漁師仲間でさえ口にすることは少なくなりました」。
今や“琵琶湖のダイヤモンド”とさえたとえられる氷魚を守りつづけることは、母なる琵琶湖の活力を次代へ伝え継ぐことなのかもしれません。

写真提供/琵琶湖博物館


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