国蝶 オオムラサキが舞う里山を守れ。

オオムラサキ

オオムラサキが国蝶に選ばれたのは1957年。模様の美しさや優雅な飛び方とともに、全国に分布し、だれもが簡単に見られることが大きな選定理由でしたが、現在ではレッドデータブックの希少種に挙げられるまでに減少してしまいました。
滋賀県坂田郡近江町では、その生息地であるかぶと山の自然を残そうと1982年にNPO(民間非営利団体)の「近江町オオムラサキを守る会」が発足。越冬幼虫のカウント調査や食樹エノキの自生状況調査、雑木林の実態調査や会報「かぶとやま」の発行を通して、さまざまな啓発活動を展開しています。代表の樋口善一郎さんに現在の生息状況をうかがいました。
「オオムラサキの産卵や幼虫の成育に欠かすことのできない雑木林が年々荒れていることは確かです。成虫の正確な数を調査するのは、ほぼ不可能ですが、その数が減少傾向にあることは確実だと思われます。10年ほど前は、人工飼育に取り組み、放蝶会も行っていましたが、悪化した環境の中に蝶を放すことには無理があると気づき、現在は人工飼育とともに中止しています。オオムラサキを見せてほしいと来られる方には、まず山に案内し、雑木林の自生状況を確かめ、蝶がなかなか見られないことを体験していただくようにしています。
オオムラサキを守るためには、エノキや雑木林など里山の自然を守らなければなりませんが、里山を守れば、その水源涵養力によって水が守られます。そして、この滋賀で”水を守る“ ということは、”琵琶湖を守ることに他ならない“と考えています」。
樋口さんたちは、こんな大きな眼差しで自然を見つめながら、これからも地道な活動を着実に続けていこうとしています。

オオムラサキ:プロフィール

オオムラサキ[大紫蝶]タテハチョウ科
国内では北海道南西部〜九州に分布。6月から8月にかけ、年に1回発生し、雑木林などに生息。とくに、オスの中央部に広がる紫が美しい。
写真提供/近江町オオムラサキを守る会


もどる進む