5月の川を旅するビワマスの子供たち。

ビワマスの子供たち

ビワマスは、琵琶湖にのみ自然分布する※固有亜種です。現在は、芦ノ湖や日光中禅寺湖に移植されています。稚魚の体には、パーマークと呼ばれる楕円班と朱色の美しい小斑点があります。また、同じなかまのサツキマスやサクラマスと比べると、眼が大きく、顔つきがやさしく感じられます。ビワマスの成魚は10月中旬〜11月になると雨によって増水した川を産卵のために上ります。このため、滋賀県ではアメノウオとも呼ばれ、親しまれています。川で産卵を終えたビワマスは死んでしまいますが、その卵からは新たな生命が誕生し、稚魚は小さな昆虫を食べながら川で一時期を過ごします。やがて、全長8〜10センチメートル成長した稚魚は、5月から6月になって梅雨で川が増水すると、親魚がたどった川を下って琵琶湖へと帰ります。
現在は、産卵のために遡上する成魚も、琵琶湖へ下る稚魚も河川では全面禁漁とされ、孵化場でも人工種苗生産が行われています。しかし、人の手を介した保全策とともに、ビワマスが自然に導かれるままに遡上できる、清く、豊かな河川をこれからも守り続けることが何よりも大切といえるでしょう。

※固有亜種:「亜種」とは「種」よりもさらに小さな分類単位を指します。したがって、「固有亜種」とは琵琶湖にのみ自然分布する生物の中で、「固 有種」よりもさらに細かく分類された種類をいいます。

ビワマス:プロフィール

サケ科サケ亜科サケ属
体長22〜62cm。夏は水温が15℃前後の水深15〜20mを遊泳し、アユなどを補食する時にのみ水温20〜25℃の表層に出る。
夏場には琵琶湖の水温が、水深によって大きく変化することを巧みに利用して生きている。琵琶湖に下ったビワマスは成魚となって3〜4年経つと遡上し、産卵を行い一生を終わる。ビワマスは、安曇川や愛知川、姉川など、北湖の川を中心に遡上する。
写真提供/琵琶湖博物館


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