ビオトープに還ってきたカイツブリ。

カイツブリ

琵琶湖は古くから「鳰(にお)の海」といわれるほどに、鳰すなわちカイツブリが数多く棲息する湖でした。だれもがその愛らしい姿を身近にし、親しみを感じることから滋賀県の県鳥にも指定されています。しかし、ここ20数年の間にカイツブリは急激に減少し、昭和52年の調査で確認された1150羽が、平成13年にはわずか542羽にまで減っていることが判明しました。その原因には、カイツブリの格好の棲息地となる場所がしだいに少なくなり、エサである小魚も減少していることがあげられます。かつて、琵琶湖周辺にはヨシが生い茂り、タナゴやモロコなどが数多く泳ぎ、営巣や幼鳥の成長にも適した場所でした。現在、一部のカイツブリは湖から離れ、流れの緩やかな川やため池を生活の場にしようとしています。
びわ町から湖北町にかけて広がる広大な早崎干拓地の中に平成13年、早崎ビオトープが完成しました。ここでは、従来の湖岸や内湖の環境を自然のままに再現し、生物の成育のようすが研究されています。このビオトープ内で、わずか2年足らずの間に数組のカイツブリが繁殖し、この春も2組が産卵を行いました。ヨシや水草類も定着し、タナゴなどの小魚の姿もしだいに増えつつあります。このできごとは、自然の力強さを感じさせるとともに、環境保全に向けた人間の積極的な取り組みや行動によって、動植物の将来が明るいものになることを物語っています。

※ビオトープとは、野生動物が共存共生できる生態系をもった場所を意味し、都市のなかに植物、小動物、昆虫、鳥、魚などが共生できる場所を造成または復元することを指します。

カイツブリ:プロフィール

カイツブリ目カイツブリ科
体長約26cm、カイツブリ類の中では最も小さい。 全国の湖沼や川などに棲み、北の地方では冬季移動するが、琵琶湖では一年を通じて見られる。主にヨシ原などで水草を重ねた浮き巣を作って繁殖する。
丸みを帯びた体型で全体的には茶褐色。夏になると顔から首にかけて赤褐色になる。生息数が急激に減少しているため、今後の生息状況調査や生息地の拡大が重要な種とされている。


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