思い出の中のオオキトンボ。

オオキトンボ

どこまでもつづく秋空の下、赤トンボを追いかけて野山を駆けめぐった思い出をお持ちの方も数多いことでしょう。一般に赤トンボとは体の赤いトンボの総称ですが、もうひとつ“アカトンボ属(アカネ属)”というグループのトンボを指して呼ぶ場合もあります。そのなかでもとくにアキアカネは赤トンボの代表選手として広く知られています。池沼や水田にすみ、秋の収穫時期、田んぼで働くお百姓さんのそばを愛らしく飛びまわるようすは、まさに秋の里山ならではの眺めです。アキアカネは人をあまり恐れることがなく、古くから農作業をする人々に愛され、子供たちの良き遊び相手として親しまれてきました。
て、今回、イラストでご紹介するのは、腹長が3〜3.5センチで、国内のアカトンボ属としては最も大型のオオキトンボです。その名の通り、全身が鮮やかな橙黄色で本州・四国・九州に分布し、平地から丘陵地のヨシなどが生い茂る池沼などに生息しています。しかし、近年は全国各地でその姿が急速に減少し、環境省カテゴリーでは※絶滅危惧II類(VU)に指定されています。滋賀県内では大津市、竜王町、彦根市で記録されていますが、京都府ではすでに30年以上、生息が確認されていません。このような貴重な種を思い出の中だけにとどめるのではなく、野山を元気よく飛びまわる姿を次代の子供たちに残すためにも、いま自然環境に配慮した暮らしが何よりも求められているのです。

※絶滅危惧II類(VU):絶滅・野生絶滅・絶滅危惧I類に次ぐランク付けで、「絶滅の危険が増大している種」と定義されるグループ。絶滅危惧II類から準絶滅危惧・情報不足とつづく。

オオキトンボ:プロフィール

成虫は腹長30〜35ミリ。体は橙黄色で斑紋をほとんどもたない。7月頃に羽化し、成熟した成虫は10月〜12月初めまで見られる。本州、四国、九州、朝鮮半島、中国東北部に分布しているが生息地は局地的で、きわめて希な種といえる。
写真提供:琵琶湖博物館 撮影:大久保 祥子


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